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105 霧隠龍の討伐 ※ミュージ視点

「ミュージ」


「は、はい!」


「メロディを助けるために特攻をかける。その間、君への防御が疎かになる。絶対に敵に近づくなよ」


「う、うん!」


「これを渡しておく」


 ヴィーノはホルダーから数本のポーションを取り出して僕に渡してくれた。


「行くぞカナデ、シエラ!」


 その声と共にカナディアとシエラは霞隠龍(かおんりゅう)めがけて突っ込む。

 鳳火山はお昼頃まで霧が濃い気候になっている。

 今の時間は霞隠龍に取って姿を隠しやすい状況だ。


 カナディアは大太刀を両手に持ち、シエラはセラフィムが背負っていた赤い光を纏う剣を受け取って掴んでいる。

 霞隠龍から向かって左と右と同じ速度で走って向かい、魔獣が逃げ場を失わせるように走っている。


 上以外に逃げ場がないため、高く飛び上がる霞隠龍は霧で体を隠そうと表面が薄くなり始めた。

 構わず飛び上がった2人の斬撃が霞隠龍の肌に傷をつける。


「くっ!」

「むー」


 鈍い音がする。


 2人と気持ち良くなさそうな表情を浮かべた。

 素人目でも霞隠龍の鱗が硬化し刃が通っていないように見える。


「霧と同化する時、物理に耐性を持つのかもしれないな」


「あいつの弱点はないの」


 ヴィーノがちらっと僕を見る。


「あの状態だと魔法が効果的らしい。氷属性の魔法をぶつければ霧化を防ぐことが出来るようだ」


「っ!」


 僕が魔法を撃てれば効果的なんだ……。

 ヴィーノのパーティは物理に偏っていて魔法使いを欲していることを聞いている。


 悔しい……何もできない無力なことが悔しい。


「セラフィム!」


 カナディアとシエラが気を引いたおかげで隠密行動していたセラフィムが住処の奥から姿を現した。

 両腕にはメロディを抱いている。


「メロディ!」


「グゥゥゥゥゥゥゥ!」


 かすかだけど 霞隠龍の姿が見える。

 メロディが取られたことに気付いて、セラフィムを見据えていた。

 このまま攻撃されたりしたら!


「カナデ、シエラ! 注意を惹きつけろ!」


「分かってます!」


 再び飛び上がった2人は獲物を持って霞隠龍に斬りかかる。

 攻撃が当たるその時、霞隠龍は突如こちらに顔を向けて大きく口を開けた。


 あれは……!


「音波が来る!」


 あの音波でみんな気を失ってしまったんだ。

 ダメだ……あの速度で打たれたらあれは防げない!

 カナディアとシエラが急いで斬りかかるも……。


「だめだ、間に合わない!」


「間に合う!」


「えっ」


 ヴィーノが片手をポーションホルダーに入れたかと思えば瞬きする間もなく手が出ており、ポーションが霞隠龍の口の目前に存在していた。


「得意の音波攻撃を撃ってみやがれ!」


「ーーーーーー!」


 なにも……きこえない。


 確かに霞隠龍は口を開いて音波攻撃を行ったんだと思う。

 なのに朝の時とは違ってあの頭が揺さぶられるような感覚はまったくなかった。


「吹っ飛んでなさい!」

「邪魔!」


 カナディアとシエラの斬撃が霞隠龍を斬りつける。

 硬化した状態のため効き目は薄いけど、吹き飛ばすことには成功した。

 その隙にセラフィムがメロディをこちらへ送ってくる。

 僕はセラフィムからメロディを受け取った。


「メロディ! 無事か! ねぇ……!」

「うっ……」

「メロディ……」

「……ミュ……ミュージ」

「ケガはない!? 良かった……本当に良かった」

「……また助けられちゃったね……子供の時を思い出すなぁ」

「昔から言ってるだろ……僕がメロディを守るって……」

「ふふっ……嬉しい」


 少しだけ衰弱しているようだけど、目立った外傷もなさそうだ。

 本当に良かった……。


「ミュージ、念のために持たせたポーションをメロディに飲ませてやれ。……魔法が無くても問題ねぇ、後は俺達に任せろ!」


 セラフィムはシエラの後ろへ、ヴィーノも走り出して霞隠龍の方へと向かい出す。

 僕は言われた通りにポーションをゆっくりとメロディに飲ませてあげた。


「もう一本くらい飲ませた方がいいのかな……」


 もらったポーションは3本だ。

 ポーションは使い切りで飲ませないとダメだと聞いたことがある。

 飲むのは大変かもしれないけど体力を回復させるためにゆっくりとメロディに飲ませた。


「ヴィーノ達は時間がかかりそうだ」


 なぜかは分からないけど音波攻撃は無効果できたようだ。あとは火炎のブレスさえ気をつけてしまえば……ヴィーノ達ならきっと倒せると思う。

 メロディに害が及ばないように僕が守らないと……。


 2本目を飲ませようとポーションに目を触れると…渡された3本の内の1本の種類が違っていた。


 なんだこれ……。回復ポーションって感じじゃないぞ。

 僕はゆったりとその1本。白色の液体で中の何か石が入ったポーション瓶をじっと掴んでいた。


 その時。


「ーーっ! なんだこれ魔力が吸われる!」


 ポーション瓶が淡い光を放ったと思ったら急激に僕の潜在魔力を吸収し始めた。

 なんだよ、このポーション!


 でも……魔導書を読んで魔法の勉強をしている時に魔力が込められた石、魔晶石というものがこの世には存在していることを知った。

 ……マジックポーションの原料にもなるって書いてたけど最近では魔導機械のエネルギーにも使われている。


 もしこのポーションが似た原理を使った特別製であったなら。

 僕の知っている氷魔法を吸収することができたら……。


「ハァァァァァァ!」


 ダメだったらダメでもいい。

 いや……頼む。1度だけでいい。

 ヴィーノ達を助けられる力を取り戻したい。

 メロディを助けてくれたあの人達に報いるため……頼む、魔力よ……応えてくれ!


「……あっ」


 薄々と目を開いたらそれは氷の力が込められたポーションとなっていた。


 出来上がった……。上手くいったんだ。

 だったら……。


「ヴィーノ!」


「っ! なんだ!?」


「受け取って!」


 僕は思いっきりポーションをぶん投げる。

 僕が投げたって当てられもしない。だけど……【ポーション狂】なら……。

 世界一のポーション使いなら僕の力を最大に引き出してくれる!


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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
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表紙イラスト
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