第12話 「俺が『浄化の星』をぶっ潰す」
その日の目覚めは、最悪の一言に尽きた。
元々一睡もしちゃいないが、瞼を閉じる度に《死の業火》に焼かれた仲間の姿が鮮明に浮かび上がって来て、酷い吐き気に襲われた。
本当なら、さっさと起き上がって雑務でもすれば良かったのだろう。『浄化の星』に絡んだ事件で忘れそうになっているが、本職である探偵業でも案件を一つ抱えている状態だ。
それでも、一基はベッドの上から動けずにいた。
もう七、八時間はこうして横たわっている。
甲斐甲斐しく世話を焼きたがっていたあの真咲は、とうの昔に医療魔術師のいる病院へと搬送されている。
だからこの事務所にいるのは、一基一人だ。
「元に戻っただけじゃねぇかよ」
自分に言い聞かせるように一基は声に出す。その言葉さえ、一晩中何度も繰り返した。
だが、胸の痛みは消えやしない。
たった数日しか共に過ごしていない。だというのに、その喪失感はあの日に引けを取らない。
彼女に対して取った行動のどれもが、彼女を傷つけていた気がした。だからなおさら、痛みに拍車がかかる。
『厄病神』なんて言葉は、きっと彼女が親戚から浴びた罵声だったのかもしれない。そんな単語を、一基は冗談交じりに口にした。
あの時の彼女の曖昧な笑顔が思い出されて、胸を穿つ。
そして、なにより。
傍にいると自分が苦しいから。そんな勝手な理由だけで、一基は真咲を遠ざけた。涙を流す真咲から目を背けて、何もなかったかのように。
「最低なのは分かってる……」
いくら思い返しても、自分の馬鹿さ加減に腹が立つだけだった。
それでも、一基は真咲の傍を離れたことを後悔していない。あれしか道はなかった、などと正当化する気はないが、おそらくはそうなのだろう。
一基が『浄化の星』から、何かを奪われたままでは。
「……だから、この手で取り返す」
たとえ、『浄化の星』の団員全てを血祭りに上げることになろうと。
そんな決意を固め起き上がったところで、見計らったように呼び鈴が鳴った。
大方、セレーナだろう。昨日の件で何かしらの用があるに違いない。
引きずるような足で玄関へ向かい、アルミの扉を開ける。
そこに立っていたのは、予想通りのセレーナ・ローゼンクロイツと、その側近であるジェダイト・ジェルマンだった。
「おはよう、カズキ」
「……入れよ、話は分かってる。――ジェダイトさんも。久しぶりだな」
「あぁ、本当ならもっとゆっくりしたときに訪ねたかった」
眼鏡をくいっと上げながら、ジェダイトは無表情で答えた。きっと今の一基の表情は崩れ切っているだろうに、それを心配する素振りさえ押し殺して、彼は仕事に徹しようとしていた。
二人を応接間に案内して、一基は適当にお茶を出す。
自分の分も淹れて飲んでみるが、真咲が淹れてくれたものとは比べ物にならないほど安っぽい味がした。
「本題に入る前に、マサキちゃんは本当に……?」
「魔術病院に入れた。あそこの防衛力だけなら騎士団にも劣らないし、安全だからな。――それに、元々あんな呪術を背負ってるっていうのに、こんな場所で暮らそうって言う方が間違ってたんだ」
淡々とした口調で、一基は答えた。そこに僅かでも感情を乗せてしまえば、押し固めていた心の堤防にあっという間にヒビが入ってしまいそうだったから。
「……そう」
「気にすることじゃねぇよ。そもそもさ、急に押しかけられて迷惑してたくらいなんだ。これくらい、何てことない」
そのはずなのに。
拳を堅く握り締めなければ、笑顔一つ作れなかった。
「……久しぶりに会ったのに変わらないな、カズキは」
ため息と共に、ジェダイトはそう言った。呆れたような、というよりは、どこか悲しみに満ちた声だった。
「あの日、八年前から、何も変わってない。まるで時が止まったみたいだよ」
「……そう、かもしれないな」
