闇の中へ
*今回、いつにも増して短いです。申し訳ありません。
「…………嘘、でしょ………?」
リィナは今、目の前の出来事を見て、驚きを隠せなかった。自分は幻でも見ているのか、と。
まさしく、『目を疑う光景』だった。
ルクスの扱いの実力ーーーではなく、唯単純な威力の違いで考えたとしても、何がどうなれば爆発の力に人間の筋力が勝てるのか、そして、あの華奢な体の何処にそんな力があるのか。
リィナには決して知り得ないことだが………先程のルクスは、地球の知恵ーーー人間の筋肉について知識のあるレイジだからこそ出来た事なのだ。
腕の鎖を筋肉と見立て、自らの筋力を爆発的に上昇させた。そこにウィルディシルトの凄まじい破壊力
も加わり、扉を鎖ごと切り裂くに至った。
「やっぱり…………君で間違いなかったみたいだね…………シド……」
…………ハッキリと言おう、やり過ぎた。
鎖を断ち切るだけの筈が、俺の目の前に有るのは、真っ二つに裂かれた扉。
…斬ってしまったようだ。この巨大な分厚い扉を。
『流石主様ですッ!凄い力ですね』
「あぁ…………何でこんな力が出たんだろうな?」
ルクスで強化せれたから、とは一概には言えない。
イメージも曖昧、咄嗟に創ったモノなのに、それだけではあそこまでの力は出ないだろう。
まぁ………いいか。もう、一々考えるのも疲れた
「ありがとう……シド。まだ理解が追い付かないけど…………僕の全力でも壊れなかった扉を丸ごと斬っちゃうなんて、凄いね、君は。」
「…………いいのか?扉ごと斬っちまったが………」
「僕に興味が有るのはこの扉の先にあるもの。大丈夫だよ」
「それならいいんだが…………」
そこまで言った所で、腕の重みが一瞬で消える。
………どうやら、ウィルディが狐の姿に戻ったようだ。俺の足元で、警戒するかのように扉の奥の暗闇に目を向けている。
「どうした、ウィルディ?」
『………わかりません。ただ……何か凄く、嫌な予感がします。』
「ふむ………どうする?リィナ」
「ふぇ?何?」
突然話しかけられたからなのか、気の抜けた返事を返すリィナ。
「……この先に進むんだろう?何やらコイツが嫌な予感がするらしくてな………俺が先導しようか?」
「……うん…………お願いできる?」
「あぁ、俺も………この中に何があるのか気になるんだ。お前の邪魔はしないから、な」
「うん、分かった。大丈夫だよ」
「じゃあ……………行くか」
そこで会話を切り、俺とリィナは暗闇に歩を進めた。その頃には、もう、砂煙も全て収まっていた。
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