目覚め、再び
目を覚ました俺が、まず感じたものは激しい頭痛だった。
「う…………ぐ……………」
頭を鎖で縛り付けられている様な激しい痛みに、絞り出したような呻き声をあげてしまう。
「…………………………」
ガンガンと痛みが響く頭を右手で支え、ゆっくりと辺りを見回す。
…………どうやら、木造の家屋の中の様だ。
そこまで俺が理解したとき、初めて自分が今ベッドに寝かされている事に気付く。
「俺は…………確か、草原にいた筈だが…………?」
「それはボクが君をここまで運んだからだよ。」
「………………ッ!?」
急に耳元で聞こえた声に驚き、そちらの方に振り向く。
そこにいたのは、綺麗な藍色の髪を持った14歳程の少女だった。
かなり彼に近づいていた様で、彼が振り向いた事でお互いの距離が文字通り、『目と鼻の先』になっている。
「…………うん♪やっぱり可愛いなぁ、君。」
「………………………」
突然すぎる出来事に俺の思考が一瞬フリーズする。
それも仕方ないだろう。気がついたら見たことのない家のベッドに寝かされていて、戸惑っている状態からのコレなのだ。
ついていける方がどうかしているだろう。
「………よく分からないが………取り敢えず離れてもらえるか?」
「ちぇっ、反応薄いなぁ…………」
名残惜しそうな声を漏らし、渋々といった様子で少女は離れた。
「ここは………………何処なんだ?」
「んーここはねぇ………私の家……かな?」
……………疑問形なのが気になるが、とにかく、俺は目の前の少女に助けられたらしい。
「ねぇねぇ、貴方の名前は?」
「………人に物を聞くときは何とやら、だ。」
「あははっ♪言い返されちゃった。」
…………さりげなく、この世界での名前の形式について聞き出そうとした分けだが。
「私はリィナ。リィナ=フェルシベールよ。」
「……成る程…………俺は、レイジ=シドウだ。」
「レイジ=シドウかぁ………シドって呼んでもいい?」
訳されて人に呼ばれるなんて、久しぶりだ。
そう言えば、ウィルディにも主と呼ばれていたから、何気に名乗るのは久方ぶりだ。
………………ん?ウィルディ………?
「あっ………」
「んー?どうしたの?」
「………俺が倒れていた辺りに、剣が落ちていなかったか?」
「……………それって、あの綺麗な狐の剣?」
「あぁ…………それで間違いない。」
「それなら…………………」
彼女がそこまでいいかけた瞬間、何かを引っ掻く様な音が聞こえ始める。
例えるなら、猫が木を引っ掻く様な……そんな音だ。
「あぁ、丁度来たみたい。今開けてあげるわね」
そう言い、リィナが部屋のドアに駆け寄り、手をかける。
「その剣なんだけどね…………貴方が重たくて剣まで持って行けなかったのよ。そしたら…………」
そこでいったん切り、ドアを開けるリィナ。
開けられたドアの先にいたのはーーーーーーー
「本物の狐になっちゃったの。」
ーーーーーー小さな尻尾が九本ある狐だった。
『主様ぁぁぁぁぁぁぁ!!大丈夫ですか!?怪我はありませんか!?』
そう叫びながら、狐がこちらに突っ込んできた。
………大きさ自体はリィナの膝辺りぐらいだから、たいして衝撃は無かったが。
それよりも注視すべきはその声、だ。今確かに『主様』と聞こえた。
と、いうことは………………
『主様ぁぁぁぁ…………寂しかったですよぉ…………』
「やっぱり………お前か、ウィルディ。」
再び聞こえた声で確信した。この狐は……………どうやら、あのウィルディの様だ。
「お前………こんな姿にもなれたのか?」
『それが…………分からないんです。貴方についていきたいって強く願ったらこうなりました。』
ふむ……………また、か。生物にまで姿を変えるとは………………………ん?
…………リィナが何やら驚いた様にこちらを見つめている。
「どうした?リィナ?」
「………会話、出来てるの………?」
「会話って、今こうしてこいつが話してるじゃないか。」
「………そうなの?狐が鳴いてる様にしか見えないんだけど………………」
…………やはり、謎が多いな。コイツ。
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