そのジェダイトの言葉に、一基は頷いた。
「止まってるよ。あの日、『浄化の星』に仲間を、夢を、理想を、全部奪われたあの瞬間に。俺の時間は完全に止まっちまったんだ」
だから。
東雲一基は、一つの決断をする。
「話をしようぜ、セレーナ。そっちが何の為にここに来たのかくらいは、俺も分かってる」
握った拳が解けないのなら、解かなければいいだけだ。
それは自分を抑える為にあるのではない。堅く握り締めた拳は、ただ目の前の敵を叩き潰す為に存在する。
「どうせ『浄化の星』は、もう俺をターゲットにしてるんだろ?」
「……えぇ、そうよ」
一基の言葉に、セレーナは苦しそうな顔をして頷いた。
「残念ながら、君が私たち騎士団の回し者だと判断されたみたい。これは軽率に挨拶に行った私のミスだわ」
「そんなことはどうでもいい」
一基はそう切って捨てた。自身が狙われているという事実を、その一言で葬ったのだ。
「昨日の昼間、これをまたショッピングモールで拾った」
そう言って、一基は既に潰した補助魔装をテーブルの上に置く。
「……ショッピングモールっていうのは、すぐ傍のウォーターフロントの?」
「そうだよ。――前に見かけたオフィス街とは、距離が開きすぎてる」
ここからオフィス街までは駅十個近く離れている。それだけの人間を巻き込む呪術となれば、呪術の種類にもよるが、巻き込まれる人間は最低で五十万人近くに及ぶはずだ。
「『浄化の星』の目的は何だ。あいつらはわざわざ日本に来て、いったい何をしてる?」
「まだ何とも言えない。むしろそれは、先に計画を潰して事情聴取、って形で聴く他にないと思う。――でも、もしかしたら、この街であの日のような魔術を行う気なのかも」
その言葉一つで、一基は全身の肌が粟立つのを感じた。
あの日。
八年前、一基の目の前で尽く命が奪われた、あの光景。
それがもう一度行われようとしているかもしれない。
「……っ」
ふざけるな、と吐き捨てそうになる。
背骨の奥が悲鳴を上げて、今すぐにでも皮膚を貫きそうなほどの何かが蠢く。それを抑えつけるように自分の肩を抱いて、その衝動をどうにか耐える。
「……それで、セレーナたちはどうする気だ」
「潰すわよ、今度こそ徹底的に。――と言っても相手は出来たばかりのただの日本支部。『浄化の星』全体に与えられるダメージなんて、高が知れているけれど。それでも、私たちがあの日受けた屈辱を晴らす為に」
「そうじゃない、そんなことは分かってる。――俺が訊いているのは、あんたたちは俺をどうする気だ、ってことだ」
その言葉に、セレーナは押し黙ってしまう。
簡単なことだ。
この場で狙われているのは一基だ。おそらく、女ライダーを撃破したことによる逆恨みか、あるいはそのことで排除対象として認定されてしまったのだろう。
そうであるならば、独立十字騎士団はどう動くのが正解か。
もしも東雲一基が一般人であるならば、迷わず『身の安全の確保』である。一般人に毛が生えた程度の魔術師であったなら、それ以外はあり得ない。
だが、東雲一基は元々、独立十字騎士団の団員だ。
八年前の大規模呪術テロを機に引退したとはいえ、初級魔術以外扱えない低ランクの魔術師とは言え、それでもかつてその身一つで数々の結社を闇に葬り去った。
直接的にしろ間接的にしろ、一基が騎士団に手を貸せば戦況は大きく傾ぐ可能性がある。
「今、日本に来られる騎士団のメンバーには限りがある。日本支部の面子もいるけれど、『浄化の星』の殲滅作戦に投入できるほどの高位魔術師はいないから」
いくら因縁の仇敵とはいえども、ドイツの本部から団長が赴いているのだ。これ以上の戦力を投入すれば、他の結社から狙われる恐れがある。
「だから……」
「……だから、俺の力を借りたいんだろう?」
