19 パリン
「どうした?」
カナディアに問う。
「嫌な予感がします。ピエラさん、子供達はここにいるので全員ですか?」
「いえ、もう1人……買い物に」
カナディアはすぐさま孤児院の扉を開けて、飛び出していった。
俺も後を追うが、すぐに立ち止まることになる。
外へ出てすぐ……4人のスーツ姿を着た男が小さな女の子にナイフを突き付けていたからだ。
「マナ!」
「しぇんせい……」
ピエラさんも慌てて出てくる。
ディノやアリーよりも少し小さい女の子はスーツ姿の男に抱え込まれて震えていた。
4人の中の1人が近づいてくる。
「お取り込みの所すいやせんが……そろそろ孤児院を掃除させて頂けませんかねぇ」
「そ、そんな! 急に言われても困ります!」
「この間はゆっくり考えてくれと伝えしやしたが状況が変わりましてねぇ。1週間以内に出ていってもらうことに決まりました」
1週間で明け渡せなんていくらでも無茶苦茶な話だ。
だが向こうもそれが分かっているから武力で押し通そうとしているのか。
「商会の方で何かトラブルでもあったのか?」
「あ? なんだてめぇは……。……冒険者か。余計なことをしないでもらおうか。こっちはビジネスで来ているんでね」
「ビジネスって子供にナイフつきつけてやるもんだっけ? 本当にあんたらのボスが1週間って言ってんのかよ」
「……」
スーツ姿の男は黙り込む。
ギヨーム商会もここまで突拍子の無いことはしないイメージだった。
もしかしたらこの男の独断の可能性がある。
しかし、人質を取られているのがまずい。
今にもカナディアが飛び出しそうだが、俺が手を翳して押さえ込む。
カナディアほどの戦闘力なら大太刀を持っていなくてもある程度戦えると思うが、まだ早い。
「立ち退きの契約書にサインを頂きましょう。そうすりゃ子供は帰してあげますよ」
「……」
ピエラさんは困惑したままだ。フォローに入ろうと一歩前に出てみる。
「おい、冒険者。武器を降ろして手をあげろ。このガキが傷つけられてぇのか!」
先を読まれ、俺とカナディアは仕方なく手を挙げる。
「おい、武器を降ろせって言ってんだろうが。腰につけているダガーを地面に置け」
「あ、そっち」
危うくポーションを降ろす所だった。
素材採取用のダガーを地面に置き、手を挙げる。
「さぁ……院長さん、決断してもらおうか!」
「ヴィーノ」
小声でカナディアに話かけられる。
「私、もう限界です。ぶっ飛ばしていいですか」
「あーー」
さっき、子供達とふれ合わせたことで子供達に対する侠気が出てしまったようだ。
任せてもいいが、カナディアって向こう見ずっぽいしなぁ……。仕方ない。
俺は手を挙げたまま一歩を踏み出し、ピエラさんを守るように立つ。
「ピエラさん、そんなバカみたいな契約書にサインする必要ないぜ」
「えっ?」
「は? てめぇ、この状況でどうにかできるって思ってんのか?」
「できるさ……」
俺は両手を即座に降ろして、自前で作ったポーションホルダーに手を触れる。
元はガンホルダーだったものを魔改造してポーションを入れられるようにしている。
両手で掴んだポーションを下手投げでぶん投げる。
上手投げの方が得意だが、止まっている人間などこれで充分だ。
まっすぐに飛んだポーションは武器を構えていたスーツ姿の男の頭に当たって撃沈させる。
さすがに殺しは御法度なのでかなり手は抜いて投げている。
「な、何しやがった」
まぁ魔法も弓も銃も使わずに敵を倒すのだからびっくりするよな。
残りは人質を取る男と取りまとめをしている男のみ。
「人質を!」
女の子を前面に出し、ナイフをつきつける。
女の子を盾にしているようだが……。
「そんなの盾にもなんねぇよ……なぁカナディア!」
俺はガンマンの早撃ちがごとく、ポーションを抜き取りぶん投げた。
早撃ちならぬ早投げ。俺の技量だったら0.1秒の世界を狙える。
そしてコントロールも正確だ。
当然ポーションの速度を見切れない男は女の子の盾も無駄となり、頭に当たって倒れてしまった。
俺に人質は通用しない。
「ちっ!」
「女の子は助けました!」
投げると同時にカナディアが飛び出したおかげで女の子は無事救出することができた。
さすが身軽だ。俺ではこうはいかない。
残るは取り仕切るスーツ姿の男、ただ一人のみ。
「てめぇら、調子に乗るなよ」
このままポーションを投げて眠らせてもいいが、ここは撤退させるべきだろう。
抑止力にはなるはずだ。
だがスーツ姿の男は撤退せず……不適にも笑っていた。
「先生、お願いします!」
スーツ姿の男が後ろを向いて、声を張り上げた。
「へ、冒険者がいる可能性は分かってたからな……皆殺しにしてやる」
まさか……もう一人いたのか?
のそりのそりと歩いてやってきたのは一人の男。
珍しい和装に草履、そして……刀に手をかけ、歩いてきた。
男は止まる。
「ヴィーノ、来ます!」
「くっ!?」
男は一瞬で距離を詰めて刀を振るってきた。
俺は後ろに下がってすんでの所で避ける。カナディアが合図してくれなかったら斬られてたかもしれん。
和装の男は両手を挙げて、刃をこちらに向ける。
「カナディアはピエラさんや子供達を守ってくれ。俺が何とかする!」
和装の男がまた飛び出してきた。
俺はポーション投擲以外の戦闘スキルはない。
当然防御に該当するものない。
攻撃を受けたら一発で沈むし、当然避けることだってできない。
なら……どうするかって? 受け流すんだよ!
男の袈裟斬りをポーションで受け止めて、流して避ける。
再び横に斬ってきたそれをポーションで跳ね返す。
さらに縦に斬ってきた所でポーションを刀の峰に打ち付けて打ち返した。
パリン! パリン! パリン!
受け流すたびに割れるポーション。だけど……ダメージは一切ない。
これが俺があみ出した必殺の防御手段!
その名も……。
「俺は全てを【パリン】する!」
ハイファンタジー年間ランキング1位リスペクトです!
次回も新技を披露します
『期待する』『次も読みたい』『おまえ、これが言いたかっただけだろ!』
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