協力と利用の境界
『主様ッ!!鎖を射出して一端下がりますッ!!』
「あ、ああッ!!」
ウィルディの咄嗟の判断に身を任せる。肩甲骨辺りから射出された鎖が天井に突き刺さり、体が引き寄せられ、天井辺りまで飛ぶ。
幾つかの触手は俺を追いかけて、天井にまで伸びてくる。
「ッ!?クソッ!!」
そこまで来て俺は気づく。空中では逃げ場がない……………!!
「…!!ウィルディッ!!」
『これは……!!了解ですっ!!』
ウィルディにイメージを伝え、意識を足の裏に集中させる。瞬間、右足の裏から鎖を射出し、天井に突き刺す。そして、直ぐ様鎖を切り離し、左足を少し先の天井に接地させ、鎖を射出し、切り離す。
この行動がどういう意味を指すのか。
「…天井を……走ってる!?」
そう、端から見れば今の行動は、まるで天井を走っている様に見えるのだ。……事実、走っているわけだが。
とにかく、足場は出来た。迫り来る触手を素早く避け、リィナの近くに着地する。
「チッ……やけにしぶといな……」
「シドッ!!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。傷一つない」
怪我は何一つない、無傷だ。だが、それは相手も同じことだ。奴の甲殻………前のとは比較にならない程堅い。少なくとも、先程切り伏せた扉よりも。
恐らく、しっかりと踏み込めれば、切れないことは無いだろうが………
「ウィルディ、前にやった動きを止める鎖を試せるか?」
『了解です。縛り付ける鎖ッ!!』
ウィルディの掛け声と共に、足の裏から伸びた鎖が地面を通り、奴の足元から飛び出してくる。が、触手を足のように扱い、全て避けられてしまった。
『……良い策、とは言えませんね』
「だとしたら、どうすれば……?」
打開策を考えている間にも、奴の触手は縦横無尽に躍動しながらこちらに突っ込んでくる。
「ウィルディッ!!策を練っている間、奴の触手を食い止められるかッ!?」
『やって見せますっ!!』
ウィルディが良い返事を返し、俺の腕から鎖を伸ばして触手を迎え撃ち始めた。
しかし、策を練ると言ったものの、どうすれば…………?
ふと、視界の隅に真剣な眼差しで奴を見据えているリィナが映る。
………リィナなら、奴を止められるか?
「………リィナ、奴の動きを、あのルクスで止められるか?」
「多分……無理だよ。私の【瞬爆】は連射がきくかわりに、射程が短いの。直接アイツは狙えないよ………」
「…………」
考えろ。奴の触手をかい潜り、決定的な一撃を与える方法を………!!……爆発……勢い……硬さ………ッ!!
「リィナッ!!良い策を思い付いた!!耳を貸してくれッ!」
「う、うん」
「いいか、俺がーーーーーー」
「えっ!?そんなの無茶だよっ!!」
俺の策を聞いリィナが、声をあげる。だが、これが一番効率がいい。
「………頼んだぞ」
「シドッ!!」
リィナの呼ぶ声を聞き流し、ウィルディに策を伝える。
「ウィルディ、俺の合図で触手を防ぐのを止めて、鎖を俺の足に、鎧みたいに巻き付けてくれ」
『えっ?は、はいっ!!』
一瞬、戸惑いが見られたが、素直に俺の指示に従ってくれるようだ。
「いくぞ。三、二、一ッ!今だッ!!」
先程の指示通り、俺の両足を覆うように鎖が巻き付いた。迫っていた触手を避け、天井に飛ぶ。
そのまま先程の要領で触手をウィルディで弾きながら天井を走り、距離を出来る限り近づけるーーーーーーー!!
「今だッ!!リィナッ!!」
「いっけぇっ!!」
リィナの気合いの声と共に、俺の足元に小規模な爆発が起こる。小規模でも、凄まじいその勢いを利用し、一気に化け物に向けて急降下する。
「ギュアァァッ!?」
化け物が驚いたような声をあげ、触手を振りかざしてくる。勢いをそのままに突破し、化け物の体が目前に迫る。
「喰らえェッ!!」
俺の渾身の突きが、奴の体を貫いた。
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