いつまでもセレーナが黙っているから、一基はそう切り出した。
「――ッ」
セレーナの表情が崩れる。それは、ほとんど肯定に等しいものだ。
おそらく、彼女自身はそんな真似を認められない。たとえ血は繋がっていないとしても、十年以上姉弟として暮らして来た。義理の父親であり元独立十字騎士団の団長ではなく、彼女の使い魔を借りて一基が使い魔を生成したのだって、その絆があるからだ。
とうに前線を退いてしまった彼を、今さらトラウマの深奥へと引きずりこむことを、彼女が是とする訳がない。
だが、結社としてはそれ以上の選択がない。
無芸とは言え、長年騎士団のメンバーとして戦ってきた一基ならば、セレーナやジェダイトの動きにもついていける。並みの魔術師よりは兵士としてならよっぽど優秀だろう。
「……今回の作戦は、柳光二率いる『浄化の星』日本支部の殲滅よ」
そう言って、セレーナは胸のポケットから一枚の写真を取り出す。
そこに写った男は、昨日一基たちの前に姿を現したあの白い男に相違なかった。彼が柳光二なのだろう。
「ジェダイトが追跡したけれど、結局柳光二は発見できなかった」
「……その作戦の為には、誰かが誘き寄せる必要があるって訳か」
「そして、その役目をカズキに担ってもらうことになると思う。既にカズキは目を付けられている訳だし、ね」
何かが詰まったかのように、苦しそうに彼女は呻いていた。
それでも、これは結社としての決定だ。
助力が得られるのであれば、一基の安全を優先的に考えながらも、それでも陽動や囮のような役目を与えるべきであると。
「セレーナ。それはあんたが悩むことじゃない。俺を囮にするのは、騎士団として当然あるべき解決策の一つだ。感情論一つでその可能性を消してしまう方が、俺は不安になる」
「……もちろん、強制はしない。――じゃあ、教えてくれるかしら。カズキの意志を」
今さら何を聞くのか、と一基は思わず笑い飛ばしてしまいそうになる。
乾いてごろごろとした違和感のある瞳を上げて、セレーナを睨むように見つめる。
「決まってんだろ。俺が『浄化の星』をぶっ潰す」
一基の返答に、セレーナは眉をひそめる。
彼女なら、どうせこんな決断をするだろうと分かっていたはずなのに。
「……本気で言ってるの、カズキ」
「陽動も囮も引き受けるさ。誘い出すまでが俺の役目なんだろ。場所も時間も騎士団の指定に合わせる。――ただし、その後の戦闘まで容認しろ。どうせ呪術に秀でた連中だ。逃げようが戦おうが、危険度に変わりはねぇだろ」
「騎士団以外の人間を直接的な戦闘に関わらせる訳にはいかない。この協力要請だって、特例に特例を重ねているんだぞ、カズキ」
ジェダイトの忠告は当然のものだった。
だが、そんなこと分かった上で一基は宣言している。
「騎士団の肩書が必要だって言うんなら、今から再入団してやるよ。それが駄目だって言うのなら、騎士団とは手を組まない。俺は勝手に暴れ回るだけだ」
「その場合は、民間人を危険に晒すと見なして、僕たちが君を拘束しなければならない」
ジェダイトの手が、腰に差したクレイモアにかけられる。もし《巨狼の縛紐》でも発動されたら、一基にはどうすることも出来なくなる。
だがそもそも、この交渉において絶対的な優勢に立っているのは東雲一基の方だ。
「選択肢を履き違えるなよ、ジェダイトさん。騎士団には俺を利用する以外の手がないんだ。だって明日にでも、『浄化の星』は大規模呪術を発動しちまうんだから」
「――っ」
「あんたたちは平和と面子を保てる。俺は復讐が出来る。双方デメリットはないはずだ。一般人を巻き込みたくないなんて正論は止めろよ。こっちは元団員だ。言い訳なんざいくらでも用意できるだろ」
もちろん、一基には柳光二を殺したところで何も変わりはしない。
