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114 王国案内①

 いやぁ、昨日は修羅場だった。

 いつも通りカナデとシエラがケンカして内容聞いてると両成敗なんだけど何だか無駄に盛り上がってしまったな。

 そもそも炎上大好きスティーナが燃料を入れてくるのが悪い。

 俺が困っている所を見るのが本当に好きなようだ。ほんと変態だなあいつ。


「で、初めての王国はどうだ。ミュージ」


「最悪だよ!」


 外を歩く俺の新たな仲間、ミュージは随分とご立腹のようだ。


 15才で成人してこの王国の冒険者ギルドで働くためにここへやってきた。

 魔法の才能はあるが現時点では俺の持つバッテリーポーションでのみしか魔法を使うことができない。


 ま、帝国の事件から帰国して数ヶ月。何もその点を考えなかったわけじゃない。


「カナディアから微妙に敵視されてるし……意味が分からない」

「悪いな。カナデは嫉妬深いんだ。あいつの前でイチャイチャしなきゃ大丈夫」

「僕は男だよ!?」


 昨日のあの場でミュージを選んだのはある意味まずかったのかな。

“なるほど、男もヴィーノの守備範囲内なのですね"って言ってたから完全にマークされてしまったようだ。


「ミュージ、少しだけ背が伸びたか? 童顔なのは変わらずだが」


「うっ、気にしてるんだから言わないでよ」


 ミュージの身長はカナデとそう変わらない。

 茶髪の幼顔ながら整った顔立ちは大層ギルドのお姉様受けするんだろうなと感じる。

 俺の指揮下のメンバー内では一番年下だから一層弟分みたいな感じになりそうだな。


「そうか、そうか。昨日はよく眠れたか?」


「よく……って眠れるわけないでしょ!」


 昨日ミュージが来た時間は遅かったので話半分で次の日となっていた。


「君用に部屋も与えてやったのに」


「それはすごくありがたいよ。感謝してるし、世話になる分全力で頑張ろうと思う」


 ミュージはぐいっと顔を上げた。何やら頬が赤い気がする。


「カナディアのあえぎ声とずっこんずっこんうるさいんだよ! あれ何!?」

「同衾だよ。あはは、まだまだ子供だなぁ」

「意味を聞いてるんじゃないよ! あの家にはシエラもいるんでしょ! よくできるね」


「まぁ、初めは気を使ってたんがシエラはセラフィムの力で防音できるみたいでな。我慢は体に悪いから、お互い出張がない時は毎晩やらせてもらってる」


 カナデのご機嫌取りってのもある。

 優しくするだけ機嫌がよくなるからなぁ。体の相性も良い。


「あまりに堂々すぎて僕の常識がおかしい気がしてきたよ。あんな声聞いたらドキドキして眠れないし……」


「なんだ気になるのか?」


「ち、違うよ!」


 ミュージは顔を真っ赤にして否定した。

 初々しい限りだ。


「こっちに来る前にメロディに思い告げておけばよかったのに……。あれだけ長くいたんならお互いの気持ち分かってたんだろ?」

「いや……でも……あの関係を壊したくなかったし」

「相手のことが好きなのであればなるべく早く行動に移しておいた方がいい。後悔するぞ」

「何か実感のこもった言葉だね」


 ああ、もう妻の両親に謝罪したり、妻と大バトルなんてしたくないからな……。

 ミュージが同じようなことになるとは思わないが。


「毎月1回は手紙を送るようにしておけ。金が貯まるなら帰省もしていいし」

「うん、分かった」


 しかしミュージが来たことで本格的にあの計画をスタートさせないとな。

 想定通りにできるなら……俺はもっと強くなれる。


「ヴィーノはさ」


「ん?」


「黒髪の人の血って入ってるの?」


「なんだ急に」


「あ、いや……。あの温泉郷での事件の後にみんなが帰った後メロディと話してたんだ。ヴィーノとカナディアが結婚してたのが珍しいなって」


 その話は黒の民の里でも言われたことがある。

 俺やスティーナのような異色髪を持つ者が黒髪を持つ人間に好意を持つことはほとんどないそうだ。

 しかしその話がミュージから出るってことは……。


「ヴィーノだから言うけど、僕やメロディは黒髪の血が少し入ってるんだ。茶髪なのもその影響って両親から聞いたことがあるんだ」


「そういうことか」


 あの温泉郷の事件の時、ミュージとメロディはまったくカナデに対して嫌悪感を持っていなかった。

 個人的にちょっと不思議に思っていたんだ。シエラが側にいたのがもちろんあったと思うけど……。

 例のまじないの効果を受けない、もしくは受けづらいのか。


 黒の里の件があっていろいろ調べてみたが、低所得者は黒の民の血が入っていることが多いと調べがついている。

 単純に騒乱時に最下層まで落ちて、そのまま抜け出せずにいるということだろう。

 工芸が盛んな街の孤児院の子供達や王都のスラムでまじないの影響が少ないのがそれが要因だったのかもしれない。


「俺の住んでいた村では1人もいなかったし、そんな話は聞いたことがない。多分血は入っていないと思う」


「じゃあ、父さんが言ってた通り飛び級の変た……」

「今、何て言った」


 俺はがしっとミュージの頭を掴む。

 ひっと可愛らしい悲鳴を上げるが俺は男には容赦しない。

 握力で握りつぶしてやろうか


「いててててて、な、なんでもないから!」

「飛び級の変態って言おうとしただろ。スティーナは変態かもしれないが、俺は違う」


 まったく、どいつもこいつも変態扱いしやがって……。

 俺がカナデを愛したのは純愛だっての! あの黒髪を崇高すべきものだと思うけどな!


7月20日、2巻の発売です!

書き下ろし短編や特典SSなども用意しておりますので宜しくお願いします!

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そしてコミカライズも決定しました!

これからも本作を宜しくお願いします。


6章、今日から毎日投稿していきます!


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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

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