130 戦いの終わりと終わりの始まり
今回に至っては正直、戦いよりも後処理の方が大変だったかもしれない。
【覇巌龍】をメインで戦っていた先輩達にまずは挨拶。
「やっぱ先輩達はすごいですね!」
「おまえ(あんた)ほどじゃない」
3人に揃って言われることになる。
「あんたやべーな。何がやばいってあんなでけーポーションをぶん投げて超遠距離から飛ばしてくるのがやべー。ちょっと我が目を疑ったっちまったよ」
「何かあんまり褒められている気がしないな」
アメリ先輩から凄く呆れた声で物を申される。
「ポーちゃんの機能でメテオシステムは聞いていたがポーションを巨大化させるとは……さすがに私も予想できなかったな」
「いや~、あんなに上手くいくとは思ってなかったです」
「なぜポーションなのか。何度考えても私には理解できない。おまえは想像以上に頭がおか……独創的だと思う」
シィン先輩から頭がおかしいと言われかけ気を使われる。いや、普通に言ってくれた方が気が楽だったかもしれない。
「ヴィーノ」
「ペルエストさん」
「さすがの俺も【覇巌龍】をあんな風に1撃では倒せん。【岩砕龍】もよくチームで戦ったな」
前2人と違ってやはりペルエストさんは落ち着いた言葉で俺の肩を叩いてくれる。
憧れの冒険者に褒められるってうれしいな。
「【岩砕龍】でのポーションの使い方を聞くと……もはや単体でおまえに勝てる冒険者はいないのかもしれん」
「そんなことないですよ、さすがに」
「あんな頭おかしいポーション使い方するやつに常人が勝てるわけねーじゃん」
「我々は常識の範囲内で戦っているのだ。頭おかしいやつには勝てん」
「頭おかしいって連呼すんのやめてくんないですか」
まぁ確かにポーちゃんの機能はエグいと思う。ポーション・ビット・システムをかいくぐれる人間は恐らく存在しないだろう。
そういう意味で俺は王国最強の冒険者になるのだろう。
「だけど……俺が最強だというのであれば仲間がいてくれるからでしょう」
「ほぅ」
「カナデ、スティーナ、シエラ、ミュージ、ポーちゃん。みんながいてこその最強です。俺はみんながいてこそ最強になれるんだと思います」
「うん」
アメリは頷く。
「フン」
シィンさんは鼻で笑うが笑みを浮かべている。
「それを忘れるな。忘れなければ……おまえは最強の存在のままでいられる」
今回の件を経て、俺は限定的ではあるが王国の最強の冒険者の1人として肩を並べることとなった。
そして……。
「わたくしはこの目で見ました。【岩砕龍】を倒したのは美しき乙女、冒険者カナディア様であると」
シュトレーセ様と共にカナデは王国新聞キングダムタイムズの取材を受ける形となった。
さすがに姫君と一緒であれば新聞社も無視することができない。
新聞社の上役は難色を示したらしいがやはり記者の中には取材をしたいという心意気を持った者もいたようで、それに焚きつけられて真実を知りたいジャーナリスト達が集まることになる。
時に厳しく、時に鋭い質問を投げかけられたがカナデは笑顔で答えていく。
横には次期国王候補のシュトレーセ様もいるのであまりにひどい質問はされなかった。
「カナディアさんは冒険者になり、その黒髪ゆえにたくさんの迫害を受けてきたと聞きました。恨む気持ちはあるのではないですか?」
「そうですね。私も人間ですから……。ただ冒険者になって素晴らしい出会いもたくさんあったのでそれ以上に嬉しいことがばかりでしたね」
「これからのことについて教えてください」
「いつの日か王国そして世界中で黒髪でいることが憎しみの象徴にならない世界となることを願います。黒も白も……世界中みんなが笑って暮らせる世界にしたい。ずっと笑顔でいたいです」
そう言ってカナデは微笑んだ。その笑みはこの場にいる全員を魅了してしまう。
「う、美しい……女神だ」
「へ?」
「カナディア様、感動しました。わたくし、全力でカナディア様の後ろ盾にならせて頂きます! 他ならぬ友として!」
シュトレーセ様まで感激させてしまったカナディアは詰め寄られて慌ててしまう。
いろんな声が聞こえる中、最後、1つだけ質問が飛んできた。
「そうだ、カナディアさんの嫌いなことってなんですか?」
カナディアはまた笑顔になった。
「浮気と不貞です」
でもなんか黒いオーラが出ていた気がするし……。
なぜかとても胸が痛かった。
◇◇◇
そして2匹の破滅級の魔獣を倒したということで俺のパーティは全員取材を受ける形となった。
そして俺とカナデが夫婦であることも取り上げられることになる。
「2人は夫婦とお聞きしたのですが……すみません。一夫多妻なのですね」
「違います! シエラもスティーナも離れてくんない!?」
「シエラはこのままでいいよ」
「あたしも面白いからこのままでいいよ」
俺の両腕をシエラとスティーナががっちりと掴む。
おかげで妻のカナディアが少し下がった位置となっており、あきらかに怒っている雰囲気なのが伝わる。
「あ、あのカナディア。顔が……いけないことになってるよ」
「何か問題でも?」
「ごめんなさい。もう何も言いません」
「マスター、お顔が真っ青ですの!」
ミュージにまで被害が!
