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93 美女3人と温泉に入ろう②

「あったまるー」


「うーん、きもちいい~。シエラ、ちゃんと肩までつからないとダメよ。冬だし冷えるわ」


 さきほどのやりとりは愕然としたものだがこうやって熱い温泉につかっていると邪な気持ちも消えていく。

 純粋に気持ちいいなぁ。仕事の疲れが消えていくようだ。


「私、引退したら温泉旅館を営むのもいい気がしてきました」


「悪くないな……。熱ポーションで一杯を売りにするか?」


「何でもかんでもポーションに絡めるのはどうかと……」


 半分くらい冗談なんだけど……。

 でも、酒を混ぜて売り出すと面白い商売になるのかもしれない。


「ねぇ、ヴィーノ!」


 シエラが泳ぐように近づいてくる。

 長く伸びた白髪が目映くように輝いている。

 シエラは容姿に無頓着だ。長い髪を長いまま垂らしているためこうやって髪が水を吸ってるところを見るといつもと違って妙な色気を感じる。

 湯着も適当に着ているために所々に着衣の緩みに油断が見てとれる。

 いっそ剥ぎ取ってやりたい気にもさせられる。

 無防備とは恐ろしい。


「みんなで温泉楽しい!」


「シエラはあまり風呂に入らないんだっけ」


「ん、浄化があるから」


 セラフィムの力を使った清浄の力があるためシエラはあまり風呂に入りたがらない。

 これだけ長い髪を洗ったりするのは大変だから分からなくもない。


「みんなと一緒だと楽しいね」

「ああ、もっといろんなとこ行こうな」


 しかしまぁ、無邪気というか。見た目は子供っぽいのに体はしっかり育っているこのアンバランスさ。

 悪くない。

 惜しむことはこのままカナデくらい成長すれば別の面でスゴイ女性になるのになぁと思う所である。


「ねぇねぇ」

「あの……すまんが胸の谷間に腕を挟むのはやめなくてもいいけど……控えてくれないか?」

「ん? ヴィーノはそうするのが好きって教えてくれた」


「スティーナ! また君か! ドスケベ女! ありがとう!」

「私じゃないわよ! ん、褒めてる?」


「アメリが教えてくれた。あたしにはできないからやってみろーって」


「ああ……」


 悲しき胸囲の格差。分からなくもない。


「ちょっと! さっきから見ていれば勝手なことを! 私にだってできるんですから!」

「カナデまで!?」

「ヴィーノ、こんな黒狐と離婚してシエラはイイコトしよ」

「今度はイイコトか! 詳細が気になる」

「ヴィーノの妻は私です! 白狸こそどっか行きなさい! ヴィーノ、絶対こんな女ダメですからね!」



「モテるわねー」

「ふっ、スティーナ。君も俺の胸に飛び込んで来ていいんだぜ」

「何かそんな気分にならないからいいわ」

「……君の考えが時々分からない……。なら何でこの前ベッドに忍び込んで抱きついてきた」

「修羅場になるって分かってたから」

「君って俺が困ってるとこ見るのほんと好きだよな!?」


「ああいいお湯ね~。お肌スベスベになるわ」


 ったく……。

 スティーナは手でお湯をすくい頬に頬にすりつけるようにする。


 スティーナはカナデやシエラに比べたら物足りない所があるが手足の長さ、特に曲線美は目を見張るものがある。

 不意に見せるかわいらしさ。カナデやシエラのように巫女という遺伝子レベルで美しさを表現した身ではなくごく自然体なところが好印象である。


 スティーナはカナデのように全て肯定してくれたり、シエラのように何も考えていないような女の子と違う。

 肯定も否定もしてくれるベストな距離感が意外にありがたい。


「なによ、人の顔をじっと見て」

「いや……スティーナも一緒に来てくれてよかったと思っただけだな」

「ふん、ばーか、何言ってんのよ」


 その時左手……カナデの方に引き寄せられる。


「スティーナにも色目使ってます! 王国法では重婚はOKだし、ヴィーノが望むなら……渋々スティーナの結婚だって認めてあげなくはないです。白狸とは違います」


「カナデ……?」


「でもやっぱりけじめとして指5本はつめてもらわないといけませんね。あと詫びもしっかり」

「あたしそんなことしないといけないの!?」


「重婚なんてしないから……」


 でもやはり俺の妻が一番強者なんだと思う。


 熱くなってきたのと向こうに小さめな桶風呂があったためスティーナとシエラはそちらの方へ行ってしまう。

 残されたのは俺とカナデ2人のみ。


「むーー」


 カナデの機嫌はあんまり良くない。

 シエラとスティーナにちょっと構い過ぎたかもしれない。


 この旅行の前にバリスさんからも最初の妻は大事にしろと言われている。

 最初も何も俺の妻は後にも先にもカナデだけのつもりだ。


 シエラやスティーナには出来ないことをカナデにはしてあげられる。

 カナデの肩を優しく掴んで引き寄せた。


「本当は2人きりで来たかったんだ」

「へ?」

「新婚旅行も満足出来てないもんな……。最近、構ってやれてなくてごめん」

「……もう、仕方ないですねぇ」


 カナデは欲しがり屋だ。

 今風な言葉でいうとチョロいって所だが……俺だってもっと絡み合いんだぞ。


「直にシエラやスティーナが戻ってくるから……いちゃつけないけど、タイミング見計らって2人で入ろうぜ」

「はい……あなたの望むままに……」

「カナデ、顔真っ赤だぞ」

「のぼせたんですっ」


 やれやれかわいいやつめ。

 他の二人の視界がこっちに向いてないのを見計らい、カナデをばっと抱き寄せてちゅっと唇に軽いキスをした。


 カナデはお湯に髪が入らないように綺麗にまとめていた。

 普段は触れないうなじの方に手を寄せて強く引き寄せる。

 顔を近づけて、真っ赤な頬に情がそそり、もっともっと顔を近づけたくなる。

 吸い付きたくなる唇から吐息が漏れる。


「今度は湯着なしで入ろうな」

「……はい」


 ちょっと強引だったかもしれない。

 でもカナデは多少強引の方が好きだと本人が言っている。

 だったら望むことをしてがあげよう。


「きゅう……」


「んご?」


 途端にカナデがぐれっと力なく後ろに倒れてしまう。

 顔を紅くして目を回してしまったようだ……。


「おーいいいとこだったのに……仕方ない黒の巫女様だ」


 スティーナとシエラを呼びつけて介抱させる。

 初日のお風呂はこんな感じで終わりを迎えた。


 若干消化不良だけど……俺も含めてみんなリラックスができたかなと思う。


「風呂上がりに一本、ポーションでも飲むかぁ」

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
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