彼はただ新設された日本支部のリーダーでしかない。あの若い風貌を考えれば彼は八年前のテロには関わりがないはずだし、そんな人間相手に復讐したところで満たされるものなどありはしない。
そしてそれは結局、神崎真咲の呪術を解くことも出来ない。
だが、それでいい。
人には人を救えない。それが一基の辿り着いた真実だ。
真咲を救うなんて題目を並べてしまった時点で、また一基は奪われる。だから、それが無関係になっている今こそが、東雲一基が全霊を以って戦える状況だ。
「……パパに、連絡を入れていいかしら。今でこそパパは団長を引退しているけれど、それでも、あなたの父親だもの」
「頼むよ。あの人にあとで怒られるのは勘弁だ」
一基がそう答えると、セレーナは席を立った。去り際の顔が悲痛に歪んでいたのは、きっと団長としてではないのだろう。
その姿を見てしまえば|、一基の胸にある一つの疑念は、否定されそうになってしまう。
だが、駄目だ。
たとえ彼女が自らの義姉で、独立十字騎士団の団長であろうと。
彼女の不可解な行動だけは、どうしても清算しておかなければならない。
「――ジェダイトさん」
「……どうした?」
「結界を張ってほしい。盗聴の可能性を考えての、音と通信に対するものだけでいい」
そんな頼みをすれば、きっと怪訝な顔を向けられるかと思っていた。
何しろセレーナがいなくなったタイミングで、こんなことを言い出しているのだ。ともすれば、裏切りとみなされても仕方がない。それでも、現状で頼れるのはジェダイトだけだった。
だが、ジェダイトは小さく頷いて、即座に魔術を用いて結界を張ってくれた。一基を問い質すこともせずに、だ。
「……理由を聞かないのか?」
「おそらく、僕は君と同じ疑念を抱いているのだろう」
そう言ったジェダイトの神妙な顔に、一基は確信を抱いた。彼もまた、気付いていると。
だから、一基は自ら口を開く決意をする。
「……セレーナが、『浄化の星』に通じている可能性がある」
その言葉に、ジェダイトは黙って頷いていた。
「絶対だとは思わない。可能性は、きっとかなり低い。だけど、見過ごせない点が多すぎるんだよ」
例えば。
わざわざ『浄化の星』そのものではなく日本支部なんてものを潰す為だけに、独立十字騎士団の団長が出向いているということ。
何故かショッピングモールで一基が魔術の補助装置を見つけたときに、彼女の姿がすぐ近くにあったこと。
疑い出せばきりがない。
そして何より、独立十字騎士団のトップ二人がいて、遠隔操作されていたとはいえ、本当にあの白い男――柳光二を逃してしまうなんてことがあるのか。
――けれど。
彼女が『浄化の星』と繋がっていると仮定すれば、理由はいくらでも考えられる。つじつまが合ってしまうのだ。
「本当に、心の底からセレーナを疑ってる訳じゃない。もしかしたら、操られているとか、そういう可能性もある」
一基の記憶にあるセレーナはいつだって優しい人だった。それこそ、本当の姉のように。
そんな彼女を疑うなど一基には到底出来はしない。
だが、可能性の話をするなら、まだセレーナと『浄化の星』の関与を否定する材料は見つかっていない。
「君の言葉ももっともだよ。僕だって、信じたくはない」
眼鏡が光を反射して、その奥のジェダイトの瞳を見ることは叶わない。けれど口元は、固く強張って見えた。
「僕が疑ったきっかけは、最近あることを思い出したからだ」
ジェダイトはそう切り出した。手にしたカップに注がれた紅茶からは、とうに湯気が消えていた。
「八年前のあの日、僕と君ともう一人でスリーマンセルを組んでいただろう? そして彼は、不幸にも《死の業火》に呑みこまれてしまった。彼を見て、僕たちは逃れる為の防護壁を展開できた訳でもあるが」
「……何が言いたいんだよ、ジェダイトさん」
