1騒目:予騒
ズキッ
「痛!」
・・・くそ、頭痛くて眠れやしねー・・・。
しかし気にせず布団にもぐるオレ。
ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキッ、ズキン、ズキンッ、ズキンッ!
「あだ!?」
ど、どんどん強くなりやがる・・・。ちくしょう、なんなんだよこの挟まれるような痛み・・・。くそ・・・、ブンブン。右左と頭を振ってみる。
「いててて・・・」
たまらず頭を両手で挟む形になった。
「これいつ直るん―」
「うははははははー!!」
「だあ!?」
な、なんだ!?なんか聞こえたぞ今。いやでもこの家には俺ひと―
「うふふふふふ・・・」
ちょ!ちょ!ちょいまって!聞こえ間違いなんかじゃねえ!確かに聞こえたぞ!おいおい冗談はよしてくれよ・・・、誰かいるのか!?ひ、一人暮らしのおれを狙って盗みまくっちまうぜってか!?い、居間にいるのか?・・・止めに行くか?い、いや・・・もし刃物でも持ってたら殺されちまう。しかし大事なモンがとられる・・・いや、別に取られるもんはない。・・・それならこの部屋で黙ってたほうがいい!決定!さあ、さっさと出てけ泥!そしておれはまた布団をかぶった。
・・・・カッチ、カッチ、カッチ。
あ、俺寝たのか・・・。どうしてあの状況で寝ることが出来るんだい?おれの体よ。
でももう大丈夫だろう。さっきまでいただろう奴らの気配はない。・・・なんかカッコイイな俺。ちょいと喉も渇いてきたから麦茶でも飲みに台所までいこう。部屋から出ようとドアノブに手をかけた。
「うっひゃっひゃっひゃっひゃー!!」
「うふふふふふふふー!」
え!?ま、まだいるのかよ!!い、一体何をしてるんだ!?あんな楽しそうに!ま、まさか居間でちょいとピーピーな映画をみているんじゃ!ず、ずりぃ・・・!おれだって見てーよ!でもいっつも忘れちまうんだよ!気づいたら朝なんだよ!それをあいつらは人の家にズカズカと入り込み、そしてちょいとピーピーな映画を・・・!く、くそ!もう我慢できん!武器もってたって少しだけでも抵抗して映画見てやる!ち、ちくしょおおおお!!!
居間に直接つながったドアを開けた。
「・・・・・あ、あれ?」
居間には誰もいなかった。
「そ、そんなバカな・・・!?」
居間に入ればトイレや風呂、キッチン以外死角はない。おれはそこを調べてみたが誰もいなかった。それどころか最初からなにもなかったかのようにそのままだった。
「ど、どういうことだよこれ。たしかにおれ・・・ハッ!ピーピーが終わっちまう!」
急いでテレビをつけた。
朝になった。
「なんでよ!」
おれは学校に行くための準備を始めた。しかし俺の手はいつものように準備をすることが出来なかった。やはり夜のことが気になっていたからだ。
「昨日はなんだったんだろうなぁ。泥棒はいなかったし。でも声は絶対聞こえたと思ったんだがなぁ。それに頭も痛くなくなってたし・・・」
おれはぶつぶつと独り言を呟きながら家を出た。
登校中、日課のように一人の男子がおれの肩に腕を乗せてきた。
「よ、おはよぅ習」
「ああ、滝津おはよう」
今話しかけてきたのは『滝津北』。おれの一番の暇つぶし仲間になっている。それとおれの名前は『真葉習』。高校3年で普通に学生をやっている。ただ違うといえば―・・・
キーンコーンカーンコーン
『えーこれから全校集会を始めますねー』
マイクから『魅二香』の声が聞こえてくる。副会長だ。別名『ミニカー』このとうり小学生の6年生くらいの身長だ。2年生だから後輩ってことになる。
『まず始めに生徒会長お願いしますねー』
もうなれたこの場所。全ての視線が集まるこの場所に俺は立っている。そう、おれが違うのはこの学校の生徒会長ということ。
もうかなり慣れてしまった。別に紙などを見る必要はないし、汗などもかかない。もうこれが日課のようになっているので当たり前だ。
「これで話を終わります」
『おおー』
いろいろなところから声が漏れる。そんなにすごいものだろうか。慣れてしまったおれにはわからなかった。しかし毎日のようにいろいろなことが起こるこの集会は未だに慣れない。
『えーそれでは次は校長セセーの話です。が、長いのでカットですね』
校長昇天。しそうになったところをぎりぎりでこらえた。お、校長がマイクを取ったぞ。
『なぜ・・・わしをださんのじゃ・・・』
『時間がないんですねー』
今は8時、授業にはまだ1時間以上ある。この学校は8時までの登校が決まりとなっている。そして全校集会などをやり授業にたどり着くのだ。
気がつくと校長が反論していた。
『まーだ30分以上あ、あるじゃろうがあああ!!!』
『30分しか・・・時間がないんですねー』
『も、じゃ!も!まだ時間はある!わしに話させーい!!』
校長がステージに上がっていく。あーあ、やめとけ校長。これ以上の反撃は危険だ。
『校長セセー元の位置に戻ってくださいねー。時間がないですのでねー』
「うっさいわあああああ!!!」
校長が爆発した!あんなに怒ったらカツラが・・・なっ!言ったそばからカツラが宙を舞っている!?まずい、校長はまだ隠しきれていると思い込んでいる・・・!このままではマズイ・・・!校長はハゲ関係全般に触れられると生徒全員退学にしかねない。
この状況を何とかしようとステージ横にいるミニカーに視線を送る・・・う、おおぉおぉお!?この学校でも上位に入るであろうあの可愛い顔が鬼のようになっている!
