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87 カナディアとシエラ①

 シエラがこの街にやってきて2週間が経過した。


 D級冒険者となったシエラはスティーナと一緒に組んでクエストへ向かい始めた。

 見立て通りでセラフィムとの連携攻撃は凄まじく、A級魔獣ですら容易に倒していくため……最速でA級冒険者まで上がるんじゃという噂も立ち上がっている。

 白の巫女としての愛くるしい姿とまじないの効果で人を強く引き付け、あっと言う間に王都冒険者ギルドのアイドルのような扱いとなっていた。

 本当に甘やかされて、食べ物を与えられていい気になって帰ってくる。


「シエラ帰るぞ」

「うん!」


 あそこまで甘やかされたらワガママ放題になりそうなものだが、シエラは出会った時と変わらない。

 直球でこのあたりのことを聞いてみたことがある。


「……甘やかされるのは当たり前だから」


「どういうことだ?」


「シエラをしっかり怒ってくれるヴィーノやスティーナは信用できる。黒狐は嫌いだけど」


 甘やかされ、好かれるのはまじない効果なのか真にシエラが好きなのか分からないということなのかもしれない。

 もし俺がカナデと会わず、黒の民、白の民のことを知らなければ……何も考えず持てはやしていただろう。


「カナデのことは今でもだめか?」

「向こうが譲歩するなら考えてやらなくもない」


「上からだなぁ……」

「でも料理が美味いのだけは認める」


 カナデも料理上手のプライドで手を抜かないからな……。

 俺とカナデ、シエラと3人で暮らしているわけだからもう少し穏やかになって欲しいんだよな。

 2人のケンカは本当に毎日のようにやっている。


 間に入る身にもなって欲しいのだが……。

 この前はこんなこともあった。


「まったく白狸の感性を疑います」

「ふん、黒狐こそおかしい」


「本当にあなた何も分かっていませんね!」

「分かってないのはそっち。黒髪のしてる奴はみんなそう、感覚がおかしい」


「黒髪は関係ないでしょう!? ふん、白髪だって似たようなものです」

「もう、うるさい」


「ヴィーノ!」「ヴィーノ」


 2人の声は重なる。


「目玉焼きには醤油ですよね!?」

「目玉焼きにはソース?」


「あ……はい」


 塩、こしょう派の俺には何とも言えない問いかけである。

 あとくだらなすぎてあくびがでそうだ。


 この二人の口ゲンカに言葉を被せても解決しない。

 そういう時、どうするかは決まっている。

 伊達に2週間一緒に暮らしていない。


 ケンカしている2人の脇腹をぐにっと揉んでみると。



「にゃっは!?」

「ふぐっ!」


 水と油の関係なのに同じ反応するのが面白い。

 喧噪が止まって、動きが止まるので、そのまま横から2人を抱えるため掴んで押し倒す。

 押し倒した後で2人のお腹まわりを入念に5本で指でこねくり回す。


「あっ……ああっ!」

「や、やめぇ!」


「ケンカしない?」


「し、しましぇん……ひゃん!」

「し、しえらが悪かったです……んぐっ!」


 すぐにやめるとつまらないので飽きると感じるまではやり続ける。

 指をリズムカルに動かすたびにかわいい2人がバタバタと暴れ出すのが見ていてとても楽しい。

 苦手なポイントが同じで2人とも同じように悶えて笑い、苦しむ。


 ケンカする体力を失わせ、落ち着かせたら成功だ。


「はぁはぁ……」

「ふぐ……」


 黒髪、白髪、乱れた姿でカナデもシエラも床で涙ぐむ。

 もうちょっと楽しみたかったがそろそろクエストへ行く時間だ。


「……もう終わりです?」

「……今日は短い」


 でも何か物欲しそうに見られると情がこみ上げてくるのだ。

 今日も俺は2人の女の子に手をかける。もうちょっとだけやらせてもらおうかな。

 えっちなことしてるわけじゃないぞ!?


 そしてカナデとシエラの喧噪に困っているのは俺だけではなかった。


 仕事が終わり、家に帰って見たものは……。


「痛い痛い痛い! 2人とも放してぇぇぇぇ!」


「ちょっと白狸! スティーナが痛がってるじゃないですか!」

「黒狐が放すべき。絶対放さない」


「あなた達バカヂカラなんだから! 押さえてよ~!」


 カナデもシエラも一番心を許している同性がスティーナゆえに取り合いが発生する。

 いつも通り、2人の脇腹を揉んでやると飛び離れてスティーナが解放されたので助けてあげる。


「何があったんだよ」

「明日……休みにしようと思ったんだけど」


 両手を押さえてスティーナが語る。


「スティーナは私と一緒に服を買いにいくんです!」

「スティーナはシエラとご飯食べに行く」


「おー、スティーナもてもてだなぁ」

「あなたってあたしの不幸を喜ぶフシがあるわよね」


 人のこと言えないと思う。黒の民の里で俺の不幸を喜んでた事実を絶対忘れない。

 この言い合いをどうにかするには……。


「3人で服買いに行ってメシ食えばいいんじゃないか」


「白狸と一緒なんていやです!」「黒狐とか一緒はやだ!」


 このままワガママ女子達め……。

 ま、これはスティーナが決めることだ。俺は関係ない。


「ごめんなさい2人とも。明日はヴィーノとデートするの」


 ギリっとカナデとシエラに睨まれる。

 このスティーナ(おんな)、俺を巻き込みやがった……絶対に許さねぇ。


 騒動と言えば他にもこんなことがある。


 あれは……とてもやばかった。


 それは夜、カナデが枕を持って薄着で俺の部屋に来た時の話だ。

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書籍版ポーション160km/hで投げるモノ! ~アイテム係の俺が万能回復薬を投擲することで最強の冒険者に成り上がる!?~』
第2巻が7月20日 より発売予定です! 応援よろしくお願いします!

表紙イラスト
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