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95 夜のおたのしみ

 風呂上がりの散歩も終えて、自室へ戻ってくる。

 ミュージへの話は明日の仕事後にするとしよう。


「ヴィーノ、お帰りなさい」


「ああ」


 カナデがしっとりした髪を櫛でといている。

 温泉効果で自慢の黒髪がまた美しく変わったようだ。


 スティーナは椅子に座って本を読んでるし、各々の自由な時間だ。


「まんじゅううまうま……」


 シエラは風呂中に補充された温泉まんじゅうを食していた。

 4人分全部食いやがって……。もともとお土産で買うつもりだったからいいんだけど。


「そんなに美味いのか?」


「中の餡がしっとりしていておいしい。甘すぎずな所が完璧」


 シエラは嬉しそうに頬を綻ばせる。

 何か食べている時のシエラは本当に幸せそうだ。


 風呂上がりってことで寝間着に浴衣というものを支給されたが……不思議な着衣だな。

 黒の民の里ではよく着られるものだそうで、カナデは手慣れていて、綺麗に着こなしている。

 スティーナや俺は不器用ながらもぱっと見悪くないように着たが、シエラがもう無茶苦茶だ。

 帯はでろんとしているし、浴衣ははだけている。


 おかげで……豊満な胸元が……。

 もうちょっとよく見えないだろうか。

 その時何かを感じた。


「ぐっ! どこからか鋭い殺気が」


「ヴィーノ」


 カナデが真顔でこちらを見ていた。シエラに目線が言ってしまったことがバレてしまったか。

 落ち着け、落ち着け。

 ごまかす!


「明日から調査を開始するし……今日はもう寝ようか! あ、でも風呂中に布団が敷かれていると思ったけど1つしかないな。4人で一緒に寝るか!」


「は? あなた何言ってるの」


「ねぇヴィーノ。本気で言ってますか? ねぇ」


「カナデ、笑顔で怒気を含めるのはやめてください」


 話題ずらしのつもりだったのに結局そっちに戻ってしまった。

 さてと……何か違う話題をしないと。


「そもそもあたし達、ここで寝ないし」

「そう。それでいいんじゃないかな! へ?」


 虚をつくスティーナの言葉に思わず変な声が出る。


「メロディがさ。ウーミンマッシュルームを嗅がせてくれるって言うから」

「は? え? ウーミンマッシュルーム?」

「はい。ヴィーノも知ってますよね?」


 知らないわけがない。

 王国で違法薬物に指定されている違法薬物である。

 非常に良い香りのするらしく、夢心地が良くなり気持ち良く眠れるものだとか。


 実は帝国では禁止されておらず、薬物としてはかなり弱いものと言われている。

 禁止されている要因としては男が嗅ぐとちょっと過激になりやすいと言われているからである。

 女が使う分には実はほとんど影響がない。


 つまり。


「3人で行っちゃうってこと? 俺は?」

「未成年のメロディの前に男のあなたを行かせるわけないでしょ」


「俺だけお留守番!? それはちょっと」

「一日くらいいいでしょ。せっかく帝国に来たんだからいい気持ちにさせなさいよ」


 くっ、ごもっともな話だ。

 実際俺も明日か明後日、夜に抜け出して温泉郷の歓楽街に乗り出すつもりだった。

 ここで禁止すれば俺も遊べなくなる。

 だが……1人は寂しい。


「シエラ……一緒にまんじゅう食べないか?」

「食べる」

「メロディがいっぱいお菓子を用意してるって言ってたわよ」

「ヴィーノ、バイバイ。あっ、まんじゅうはもらってく」

「冷てぇな、オイ!」


 スティーナ、シエラは問答無用でいってしまう。

 だったら、だったら。


「カナデ、夫である俺を置いていくのか!」

「そ、そういう言い方はずるいですよ」


「戻ってきてくれ! 俺にはカナデが必要なんだぁぁ!」

「黒の里の時の言葉を汎用っぽく言わないでください」


 カナデの両腕を掴み、駄々をこねて阻止をする。

 1人の夜なんて寂しいだもん!


「カナデぇ……」

「ヴィーノ」


 カナデが優しく俺の手に触れた。


「私に隠れてシィンさんやバリスさんと夜のお店に行ってるくせに私が行くのは阻止するんですか? 私が知らないとでも」

「申し訳ございませんでした。どうぞ、ゆっくりとお楽しみください」




 ◇◇◇



「寂しい……」


 布団の中に入って、1人の寂しさに悲しくなってくる。

 1人で出張している時はそうでもないんだけど……いるはずなのにいないってのが何ともつらいものなんだな。

 まわりを女で固めるとこのような弊害が出るものな。

 やはり同性の仲間を入れておくべきなのかもしれない。


 明日はさっさと起きて、この街の冒険者ギルドへ顔を出そう。

 この街に起きている異変について……情報を集めないとな。


 温泉のおかげで体は温まっているし……さっさと寝よう。


 ガチャリ


 ドアを開く音がする。

 なんだ? もう女性陣が帰ってきたのだろうか。

 足音は1つ。ということは忘れものか、もしくは寂しくしている俺のために誰かが戻ってきてくれたか。


 足音がどんどん近づいてくる。


 よし、寂しいし抱きしめて布団に連れ込んでやろう。

 カナデならそのまま夜の情事に発展させる。

 シエラだったら普通に抱いて和やかに話す。

 スティーナは嫌がられるけど、根本ドスケベだし、ごり押してやる。


 足を止めた瞬間、掛け布団を囮にぶん投げて、隙間から手を伸ばして相手の腕を掴んで引っ張る。

 腕を掴んだだけじゃ相手は分からない。

 誰だっていいのだ。俺の相手をしてくれるんならな!


 力尽くで引っ張り抱きしめて、ゆっくりと顔を見る。


 その相手は……可愛らしく怯えた表情を見せた。


 なるほどな。


「でも男には興味ないんだよな」


「僕もだよ!!」


 布団の中に連れ込んだ相手はミュージであった。

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

表紙イラスト
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