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107 温泉郷の危機① ※ミュージ視点

「これは……!」


 温泉郷に戻ってきた僕達はぞっとした。

 街の中の至る所に蟻の魔獣が出現し、人々を襲っていたからだ。


 観光客から悲鳴が上がり、みなが一目散に逃げている。

 建物の中に退避した人達が数十匹の巨大蟻に囲まれて逃げ場のない状態となっていた。


「あぶない!」


 カナディアは飛び出して、倒れた人に襲いかかろうとする巨大蟻に大太刀を振るう。

 1人に対して4,5匹で襲おうとするなんて……襲われた側からすれば絶望的だ。


 カナディアが蟻を蹴散らして、敵を引きつけて、集めようとしていた。


「無茶苦茶じゃねぇか……」


 ヴィーノはポーションを取り出し、見える範囲全ての蟻に早投げでぶつけていく。

 目にとまらぬ速さでポーションが飛んでいき、住民達を襲おうとしている蟻を跳ね飛ばしていく、


 いろんな所から人々の悲鳴が聞こえ、街全体が魔獣に襲われていることが分かった。


「これ……結構やばい?」


 表情を大きく変えているのを見たこと無いシエラですら少し顔を引きつらせているように見えた。

 スティーナからの連絡の後、とんでも手段(ポーション飛行)で温泉郷に戻ってきた僕達。

 タイムラグ的には15分ほどしか経っていない。なのにここまで被害が広がっているのか。


 僕とメロディはセラフィムに抱えられて、この悲惨な状況を何もできず……見たままだ。


「お父さんやお母さんが……」


 そうだ。街にはメロディの家族、僕にとっても大事な人がいる。

 無事を確認しないと……。


「硬い!」

「ああ、厳しいな」


 カナディアが大太刀を強く振って1体1体倒していく。


 巨大蟻1体自体はそこまで強くはないようだ。カナディア、ヴィーノに飛びかかってくる固体を難なく防ぎ、撃破していく。

 しかし……巨大蟻の甲殻が思った以上に硬いようで……撃破に時間がかかっている。


 家族の無事を確認したいのに蟻たちがその行く手を遮ってしまう。

 このまま無駄に時間が過ぎれば……取り返しのつかないことになる可能性が高い。


 どうすれば……。いや……そもそも何で巨大蟻はこのタイミングで現れたんだ。

 今までこの街で起こっていた兆候がこの蟻達に関係している可能性が高い。

 だとしても……このタイミングの理由が合わない。


 ありえるとしたら霞隠龍(かおんりゅう)


 もしかしたら。


「ヴィーノ!」

「なんだ! 新手か!」


「霞隠龍の音波攻撃を吸収したポーションあったよね!! あれを今すぐ投げるんだ!」


「は? 何を言って」


「蟻の進行を防げるかもしれない!」


「本当か! 何だか知らねーけど!」


 ヴィーノはホルダーからポーションを取り出す。


「全員耳を押さえろぉぉぉぉぅぅぅ!!」


 ヴィーノは天高く、ポーションを投げ上げた。

 ヴィーノの大声を聞いた人達は皆、両耳を押さえる。

 ポーションが地面に落ちた同時に……霞隠龍の音波が街中を襲った。



「キイイイイイイイイイイィィィィェェェェェェェ!」



 ううぅ!

 耳を押さえているのにぞっとするような音だった。

 思わず目を瞑り、脳を揺さぶられるような声に一瞬気を失いそうになるけど……1度経験していたおかげで何とか意識は保てた。


 目を開いた時、巨大蟻がいっせいに地面にを掘り進み退却していくのが見えた。

 それと同時に人々から悲鳴の声が鳴り止んだ


「本当に撤退した……」


「そういうことか。よく気付いたなミュージ」


 カナディアは大太刀を鞘に戻し、ヴィーノは周囲を確認しながらこちらに戻ってきた。


 正直、上手くいく保障は無かった。

 でも……一次的でも凌げたのはありがたい。


「どうやって撤退させたのですか?」


「ああ、簡単なことだ。だけど……ひとまず冒険者ギルドでスティーナと合流しよう。次に敵が来るまでに対策を立てないといけない」


 そう、これはあくまで一時しのぎなのだ。

 次も同じ事態が発生した時、防げない可能性がある。


 でも……何だろう。

 ヴィーノ達が一緒なら何とかなるんじゃ……そう思える気がするよ。

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
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