強行突破
「師匠は………行方不明になる前日に、こんなものを私にくれたの。」
そう言ってリィナが、赤いワンピースのポケットから一枚の色褪せた紙切れを取り出した。
二つ折りにされた、少し大きめの紙だ。
「これは……三年前、丁度この日、師匠の誕生日の日に見るように言われた、私に当てての手紙だったの」
「それは………随分とまわりくどい事をしたんだな」
「……うん……」
失踪する前に残した手紙……置き手紙というやつだろうか。それにしても何故、三年後にそれを見るように言ったのだろう?
「それで?その手紙に書かれていたのが、この扉という分けか?」
「本当に………勘が鋭いね、君は。でも、手紙にはもう一つ、大事な事が書いてあったんだ………」
そこで一旦切り、手紙を胸に大事そうに抱きしめ、話を続けた。
「この扉は、私では開けられない…………でも…必ず、この扉を開ける人間と出会える。そう書いてあったの」
扉を開ける人間………?それでは、まるで………
「うん。多分、今貴方が考えている事は当たってる………倒れている貴方を見た時の最初の印象が、面白そう、だった。師匠の言う『扉』の先に何があるのか?それを知るには、貴方が必要だと思ったから……………改めて、お願いするね。この扉を…開けられない?」
「………分かった。何か出来ないか試してみよう。君には救ってもらった恩があるからな。」
「……ありがとう……シド……」
………まず、この鎖だな………見たところ、ウィルディの【鎖操】の鎖に酷似している。やはり何か関係があるのか…………?
「ウィルディ、この鎖………何か分からないか?」
いつの間にか俺の足元に座っているウィルディに問いかける。
『この鎖は……………ッ!?』
突然、全身の毛を逆立て、狐に化かされた様な表情を浮かべるウィルディ。
……いや、狐が狐に化かされるというのも変な話だが。
『この鎖………ルクスから作られたものみたいです……でも、何か変なんです。』
「変?」
『はい………純粋過ぎるんです。もし仮に私のようなルクスを持つものが居て、この鎖を作り出したとしても………。人の体を通ったルクスがここまで純粋な筈がありませんからね。』
「だとしたら、この鎖は………」
『人の作ったものではありませんね。確実に』
人が作ったものではない、か。一体どういうことだ………?
「とにかく、この鎖を取り払いたい………何とか出来るか?」
今重要なのは、この鎖の作られた過程ではない。この鎖を取り払うことだ。
『うーん…………斬ってみましょうか?』
「………斬れるのか?」
ウィルディの大胆な提案に俺は少し驚く。
いくら腕輪のお陰で筋力が上がっているといっても、金属を切れる自信なんてない。
『………少し、考えがあります。一先ず、私を振り上げて構えてください。』
そう言い、ウィルディが一瞬輝き、一瞬で剣に戻った。………これ、どうなってるんだろうか?
俺は言われた通りにウィルディを振り上げる。
『……少し荒っぽいので、リィナさんには下がってもらってください。』
「リィナ、少し離れていてくれ」
「う、うん、でも大丈夫?爆発でも何ともなかったんだよ?下手したら、その剣が折れちゃうんじゃ……?」
………確かに、その心配は最もだな。
だが、こいつは唯の剣ではない。きっと何か出来る筈だ…………!!
『では、いきますッ!!ハアァッ!』
ウィルディの気合いの声と共に、構えている剣が発光し、瞬く間に姿を変える。
光が収まり、ウィルディは5メートル程もある、巨大な剣に姿を変えていた。
「えっ………!!剣が……大きく?」
突然の出来事にリィナが驚きの声をあげる。思ったよりも落ち着いているのは、実際にウィルディが狐になるところを見たからだろうか?
『主様ッ!!やっちゃってくださいッ!!』
「あぁッ!!」
俺の返事と共に、握りしめた拳から無数の鎖がのび、まるで筋肉を模すかのように俺の肩に繋がる。
今咄嗟に考えた、ルクスのイメージだ。
「いっ………けぇぇッ!!」
剣を、一気に降り下ろすッ!!ルクスのお陰か、何時もの何倍もの力が腕に伝わる。
巨大な刃は、そのまま扉に向かって降り下ろされ…………………!!
ドゴォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!
ーーーー扉を、叩き切った。
少し短かったかな?
感想、評価等ございましたらよろしくお願いします。m(__)m