出発の時
【冒険者】
《知らないものを求めて旅をする人達のこと》
私の場合は世界を知るよりも
自分のことについて、一番知りたかったのかもしれない
※ティア・アシリア視点
[872年] イリス館 夜
この2年間必死だった、ここから出てことに
あの子との約束を守るため
(よし、やっぱりあの見張りはサボってる、今のうちに向こうの空き部屋に行かないと)
私は物音をたてずに扉を開け、中に入り静かに扉を閉めた
ここまでは上手くいった、問題はここから
この部屋の窓から出ないといけない
窓の外は崖になってる、そして下は海だ
ロープでゆっくり降りていくしかない
月明かりだけが頼り、明かりを灯したらきづかれるかもしれない
泳ぎが得意じゃない私が落ちたら、命はないだろう
でも、今日しかないんだ、今日しか
(大丈夫、練習してないけど下まで行けば
歩ける場所がある。たぶん)
見張りが来るかもしれない早く降りないと
さっきのは来ないと思うけど
ロープを結んで慎重に確実に速く、しっかりと
窓から出たら
風が意外と強かった
(大丈夫、大丈夫だから)
私はゆっくりと降りていった
下は見えない、波の音だけが聴こえる
下は見たくない、絶対怖くなるから
あと少しの所で手が滑った
「あっ、落ちる」
落ちると思ったけどすぐに足が着いた
(下まで来てたんだ、よかった)
「ここまで来れば、あと少しであの子のとこに」
こうして、私の旅は始まったのだった
後悔はしてない