「ちょっと、ちょっと!!」
5人揃っての写真を撮ろうとした時、聞き覚えのある声が撮影所の方に入ってきた。
「帝国時報でーっす! その5人の知り合いだから優先的に取らせてもらうわよ!」
「レリーさんか!」
朝霧の温泉郷で出会った。女性記者であった。
帝国人の彼女がなぜここに……。
「あなた達大活躍だったそうじゃない! カナディアに最初に目を付けたのはあたしなんだから……取材は当然でしょ!」
確かに……。レリーの情報のおかげで巨大蟻を見つけて撃破することができたのだ。
あの見返りは特に何もしていなかったから先に撮らせてもいいか。
まさかわざわざ王国まで取材に来るとはすごいな。
「世界中にあんた達の活躍を届けてやるから!」
レリーはカメラマンのマイケルに指示し、俺達は5人とポーちゃんはいろんな感情を出しつつも笑顔で写真を撮ってもらう。
そしてその写真と取材内容は世界中へと伝わった。
◇◇◇
「へぇ~あの時のポーション使い。また成果を挙げたようだな。
「ヴィーノの奴、凄く頑張ってるよね! あたし達【アサルト】も負けてらんないね」
「分かってるわよ。まー、オスタルとトミーはボコボコにされたから恨む気持ちあるんじゃない?」
「るせーー。ヴィーノの野郎……生き生きとしてんな……。もう仲良くはできねーだろうけど……いつかまたあいつと」
「ふん……」
「お父さん、お母さん! ミュージが帝国時報に出てるよ! 冒険者のおにーさん達と一緒に写ってるよ!」
「ああ、本当に大きくなったな。王国行きって聞いた時は心配だったけど……本当によかった」
「ミュージ……いい笑顔をするようになったね。メロディも安心したんじゃない?」
「うん、ミュージ、いつか私も王国に遊びにいくから……! 成長した所……しっかり見せてね!」
「おー、スラムのアイドル、スティーナちゃんが新聞に出てるぞー!」
「食堂を辞めちまって寂しくなったけど……元気にやってんだな!」
「俺たちゃ、いつまでもスティーナちゃんを応援してるぜ」
「(怪盗ティーナ、新たな道を見つけたのだな。君は私を知らないが……私は君と姉と母に付き合いがあったから……逝った彼女らに変わりに報告しておこう)」
「シュウザ、スイファン」
「ペルエストさん!? いったいどうしてここに……まだ定期訪問の時期では……」
「おまえ達に娘の活躍を見せてやろうと思ってな」
「おお!! カナディアちゃんと婿殿が写ってるじゃないか!」
「カナディア……こんなに大きく写って……ぐすっ」
「泣くなスイ……。そうか、夢に向かって大きな一歩を歩んだのだな」
「おまえ達の娘は本当に立派な冒険者に育ったぞ……」
世界中に広がったそれは……大きなうねりとなり、黒髪への迫害に対して疑問を投げかけることとなった。
ヴィーノとカナディアにとって夢に向かって進む、本当に大きな第一歩だったのだ。
これから2人とその仲間達は協力しながら幸せに暮らしていく。
はずだった。
そしてその時は来てしまった。
「教皇様! シエラ様の行方が……白の巫女の行方が分かりました!」
「どこだ」
教皇と呼ばれた一人の男は配下の物から帝国時報を手に入れ、軽く文面を読む。
「ふん、やはり王国あたりにいたか……。ようやく準備は整った。さぁ……我らの姫を迎えにいこうか」
そして男は新聞を投げ捨てる。
「白の巫女よ……、いや……シエラ、幼馴染として夢を一緒に叶えよう」
6章 ポーション使いと最強の仲間達 ~完~
最終章 ポーション使いと最後の戦いに続く
6章完結となります。
次から最終章となりますがまったく書けておりません。
スタンスとして完結までかき上げてから投稿するスタイルのため、完結まで書き切るためしばらく休載となります。
3巻決まったら強制的に書くことになるので是非とも新刊買って下さい!(懇願)
それは半分冗談として本作はコミカライズも決まっており、そう遠くない内に始まると思いますので宜しければこれからも応援を宜しくお願いします!
先を期待頂けるなら感想や書籍の購入を下記のカバーイラストのリンクから飛べますので是非とも宜しくお願いします!