EX1 コミカライズ開始記念SS ポーション投擲とは
この話では1章序盤の関係性で進みます。
「ポーション投擲を私も覚えたい?」
工芸が盛んな街での仕事が軌道に乗り始めた頃、カナディアからそんなことを言われた。
2人でパーティを組み始めて特に問題は発生していない。
俺のポーション投擲とカナディアの太刀術の連携も上手くいってるし……。
「ええ、お互いを知るということは大事なことですから」
「それとポーション投擲を覚えるのとどう関係しているんだ?」
「パートナーの趣味を理解するのが伴侶の役目ですから」
「なんか……よくわからんが、まぁいいか」
覚えたいというのであれば教えてあげるのは当然。
俺のポーション投擲。ポーションの効能はアイテムユーザーとしての技能によるものだが、投擲は俺独自の技術である。
冒険者になって長年の経験により、俺はポーションを自在に投擲できる技術を手に入れた。
最初は大変だったけど……モノにできればこれほど便利なものはない。
どっちかというと投擲の速度を制御することに力を入れていたから何も考えずぶっ放すことは最近まで考えつかなかった。
基本やっぱポーションは回復させるためのものだしな。
俺とカナディアは街の外の原っぱに出ることにした。
ここなら他の人が被害になることもない。
「じゃあ、一回投げてみようか」
「はい!」
A級冒険者カナディア、わずか16歳でA級に上り詰めた腕は天才的だ。
もしかしたら俺の投擲術もすぐにマスターするかもしれないな。
ま、太刀と同時に使うことはできないから俺の地位が脅かされることはない。
「えいっ!」
カナディアは可愛らしく腕を振る。
女の子らしい手の振り方でとっても可愛らしい。
ポーションは山なりを弧を描いて地面に落ちてパリンと割れた。
「やっぱりヴィーノのようにはいかないですね」
「ただ投げただけだからな」
あの手の振り方じゃまともに飛ばないだろう。
ポーション投擲はコツがあって、ちゃんと握らないとまっすぐ飛ばない。
俺はアイテムボックスからポーションを取りだして、ぶん投げた。
真っ直ぐに飛んだそれは遠く離れた木の細枝を跳ね飛ばす。
「おおー。あんな遠い所のものを正確に撃ち落とすなんてさすがですね」
「あれぐらいなら軽いもんだよ」
「銃と違ってヴィーノ自身で扱えるのが利点ですね。ただ連射は難しそうですが」
「いや、威力が下がるけど連射はできるぞ」
「え?」
アイテムボックスに手を突っ込み、5本のポーションを同時に投擲。
同じの木の枝の葉を撃ち落とした。
「銃よりすごいんじゃ……」
「ただぶん投げるだけなら楽だよ。やっぱポーション投擲の難しい所は相手の口の中に投げ入れる制御」
「制御!」
「カナディアもそれを覚えたいんだよな」
「はい! ヴィーノったら固くて大きいものを私の口に入れるんですから」
「その表現やめような」
うっとりしながらだが、分かって言ってないような気がする。
俺が元々ポーション投擲を覚えたのは回復術師よりも早く味方を回復させるのが目的だ。
俺の作成したポーションの回復量は回復術師の術を超える。
ただやっぱり魔法をかけるだけで効果が出る以上、回復の速度はあっちの方が上だ。、ポーションは飲まないと効果を発揮できないのが難点。
傷に振りかけることことでも効果はあるが、やはり……口から入れて人間の持つ治癒機能を増大させるのが一番効率がいい。
「じゃあ制御の練習をしてみようか」
「はい、先生厳しくお願いします!」
「ああ。じゃあポーションは速度を反転させてみようか」
「……は、はんてん?」
カナディアは首を傾げる。
「相手の口に入れるんだ。そのままでぶん投げたら口の中をケガしてしまう。だから相手の口に入る瞬間にスピードをゼロにする必要がある」
「どうやるんですか」
「こうだ!」
再びポーションを掴んでぶん投げる。
カナディアが口開けていると想定した場所でスピードを反転させて停止状態にさせる。
これを覚えるのが大変だった。だがおかげで口の中をケガさせずにすむようになる。
「よし、カナディア。やってみようか!」
「ヴィーノはその反転って技を覚えるのにどれだけかかったんですか?」
「10回くらいかな」
「……」
「カナディア?」
「ポーション投擲は私には無理みたいですね」
「あきらめはやっ!」
「ヴィーノは投擲の天才だと思います。もし投げナイフとか覚えてたら違った道になったかもしれませんね」
「そうかもしれないな。だけど」
俺はポーションを掴んで見せた。
「俺にとってポーションが最強なんだよ」
誰だって手慣れた武器が一番強い。
それがポーションだったってことさ。
そんなわけで本日からコミカライズが開始となります。
後に活動報告にリンクを張りますが、ニコニコ静画などでタイトル検索すれば出てきますので見て頂けると嬉しいです。
コミカライズ向きの作品だと思いますので一から応援頂けると幸いです。