118 ポーちゃん誕生!
部屋の中央に無数のポーションと管に繋がれた1体のホムンクルスが存在する。
シィンさんが持っていた秘蔵のホムンクルスの素体と動力源として破滅級の魔物、かなり前に倒した砲弾龍の心臓素材を加工して生み出した。
これがまたすごい出力を生み出すんだよな。大事に取っておいてよかった。
そしてエネルギー源はミュージの魔力である。
ミュージが己の魔力を溜め始めた。
ホムンクルスとミュージの間に魔力を伝達させるチャンネルを開通させることにより、触れなくても魔力を行き渡らせることができるのだ。
これは外への放出機能のみ死んでしまったがそれ以外はピカピカのミュージの魔臓だから出来ることである。
この国でこれができるのはシィンさんとミュージくらいなものだ。
シィンさんはS級や研究者としても多忙だ。だからミュージというフリーな存在がこのプロジェクトで絶対に必要だったのだ。
「さぁ……起動しろ! ポーション・ホムンクルス【ポー!】」
ホムンクルスは目を開き、両手足を動かした。
そしてゆっくりと顔を上げて……ブルーの瞳が開く。
「はい、マスター」
「喋った!?」
よし、成功だ。
スティーナの驚く声に思わずにやりとしてしまう。
ポーション・ホムンクルス【ポー】はミュージの呼びかけに答えて空へと飛び上がった。
身長はおおよそポーション2本分、女の子タイプのホムンクルスである。
ポーションと同じ色の青のセミロングヘアーで決めている。
当然言語機能も搭載、自立機能も備えてる代物だ。
「初めましてですの! ポーはポーと申しますの。ポーちゃんと呼んでくださると嬉しいですの!」
「ポーションのホムンクルスだからポーちゃんですか……」
ネーミングはいろいろ案があったんだけど……結局こういう形で落ち着いた。
「カナディアしゃん! スティーナしゃん、シエラしゃん! 宜しくお願いしますの!」
「か、かわいい!!」
カナディアとスティーナがぱっとポーちゃんを抱きしめにいく。
うん、女性陣からの評価も上々だ。
初めは動物案もあったんだけど、シィンさんが断固女の子タイプがいいと押し切りやがった。
……かわいい系の方が愛着が湧くのは間違いない。
「しかしよく出来てるわねぇ」
「すごいですよ……。ポーちゃんを介してどのようなことができるんですか?」
ミュージが指を立てる。
するとポーちゃんの手から炎が吹き出た。
「僕の体の放出機能をポーに移しかえている。だから僕の魔法は全てポーを介して出すことができるんだ」
「へぇ、つまりミュージは魔法使いとして活動できるってことですね」
「うん、ポーの稼働分の魔力は取られちゃうけど、S級にだって負けない魔法を使うことができるよ」
「それだけじゃないさ。ポーちゃん、アレを出してくれ」
「はいですの!」
ポーちゃんは何もない所からポーションを生み出した。
そう、この子にはポーションの作成機能も付加させている。魔力によって様々なポーションを生み出せたらよかったんだが、現状はノーマルのポーションだけだ。
ポーちゃんが存在し、ミュージの魔力が続く限り、半永久的にポーションを生み出すことができるのだ。
1000個のストックが無制限になるってことだ。
「無限大にポーションを生み出すことができる。ポーちゃんの最高の機能ってわけだ」
それにポーちゃんの技能はそれだけじゃない……が。
ここでそれを出すことはできないのでどこか大きな戦闘があった時だな。
「ねー、ヴィーノ」
「なんだシエラ」
「何でこの子、あんな語尾なの? ヴィーノの趣味?」
これはシィンさんの趣味である。だって語尾に特徴付けないとスポンサーになってくれないって言うから仕方なくなんだよ。
「シエラしゃん、ダメですの? マスターとおにいしゃんが付けてくれたポーの機能ですの!」
「おにいしゃん!?」「おにいしゃん!?」
カナデとスティーナの声が重なる。
「ちなみに僕がマスターでシィンさんがグランドマスター。お兄ちゃん呼びさせてるのはヴィーノだから! 言っておくけど」
「あ、てめっ!」
「ヴィーノ、お兄ちゃんって呼ばれたかったの?」
シエラの直球な言葉に若干どもってしまうが……割切ろう。
「そうだよ。悪いかよ! 俺、男兄弟で育ったから妹欲しかったんです! お兄ちゃんって呼ばれてみたかったんです!」
「あ、だから私にたまに妹プレイを強要するんですね」
「今、それを言わなくていいよねぇ……カナデさぁん」
「じゃあさ……ヴィーノ」
「んだよ」
今度はスティーナから問いかけするような口調で聞かれる。
「なんでポーちゃんのおっぱい大きいの? 別に大きくする必要ないよね」
ポーは女の子らしくってことで胸が大きめに設定してある。
こ、これは俺が提案したんじゃないぞ!
「ま、まぁ……気にするなよ」
「え、でも手足の細さはスティーナ、胸の大きさはシエラ、胸の柔らかさはカナディアを参考にって言ってなかった? 俺が一番女を知ってるってドヤ顔してさぁ」
「ミュゥゥゥーージ!? おまえ余計なこと言ってんじゃねぇーーよ! 巨乳案はおまえも納得だっただろうがぁ」
「ヴィーノ」「ヴィーノ」「ヴィーノ」
「ひっ!」
あの……何か3人の女の子の目がちょっと怖いんですけど……ってかシエラ、君までそんな顔しちゃうの!?
「ちょっと向こうでお話聞かせてもらいますね」
「どういう気分でポーちゃんを作ったのか詳しく聞かせてもらおうじゃない」
「ヴィーノの……めっ」
「いや、ちょ、ちょ、ごめんって! ぎゃああああああ!?」
「マスター! ポーはいっぱいいっぱいがんばりますの!」
「うん、宜しく頼むよ。ヴィーノ達の力になろう」
俺は3人の女性から折檻を受けて反省を促されるハメになったのであった。
新しい仲間、ポーちゃんを加えて……話は新たな局面へ進む。