「相当腹が立ってるんだな・・・」
っと、こんなしんみりしてる場合じゃない。今この二人を合わせれば大変なことになる・・・!俺一人、いや滝津と二人で何とかするしかない!
おれは滝津のところに手招きでこっちに来るように指示を出した。運よくこっちを見ていてくれた。すぐに滝津が向かってきた。
「どうしたんだ」
なるべく小さい声で話してくれる。ありがたい。
「見ればわかるだろう。ほら。カツラが無情にもあんなところに」
カツラはステージの階段に落ちていた。校長からはぎりぎりで見えないらしい。
「うっは、やべーやべー。でも・・・おもしれえ・・・ぶくく」
「笑ってる間にも俺たちの学校生活が終わりを迎えようとしてんだぞ。あっち」
目線をそっちにやる。
滝津も一緒に目線を一致させた。
「ああ・・・何度見てもかわいくない・・・」
「お、おい・・・あれ誰?なんかおれには鬼が見えるんだけど!?」
そのとうりです。
「いやあれはミニカーだ」
「え゛ぇー!?嘘はやめとけよ。おれはそんな、嘘にはな、嘘に・・・、う・・・そに・・・は・・・。うぁ・・・」
滝津は泣き出した。こいつもなかなかかっこいいという部類に入ってるんだがな、結構女子に人気あるし。でもそれに合わず泣き出すもんなぁ・・・。
「ほへーーーーーん!」
・・・ほへーんて。
「って!ミニカーが進軍を始めたぞ!おい、さっさと泣き止め!止めに行くぞ!おれはミニカーを止めるから、お前はカツラ救出だ!さあ出動!」
「ほげ、了解・・・ほげ」
変な声を出しながら滝津はカツラ救出に行った。
生きて帰れよ・・・。さて、おれも行かないとな。おれはミニカーの前に立ち塞がり、その小さい体を抱えあげた。抱えあげたせいでミニカーの顔が目の前にあった。
(こえーんだけど・・・)
少し声をかけてみる。
「おい魅二、まだ時間はあるんだ。そんなに急がなくて・・・え?」
ミニカーはおれの腕を意図も簡単に解いた。
結構力入れてたんだけどな。今度は後ろから抱き上げた。するり。あれ。するり。んっ。するり。んん!?。するり。なんでだ!?おれは最終的にかなり力を入れるようになっていた。しかし腕は簡単に解かれる。そ、そうだ滝津は!よ、よし!あっちはしっかりとやったな。・・・おいっ、やめてくれ!滝津それをこっちに持ってこおおおおおおおい!!必死にジェスチャーで伝えようとする。いったい滝津がなにをしようとしているのかというと、それはもう恐ろしいこと。ジェンガの一番下のラスト一本を瞬間的に抜けば大丈夫!とかそういうレベルを超えたことをしているのだ。滝津は・・・、カツラを校長の頭に再び被せようとしているのだ!・・・こ、これどうすりゃいいんだ!そのうちにもミニカーは前進している。おれはその体に思い切りしがみつく。と、とまらねえ!すると滝津がこちらに合図を送っている。
『いつもの・・・あれ?』
「ぶっ!」
あ、あれだけはやりたくないからこんなに必死になってるんでしょうが!でも止まらない!まったく止まらない!まるで機械だ!しかしこれを止める方法は一つだけ。
アレだ。
これはしょうがないことだ。
学校のため。
生徒のためだ!
「よし!」
おれは覚悟を決め。ミニカーを抱きしめ、耳元に口を近づけ、そして・・・
「香、大好きだ・・・、愛してる・・・」
思いっきり甘い声で言ってやった・・・。
「か、会長・・・!」
そしておれが抱きしめているので体をモジモジさせている。普段のミニカーに戻ったようだ。
「そろそろはなしてください・・・ねー・・・。はずかしぃ・・・です・・・ね」
「あ、ああ、すまなかったな」
『ヒュー!熱いねぇ〜!ピーピー!』
これが一番辛い・・・。
そしてこの件は一件落着。していない!忘れてた、カツラ!ってあれ?校長の頭がふさふさに。そして、後ろから「ふっふっふ」と変な笑い声。
「俺をなめてもらっちゃ困るよ。おれは一応バスケで鍛えたこの俊敏性であんなこと軽く出来てしまうのさ。ふふ、ふふふふふ。決まった」
「そうか、よかったな」
そして校長の話は終わったらしい。校長は満足げにもっどてきた。
「一件落着か・・・」
ため息一つ。
「お疲れ様です。校長先生」
「うむ。君もしっかり出来ていたな。これからも頑張りたまえ」
校長・・・カツラやめて・・・・!
『えーとではこれで全校集会を終わります。では自由に帰ってくださーいねー。・・・むひゅひゅ』
なんかへんなものを聞いた気がするが、なんとか一日の始まりを終えることが出来た。
みんなが自分のクラスに帰っている中滝津はまだなにか言っている。放っておこう。ミニカーは体をくねくね、顔が真っ赤になっている。何を考えているのやら。
生徒達は朝からいいものが見れたと満足そうだった。見せ物かよ・・・。でもそれでこの学校はいい感じで不良なども出ないのだ。そこらへんの学校よりは全然いいだろう。
変なことばかりだがこれがこの学校なのだ。この一年を最高のものにしてやるさ。おれの力で。
さあ授業が始まる、クラスに行こう。
一日の続きだ。
・・・・・・
・・・体育館の入り口は早く帰ろうとした生徒で詰まっていた。
「なにしてんだか・・・はあ。みんな落ち着いて行動してく―」
ズキリッ
「うははははは」
「うふふふ」
「「もうすこし」」
もうドタバタいそがしストーリーです。
これから温かい目で見ていただけると嬉しいです