「彼の最期の言葉。それを夢に見た。――君は、覚えているかい?」
ジェダイトの問いに、一基は首肯する。
忘れたことなど一日だってありはしない。あの日の光景はこの八年間、毎晩見続けてきたのだから。
「『後ろだ、カズキ』。あの人は確かにそう言ってたよ。建物の崩落を教えてくれたんだ。俺なんかを助ける為に、あの人は人生で最期の瞬間を費やしたんだ」
「確かに言葉は合っている。けれど、本当にそうだろうか」
ジェダイトの言葉に、一基は打ちつけられたように硬直した。今まで築いてきた足場を、根底から覆されるような恐怖があった。
「彼は既に炎に呑まれていた。本当に、彼には崩落が見えていたのかな。僕は否だと思う。そしてそう考えれば、その時の言葉の意味がまるっきり変わってしまう」
そして、ジェダイトは言う。
「背中に気を付けろ。つまり、犯人は君の親しい人だと、そう言っていたんじゃないか?」
本気で一瞬、心臓が止まったかと思った。
呼吸が苦しくなる。止まった反動とでも言うように、胸の鼓動が急に暴れ狂い出す。全身から噴き出す嫌な汗が、酷く不快に感じた。
「彼はおそらく何かに感づいていた。だから真っ先に《死の業火》に狙われた。――そして、彼自身が最後に、僕たちへヒントをくれていたのだとしたら?」
「それじゃあセレーナ以外にも可能性が出てくるぞ」
「……失礼な話をするが、騎士団にいた頃の君に『背中を預けられるような相手』が他にいたかい? 仲間としては見ていても、それ以上の関係には踏み込ませなかったように思う」
ジェダイトの指摘に、一基は反論できなかった。
そもそも一基が独立十字騎士団に入ったのもセレーナの家族になったのも、一基が家族を奪われたことから始まっている。それが原因で親しい者を失くすことに怯え、あえて親しい者を作らないようになったのかもしれない。
「……もちろん、まだ推論の域は出ない。そうでない可能性も、十分すぎるほどにある」
「けれど警戒は必須ってことだな。――それで、わざわざそんなことを俺にだけ言ったからには、続きがあるんだよな」
「察しが良くて助かるよ」
ジェダイトは少しだけ笑いながら、ポケットの携帯端末に地図を表示させる。
どこかのビルに、赤いピンが刺さっていた。
「柳光二の居場所を、昨日僕は特定している。そのことはまだ、団長に伝えていない」
やはりか、と一基は心の中で呟く。
もしもセレーナが黒だった場合、それを告げれば罠が展開される可能性がある。だからこそ、セレーナには伝えず奇襲を仕掛ける必要がある。
そしておそらく、その役目にジェダイトが選んだのが一基なのだろう。
「俺一人が柳光二と戦って『浄化の星』の日本支部を潰す。そうすれば、後の事情聴取かなんかでセレーナが本当に関わってたか分かる。そういうことか」
「あぁ。本当に繋がっていた場合、本人に気取られることが一番危険だからね。迅速に決着を付ける必要がある。――だが、分かっているね? これは騎士団にいた頃のような複数での作戦とは訳が違う。単騎決戦で、命懸けになる」
「元々、命の懸かってなかった作戦なんか一個もなかっただろ」
「そう、だな。――じゃあ僕の作戦に協力してくれるね?」
「あぁ」
差し出されたジェダイトの手を一基は握り返す。
「君には柳光二の所在地を送る。任意のタイミングで強襲を仕掛けてほしい。その間、僕は団長を見張っておく。何かおかしな動きがあれば、容赦なく《巨狼の縛紐》で捕縛するから」
柳光二との戦いにジェダイトの助力を得られないのは痛いが、しかしセレーナを捕縛するとなればジェダイトの力は必須だろう。あの《巨狼の縛紐》は、発動時間や安定性には難があるが、術をかけられた本人にはどうしたって解除する術はない。
そして、ジェダイトはふっと魔術の防音壁を解除する。
「――頼んだよ、カズキ」




