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115 王国案内②

「今、どこに向かってるの?」


「冒険者ギルドだよ。君の身分証を作る必要がある」

「講習とか受けなきゃいけないんだよね。ちょっと調べてきたよ。予習もしてきたから……試験は大丈夫だと思う」

「ああ、S級からの推薦だと一切必要ない。5分でできるぞ」

「ええ……せっかく勉強してきたのに」


 シエラの冒険者証作成も5分で終わったからな。

 冒険者ギルドの格差社会ってやつだ。S級冒険者が早く作れと言えば何でも許される。

 もちろんそれに見合った成果を上げないといけないが……。


 シエラはその強さで破竹の勢いでクラスを駆け上がった。

 ミュージの場合は単体では何もできない。……だからこそ俺とシィンさんが考えているプロジェクトを薦めなきゃいけないんだ。


「よし、ここからは乗り物になっていくぞ」


「王国では馬形魔獣を使うんだよね!? 僕見てみたい」


「セグウェイポーション!」


 ミュージの顔がものすごく嫌そうな顔になった。


「なんだよ、ポーションに乗って移動すればあっという間だぞ」

「スケートボードとかでいいじゃん……」

「セグウェイポーションはポーションを燃料とした移動道具だ。ブレーキも方向転換も思いのままだ」


「どうしてそんな画期的な発明をポーションでやっちゃったの……?」


 まだまだ改良が必要のため基本下り坂を推奨している。

 俺は基本操作をミュージに教えて、セグウェイ・ポーションに乗って移動だ。


 ゴロゴロ、ポーションの横回転の力を利用して移動だ。

 ダンジョン内でも使えるようになったらかなり便利だぞ~。

 もう少し改良したら世間でも広めたい。


「うわぁ……地味に出来がいいのが怖い」

「こんなことで驚いてたらこれからの生活大変だぞ」

「ヴィーノって冒険者より発明家の方が向いてるんじゃない?」


「たまにそれは思う」



 ◇◇◇



「へぇ……王都の冒険者ギルドっておっきい」


 ミュージは到着早々感嘆の言葉を述べた。

 朝霧の温泉郷のギルドに比べたら段違いに大きいのだろう。

 S級から低級までこの王国中の案件を取り仕切っているだけあって王都の冒険者ギルドは世界の中でも規模が大きいと言われている。


「あ、おはようございます!」

「【ポーション狂】!」

「いい天気ですね、【ポーション狂】」


 受付の方へ向かっていると低級の冒険者達から挨拶で頭を下げられた。


「やっぱ……ヴィーノってすごいんだね。みんな頭を下げてるよ」

「S級は絶対的な権力を持つからな。ただ俺やカナデが偉いんであって、そこははき違えるなよ」

「わ、分かってるよ」


 若者にありがちな、偉い人の取り巻きになると自分も偉いと勘違いしてしまうやつ。

 S級のお気にいりになったら偉くなれると勘違いする冒険者はかなり多い。

 俺の指揮下のやつ、スティーナやシエラは性格的に大丈夫だがミュージは危うい所があるように見える。

 ミュージにはそういう風に育って欲しくはない。ちゃんとそこは教えていかないと。


 ま、俺もカナデもS級でも下位の方だから偉そうにはできないんだよな。アメリとかシィンさんにはまったく頭上がらないし……。


 ミュージを連れて受付の方に顔を出す。


「あ! ヴィーノさ~~~ん!」


 可愛らしく愛嬌のある声、S級に対してこんなに気安く声をかけてくる子は一人しかいない。

 前の街にいた時から変わらないのは嬉しいけどな。


 桃髪の受付係のミルヴァがぶんぶん手を振って声をかけてきた。


「おはようございま~~す。今日はどうしたんですか」

「ミルヴァおはよう。今日も元気だな」

「元気がとりえですから。随分とかわいらしい子と一緒ですね、また浮気ですか!?」


「おい、上にクレームいれんぞ」


「何だかすごい人だね……」


「冗談ですよ。でもヴィーノさんが男の子と一緒って珍しいですね」

「人を好色家にするんじゃない。前にちょっとだけ話したことあったろ。俺の推薦で冒険者にさせたいやつがいるって」

「言ってましたね~! じゃあその子が帝国から来た魔法使いさんですね」


 ミルヴァがぐいっと受付台から身を乗り出す。

 ミュージは思わず後ずさったが挨拶するように背中で合図させる


「ミュージ……です」

「ミュージくんですね! ミルヴァといいます。1つ年上なのでミルヴァさんかミルヴァおねーさんでいいですよ!」


「ヴィーノ、この人が風で飛ばした報告書を涙目で2時間追いかけて回収してきた受付係の人?」

「ああ、冒険者の名前を間違えて冒険者証作って、挙げ句の果てに改名しませんかって言いやがった受付係だ」


「ぎゃああああああ! 何てこと教えるんですか!」


「じゃあ宜しくねミルヴァ」


「いきなり呼び捨て!?」


 ミルヴァに即席でミュージの冒険者証を作ってもらった。シエラと同じでD級からスタートだ。

 まったくもうってプリプリ怒っていたがでぇじょうぶだ。どうせ5分で忘れる。


「あれでも受付係としてやっていけるんだね……」


「違う違う。仕事ができる受付係より逆に可愛くて元気がよくて誰にでも平等な受付係の方が貴重なんだぞ」


 ミルヴァに救われている冒険者も数多いんだよ。

 彼女の笑顔は本当に励まされるものだ。

 下位からS級まで変わらずに接してくれる人はそう多くない。


 詫びにまた差し入れでも入れてやろう。

 次の目的地へ向かおうと思った先、1人の人物が向こうからやってくる。


「おっす、ヴィーノ!」


 耳に残る甲高い声、俺にここまで気安く声をかけてくるのは一人しかいない。


「おはよう、アメリ」


風車(ウインドミル)】の二つ名を持つS級冒険者、アメリがぴょこぴょこステップしながらやってきた。


「お、そいつが例の生け贄か!」


「生け贄!?」


「ああ」


「否定しないの!?」


「ふーーん」


 今度はアメリがじーっとミュージを見ていた。

 そしてうんと1度頷く。


「シィンに会わせんだろ? 結果はまた教えてくれよ」


 手を振って去ろうとする。

 シエラの時とかはあれだけ執着したのにあっさりだな。


「分かった。それにしてもアメリ的にはミュージはお気にいりにならない感じか?」


 アメリは歩みを止めた。


「顔は悪くねーけど、筋肉がなぁ。あと40年老けないとあたしの好みにはなんねーよ」


 アメリはかわいい女の子と鍛え上げたナイスミドルにしか興味のない変わった趣味を持っている。

 やはりミュージのような美少年はお気に召さないようだ。


 アメリは軽く手を振って去って行った。


「あの人……強いよね」

「分かるのか?」

「うん、魔力の質が高かった。あんなに子供なのにあれだけ練っているなんて」

「あれでも26才だぞ」

「えっ!? えぇ!?」


 ミュージが何度も驚きの声をあげていた。

 王国冒険者業界の七不思議みたいなものだ……。

 アメリのやつ……本当に老けないよな。絶対12才くらいから時止まってる。


「そ、それより生け贄ってなんだよ。僕そんな話を聞いてない」


「まぁ言ってないからな。それじゃいくぞ。王国最高の魔法使いの研究所にな」

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

表紙イラスト
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