アカの追走
12時に投稿できなかったorz
「死ぃにやがれぇぇぇぇッ!!」
獣のような咆哮をあげながら目の前の大男が拳を振り上げ、猪の様に凄まじい速度で突っ込んでくる。
凄まじい威圧に思わず俺は怯んでしまった。
「うおぉぉぉぉらああぁぁッ!!!」
『主様ッ!!飛んでくださいッ!!』
「くっ!!」
ウィルディの警告を耳にしながら、俺は本能的に思い切り右に飛んだ。
奴の拳が降り下ろされた瞬間、拳一つでは絶対に起こり得ない衝撃が俺を襲った。しまった………!!
これじゃルクスも間に合わないッ!
『不味いっ、主様ッ!!私を盾にッ!!』
ウィルディの言葉に従い剣を横に構え、防御の構えをとる。
その瞬間、ウィルディシルトの刀身が変形し、巨大な盾の様な形状に姿を変え、衝撃から俺の身を守った。
「………これは?」
『主様、大丈夫ですか?』
砂塵が俺の視界を覆い尽くす中、ウィルディの俺を心配する声が聞こえた。
「ああ、大丈夫だ。…………お前、こんな事まで出来たのか?」
さっき見えた刀身は確かに、盾に姿を変えていた。今でこそ元の刀身に戻っているが…………確かに見えた。
『それが、私自身にも分かりません…………』
「分からない、のか?」
『はい…………主様を守りたい、って強く思ったら勝手に…………』
……………神創器、か。不思議な武器だ。ついに物理まで無視して不思議な事を起こした事になる。
「………ともかく、助かった。ありがとな。」
『えへへ…………ありがとうございます♪』
「へぇ、神創器ってのは、そんな芸当までできるのか?大したもんだ。」
砂塵が晴れ、姿を表した男の声を聞き、一瞬で俺とコイツの間に緊張が走った。
「……お前のさっきの拳……あれはなんだ?どうみても力だけで出せるものじゃないだろ。」
ダメもとで奴に問いかけてみる。
「………さっきも言ったがなぁ…………!』
そういいながら、奴は再び拳を振り上げる。
…………「拳を振り上げる」?………まさか………
「ウィルディ、通常の人間がルクスを使う場合、何か、発動のキーになるものはあるのか?」
「発動のキー、ですか?………ルクスは、自らの持つ保有ルクス………いわば、自らの持つ概念をイメージして、使うものです。私にはそれぐらいしか………」
そうか…………それなら簡単な事じゃないか。
「ウィルディ、今から俺の言う通りにしてくれ。いいかーーーーーーー」
「…………………分かりましたっ!!」
あの威力と速度では、必ずしも奴の攻撃を避けたり、防いだり出来るわけではないだろう。
だったらーーーーーーーーーーーー
「これから死ぬ奴にぃ言う事はねぇぇぇっ!!………………なっ!?なんだこれぇッ!!」
ーーーーー攻撃させなければいいだけのことだ。。
「か、体が…………動かねぇ………!!」
当然だろう。今、奴の体は地面から生えた俺の鎖に縛り付けられているんだから。
「………お前が拳を上げた瞬間がチャンスだった。お前の身体能力なら、俺が鎖を使おうとしたって、簡単に避けられただろう。けどな…………|ルクスを使うために集中している時なら………どうかな?」
「………………っ!!」
奴の表情が驚きから焦りに180度切り替わる。分かりやすいやつだ。だが、今ので確信した。コイツは、ルクスを使っていたんだ………!
縛り付けられて動けない奴に、ゆっくりと剣を構えて歩み寄る。
「っっっ!!てめぇ、何で俺がルクスを使うために出来る隙が分かった?それになんだ!?この鎖はぁっ!?」
「……………………」
………なぜだろうか、今から俺がしようとしている事は非常に恐ろしいことの筈なのに、全く怖くない。
まるで、何度も体験したかの様な…………?
「おいっ、聞いてやがるのかッ!?てめぇ、聞きギャァァァァァァァァァッッッ!?」
俺は無言で、奴の右腕を切り落とす。奴の悲鳴と共に傷口から真っ赤な血が吹き出す。
……「真っ赤」? …………「真っ赤」。
なんだろうか。不思議な気分だ……心地いい。
「………お前に聞きたいことがある。………何で俺の事を知っていた?」
「誰がてめぇなんかに言うイギャァァァァァァァァァッッッ!?」
…………左腕。
「まっ、待ってくガァァァァァァァァァァァァッッ!?」
…………右足。
「分かったっっ!!言うっ!言うから止めてくれッ!!………………俺は………命令されたんだ!!その剣を持ち主の腕ごと奪ってくるように言われんだッ!!
その、神創器とか言う不思議な武器を!!」
「その、お前に命令した人間は誰だ?」
「こっ、これ以上は言えないっ!!こ、殺したきゃ殺せ。」
……………聞き出せるのは、これぐらいか。以外と粘ったな。
「ありがとう……………じゃあな。」
そう言い、俺は奴の首を跳ね落とした。
生首が地面を転がり、真っ赤な血が雨のように俺に降りかかった。
………そうだ。俺は…………このアカ色を知っている……………!!
「あ、主様?大丈夫……すか…………じ………だ………」
その確信を得た瞬間、俺の意識は、闇の中に吸い込まれていった………………
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