127 ヴィーノパーティVS巨大魔獣③ スティーナ視点
あたしは後ろ目でヴィーノの様子を見ていたけど……予想大きく超える光景を目にしていた。
なにあれ……。何でポーションが空中浮いてんの?
ポーションが砲撃して、突撃して、防御する。
わけがわからない。元々ポーちゃんの存在の時点でとんでもなかったけど……。
いやまぁ……怪盗の事件の時もポーションは浮いていることはあったし、それに乗って空も飛んでたけど……あんな規則正しく動くポーションは魔導機械ですら見たことがない。
ポーションにこだわり捨てて研究者になった方が絶対世の中のためになる気がする。
ヴィーノとポーちゃんが引きつけているおかげであたし達は楽々【岩砕龍】に近づくことができた。
シエラの支援はセラフィムが行うから、あたしの目的は主にカナディアの支援である。
足を攻撃して崩させるのはいい戦法だけど、それじゃ時間がいくらあっても足りない。
S級冒険者の支援を受けるために時間を延ばしてもいいんだけど、カナディアのためになるべくあたし達5人でこの【岩砕龍】を倒すことを推奨されている。
あたしはそんな無理しなくても……って思ったりもするけど黒と白の関係とか国の上層部しか知らないような秘密を知っちゃったからね。
生まれはスラムで大した血筋もない一般人のあたしが白の民とか黒の民とか……そんなことに巻き込まれてしまっている。
でも大事な仲間で友達のために動くことは決して嫌じゃない。
むしろ……この目で見てみたいとすら思う。
横で一緒に走るカナディア、今まで虐げられたいたカナディアが誰からも愛される存在になることを……。
「カナディア……失敗したらごめん」
「ん? 失敗なんてしませんよ」
この1つ年下の誰よりも綺麗な黒髪の女の子は笑う。
「スティーナなら失敗しないって心から信じていますから」
ったく、予防線張ったのにそんなこと言われたら失敗できないじゃないの。
あたしはヴィーノから渡されたポーションを空へと投げる。
確かリフレクターポーションだったかな。
元々は跳ね返すためのものだけど、空中に一定時間浮遊させられるから簡易的な足場にもなる。
あたしは【岩砕龍】の側部に足をかけて、一気に跳躍する。
得意のフックショットを使って岩砕龍の背中まで一気飛び移る。
自慢だけど、これだけの芸当ができる冒険者はほとんどいない。
多分S級でもいないだろう。……空飛ぶのは例外だけど。
卓越した身体技能と空中のバランス感覚。
怪盗ティーナを演じてきたあたしにはこのぐらいお手の物である。
飛び乗る段階でリフレクターポーションを至る所に置いてきたのでカナディアはそれに乗って飛び上がっていく。
リフレクターポーションは移動できない。つまり【岩砕龍】が位置を移動すると足場として役に立たなくなるのだ。
だからあたしはできる限り広範囲に足場を組むように移動する。
カナディアが戦いやすいように足場を何個も作って、支援するのだ。
一個置いて、さらに遠くに一個を置く。フックショットを使ってポーションに引っかけって、リフレクターポーションを設置していく。
まるであたしが空中を散歩しているように見えるだろう。
「あ、やば」
油断した!
【岩砕龍】が岩をぶっ放していたことに今、気付いた。
双銃剣でガードしようした所に淡い光のシールドが貼られたのだ。
「だいじょぶ?」
「だいじょーぶ!」
シエラがセラフィムを使って守ってくれたみたい。
「ちょっと引きつける」
本当にシエラは不思議な子だわ。
箱入りっぽくて物をまったく知らないのに戦闘能力は高いし、魔力も高い。
だけど危機の時にいつもしれっと現れて対処してしまう力を持っている。
セラフィムが教えてたりするのかしら。
シエラが2対の剣を振って【岩砕龍】の顔面に斬撃を与える。
セラフィムが守ってくれるって分かっているけど、何も躊躇せず空を飛ぶのは度胸がいいというか何というか。
頼りになるのは間違いないわね。
そしてカナディアがあたしが設置したポーション足場を伝って【岩砕龍】の位置まで上がってきた。
「一の太刀【落葉】!」
身の丈ほどもある大太刀を軽々と振って【岩砕龍】の首に一撃を与える。
あの大太刀ってすっごい大業物らしくて、斬れ味凄いのよね……。
すっごく重たいのに軽々と扱うから……本当にすごいと思うわ。
「ちっ」
ヴィーノのポーションの効果で肌が焼けているから耐久力は下がっていると思うけど、サイズがバカでかいだけあって多少の傷はつけられても両断までは難しい。
【岩砕龍】の意識がカナディアの方に向く。
生み出された岩石がカナディアに向けて飛ばされた。
カナディアは大太刀を振って岩石を斬り裂いていく。
【岩砕龍】は大きく息を吸ってブレスを吐いてきた。あのブレスには鋭くて細かな岩石まで含まれている。
あれはは恐らくガードしきれない。あたしがカバーする!? でも間に合わない。
「セラフィムバリア」
情の入らない声で半身の鎧の魔人がカナディアの前に立ち塞がった。
魔力の壁が出現し、【岩砕龍】のブレスを防いでいく。
シエラがカナディアを守るように指示するなんて……、犬猿の仲だと思ってたけど。
カナディアも信じられないような顔でシエラを見ていた。
「ずっと見てたけど」
シエラはあたし達がいる【岩砕龍】の背中に降り立った。
「黒狐は……黒の力をまったく使えていない」
「っ!」
「え、でもカナディアは黒魔術の才能があまりないってスイファン……カナディアのお母さんが言ってたけど」
「それはあくまで魔術の話。巫女であえば100%引き出せる特異の力、それが白の力と黒の力」
「あなたならは引き出せるのですか」
「当然……。半端ものじゃないし」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
【岩砕龍】が多く叫んだ。
耳が痛いほどの咆吼に少し怯んでしまう。
すると【岩砕龍】の周囲には大きな竜巻が出現した。
その竜巻が全部……あたし達の方へやってきたのだ。
「スティーナ、しゃがんでて。セラフィム!」
あ、うん。
シエラはマテリアルブレード、スピリットソードを掲げる。
赤と青で光輝く2対の剣……シエラは両手を横に伸ばして両手の剣を地面と平行に伸ばす。
大型の竜巻が複数迫ってきた。
「すぅぅぅぅ……」
大きく息を吸う、シエラを見つめる。
シエラの体が淡く、光始めた。後ろで見守るセラフィムも同様に光始めた。
これがさっき言ってた白の力ってやつなのなのかもしれない。
シエラの輝きがさらに増していく。表情は……あれ? 何だか無性に顔が赤い。
「白皇の剣! -エクスカリバーン-」
シエラは大きく腰をまわして生み出した白の刃。
周囲全てに飛び出して行き、竜巻を巻き込んでいく。
「なんて綺麗……」
光の残滓がそのフィールドに残り、何だか心地よい思いがした。
まるで……シエラの幸せさが伝わるようなそんな気がした。
【岩砕龍】の竜巻はその効果で全て消し去り、【岩砕龍】自体の戦意もさきほどは違い消えているような気もした。
怒りまでも解除してしまうってことなのかしら。
これが白の力、白の巫女であるシエラの力だって言うの……?
シエラは振り返り、カナディアに顔を向ける。
「黒狐も……これぐらいできなきゃ。黒の巫女はその程度なの?」
シエラは大きな力を見せつけた。






