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迷探偵と初めての依頼  作者: 白石リッキー
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再会 2

ティラノちゃんとの予期せぬ再会は驚きよりも嬉しさのほうが勝っていた。ティラノちゃん…寺野あやめもそれは同じようだ。彼女はただ黙ってこちらじーっと見つめている。


「いやぁマジで久しぶりだね!引っ越したの小学生だったから九年くらい?」

「……」


どうやら嬉しすぎて声もでないらしい。

無理もない。あれだけ仲のよかった友達との再会だ。


「帰ってきてるなら言ってよぉ!もー冷たいんだなら!」


俺はあやめの肩を叩こうとしたがその手をすごい勢いで弾かれた。そして彼女は閉ざしていた口を開いた。


「言いたいことはそれだけ?」

「え?」


彼女は机を叩きぐいっと俺に顔を近づけるそして、


「あんた、言い逃れできないと分かったとたんに次は知り合いのふり?どこまで腐った男なのよ」


と怒鳴りつけた。どうやら彼女俺が悪あがきしていると思ったいるらしい。じーっと見つめていたのも睨んでいたようだ。

再会の感動に浸っていた俺の目にフィルターがかかってそのように見えていただけみたいだ。

全く恥ずかしいね。


「私はあんたみたいなやつが一番嫌いなのよね」

「いやいや、ちょっと待って!それは誤解だよ!」

「誤解も六階もあるか!これ以上言い訳するなら…」

「噛みつくぞ?」

「なっ…なんでそれをっ!」


これは彼女が噛みつきティラノと言われてからの口癖である。

当時の子供たちは噛みつくぞと言えば大抵は怯えたものだ。

知っていることに動揺を隠せないあやめ。


「俺だよ不動千秋。覚えてる?」

「千秋?」


先程よりもじーっと見つめるあやめ。するとあっと驚いた声をあげた。


「うそー!もしかして千秋!?」

「…さっきからそう言ってるじゃん!」


つい声を荒げてしまい、江口がビビっていた。




あやめの誤解を解くのに時間はかからなかった。ただ色々と自分達の首を絞めないように嘘もついたがまあ目をつぶれる範囲だろう。


「ってことは千秋は今探偵でこっちの江口くんは事務所のアルバイト…ってことよね?そして今回このお店にきたのは偶然通りすぎた百花をみて違和感を持ったから…と」

「まあ探偵のカンってやつだね!なっ!」

「えっあっはい!意外と当たるんです!嘘じゃありません!!」


江口はどこか上の空だ。でも仕方ないだろう。何たって今彼の向かいには憧れの佐久間百花が座っているのだから。

まったくさっきまでびびりまくってたくせに繊細な男だと思っていたがなかなか図太い神経の持ち主だ。


「そういうことだから問題解決のプロに助けてもらいな」

「でも、私お金ないし…」

「大丈夫よ千秋は未成年からお金取るような男じゃないから」

「そうだよ佐久間さん。未成年からは取れないよ!それに俺はお金じゃなく人助けの為にやってるからね!」


俺はにっこりと笑い親指をたてた。

佐久間さんからの依頼は江口の仕事の延長ということにしてくれと先程江口本人から頼まれていたので彼女からお金は頂かない。

江口の彼女への心は本物だった。未成年でお金のない佐久間さんの代わりにお金を払うというのだ。

佐久間さんは自分を苦しめているものについて語り始めた。




佐久間さんから語られた話はあまりにも恐ろしいものだった。犯人たちは彼女の学校の裏サイトでターゲットを探しているというのだ。裏サイトには今まで被害にあった人たちの名前も書かれている。そしてその中には佐久間さんの名前もあった。

誰を狙うかは裏サイトの運営が名前を張り付けているようだ。そしてそれを見た犯人がターゲットに『天罰』を下すのだという。


「『天罰』ってなにをされるんだ?」

「それは…ここを見てくれればわかります」


サイトにはいくつかの動画が張られている。再生するとそこに映っていたのは悲惨な映像だった。


「…これはひどいな」


次第に怒りが込み上げてくる。

それはあやめも同じだったようで彼女の拳は強く握られている。


「友達がこの前『天罰を』受けました。その子はサイトに動画をアップされた日から不登校になってしまいました」


佐久間さんの顔に涙がつたう。彼女は人知れず恐怖と戦っていたのだろう。それは俺たちじゃ到底考えもつかないような孤独な戦いだったと思う。

あやめは彼女をつよく抱き締めた。佐久間さんは気が緩んだのかあやめの服がグシャグシャになるほど泣いていた。


「千秋さん…」


江口がこちらをじっと見つめていた。「どうにかならないのか」と目で訴えかけてくる。

俺はうなずき策を考えた。

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