125 ヴィーノパーティVS巨大魔獣①
10分ほど空を飛んでいるとミュージがぶんぶんと手を振っているのが見えた。
ここだな。
【覇巌龍】がいた砂漠地帯じゃなくてどちらかという草原地帯となっている。
大型魔獣との戦闘では入り組んでいる岩場とかの方が戦いやすいんだよな……。
「ヴィーノが来た!」
地に降り立った所にミュージとポーちゃんが近づいてくる。
「おつかれさま! 【覇巌龍】はどう?」
「何とかなりそうだ。王国一の冒険者と魔法使いと馬鹿力がいるからな」
「何となく……誰かそうなのか分かるような気がする」
振り向くと【岩砕龍】がのっしりと近づいてくる。
ちっさいな。【覇巌龍】に比べたら小さすぎる。
前に工芸が盛んな街で戦った【砲弾龍】と同等くらいのサイズのようだ。。
一般的な破滅級の魔獣はこれくらいの大きさだ。
「ケガはありませんか?」
カナデとスティーナとシエラが近づいてくる。
「ああ、君達も無事のようだな」
「戦ってないですからね」
「そろそろ体を動かしたいと思ってたのよね」
「ごはん我慢した」
一番小柄のシエラの頭を撫でてやり、【岩砕龍】の方を見据える。
「フォローが来るまでは俺達5人であいつを押さえないいけねぇ」
「大変ですの!」
「そうだな。大変だ。……でもやるしかない……それにこれはチャンスだ」
「チャンスってどういうことよ」
スティーナの問いに俺はカナデを見る。
「考え方を変えるんだよ。王国の姫の前で破滅級の魔獣を5人でぶっ倒すチャンスとも言えるんだ」
「ヴィーノ」
「災いをもたらす黒髪を持つ冒険者が破滅級の魔獣のトドメを刺す、いいシナリオだと思わないか」
「黒髪の風潮に対して良い風が吹くのは間違いないね」
今回の騒動は王国メディアが強く注目している。
カナデだけであったら無視されたかもしれないが、シュトレーセ様の目の前でカナデが成果を上げる。
これだと大きく変わってくる。
「ペルエストさんはそのためにヴィーノ以外のみんなを姫様の護衛にさせたのでしょうか」
「その可能性は高い。あの人の眼ならここまでの流れを読んでいそうだしな」
「ヴィーノ様」
シュトレーセ様が親衛隊を連れてやってくる。
「【岩砕龍】が向かっている方角とはズレているので姫様はこの場にいてください。親衛隊の方も護衛お願いします」
「たった5人で大丈夫なのですか?」
「俺達5人だから大丈夫なのですよ」
「ポーもいるですの!」
おっとそういう意味で6人か。
「ふふ、ではここで皆様の活躍を見させて頂きます。カナディア様が成果を上げれば将来の親衛隊に誘う話を王国議会にも通しやすくなりますし」
「あはは……頑張ってみます」
姫様も何となく状況を見えているようだ。
「おっし! ヴィーノ隊、準備はいいか!」
『おう!』
全員からはっきりと声を返してくれる。
「カナデ、メインのアタッカーとして頼む。あの龍の頭を斬り落としてくれよ」
「当然です」
「シエラ、カナデの援護……ってのは言わないから思いっきり戦ってこい。全体攻撃の際はセラフィムの防御を頼む」
「ラジャ」
「スティーナ、前衛の支援を頼むぞ。わりと君にかかってる」
「ふん、怪盗業より楽だっての」
「ミュージ、今回は俺が出る。ポーちゃんの魔力供給に専念してくれ」
「アレをやるんだね。分かったよ。僕の魔法も破滅級にはまだ通用しない。今回の見せ場はヴィーノに譲るよ」
「ポーちゃん、攻めるぞ」
「はいですの!」
各員に身軽なメンバーにジェット・ポーションを渡し、シエラとミュージはセラフィムに乗って空中を移動して【岩砕龍】の近くまで移動する。
目前に迫る【岩砕龍】。
四足歩行で飛ぶことはできないが、地中に潜ったりすることができる。
長い首をもっており、全身の硬度はかなり固い。
本来であれば5人で戦う敵ではないが……ぶっ倒すしかない。
【岩砕龍】がじろっと俺達を見つける。元々気性の荒い生物と言われている。
引きつけるのは簡単だ。
あとはどっちが倒れるか……勝負である。
「ミュージ、ポーちゃん!」
「了解、魔力供給量を通常の倍に! ヴィーノを頼むよポー!」
「はいですの! おにいしゃま、いくですの!」
俺のポーションホルダーから大量のポーションが抜き取られていく。
「ポーション・ピッド展開! ポーション・ピッド展開!」
ポーション1000本を制御し、攻撃と防御に展開する。
これが俺の新たな力だ!