扉再び
さっきのやり取りから数分程経った。
途中、ウィルディが地面の凹凸に躓いて転んでしまうというアクシデントが起きたが、特に問題なく前に進めていた。進めている、のだが…………
「………深いな。いったいどこまで続いてるんだ?」
そう、一向に変化がない。行けども行けども暗闇ばかりだ。
それどころか、より暗闇の深さが増してきているように感じる程だ。
『今更ですが…ルクスを使って調べてみますか?』
何気なく呟いた言葉にウィルディは、敏感に反応した。リィナは……もう慣れたようだ。
俺とウィルディの会話は。特に反応するでもなく、ただ俺の手を先程よりも強く、握りしめただけだった。
しかし……ルクスか。確かに良い手だ。
このまま、終点の見えないまま先を行くよりは遥かに良いだろう。
「分かった……イメージしてみよう」
…………鎖……………触覚……………反射…………こんなところで良いだろう。滅茶苦茶な使い方だが………。
『イメージ、受け取りました。………これまた、凄いアイデアですね、流石です。』
「よし………リィナ、少し離れていてくれ。」
「良いけど……何をするの?」
「………少し見ていろ」
リィナにそう言い、地面にしゃがみこんで右腕の袖を捲り、上に突き出す。
「……発射…」
『了解です。主様♪………発射ッ!!』
ウィルディが叫んだ瞬間、俺の肘から手首までの全ての部位から細かい鎖が射出される。
四方八方に飛んだ鎖は壁に当たっては、まるで鏡に当たった光の様に反射し、奥へ奥へと進んでいく。
その様は、さながら張り巡らされていく蜘蛛の巣のようだった。
そして、鎖に付与した『触覚』を頼りに、頭のなかでこの先の通路の形状を組み上げていく。
…………!!見つけた………。
長い通路のもう少し先に、周りの壁の材質とは異なるモノで構成された扉のようなものがある。
おそらく……これが『ゴール』なんだろう。
「シド……今のは?」
「……あぁ、そうか。まだ説明していなかったな。これがウィル………俺のルクス、【鎖操】だ。」
この状況で「今のはウィルディのルクスです」何て言ったら話がややこしくなるだろう。取り敢えず、今は俺のルクスだと説明しておく。
「へぇぇ……不思議な形質だね。破壊するでもなく、武器にするのでもなく、操る、か」
「…驚いたな、分かるのか?」
「うん。元々、師匠が研究していたんだ。ルクスについて、ね。」
……成る程。その弟子であれば詳しいのは当然、というわけか。
そんな何気ない会話を交わしている内に、どうやら辿り着いたようだ、最深部に。
「着いた。ここが恐らく最深部だ。」
「ここ、が」
俺たちの目の前にそびえ立っているのは、大型の扉だった。先程とは違い、鎖が絡み付いている訳ではないが。
「また、か…………」
だれに言うでもなく、嘆いた。
……話が進まない…………
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