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プロローグ

 彼女をはじめて見たのは、夏休がおわったばかりの9月だった。

 

 バス停の停留場でバスを待っていた時、道路をはさんだ向かい側にひとりの女の子がみえた。

 黒いTシャツに、ジーンズ姿。足は裸足だった。

 僕はその裸足に驚いて、思わず彼女を見つめてしまう。

 フェンスに寄りかかり、遠くをみている大きな瞳は寂しそうだった。

 

 僕は彼女に恋をした。



 突然この町に現れた美しい彼女は、すっかり有名人になっていた。

 誰も彼女の名前を知らない。どこに住んでいるのか、年はいくつか。誰もなにも、知らない。


 学校では毎日この話題で盛り上がっていた。

 僕もその中に入って、彼女の情報に耳を傾けていた。

   

  

 ときどき見かける彼女はいつもひとりでいて、同じような格好をしていた。

 黒髪のストレートヘアが風になびく。

 きっと突然あらわれた彼女は、突然いなくなるのだろう。話しかける勇気なんて持ち合わせてない僕は、

 ただ見つめているだけ。

 だから、まさか。彼女に話しかけられるなんて、思ってもみなかった。




 『ねぇ』

 話しかけられて顔をあげると、彼女と目があった。

 なんで、いるんだ?いま、話しかけられた?

 僕は混乱してしまって、ことばが出ない。

 『携帯。もってる?』

 かして、という事らしく右手を僕に差し出す。

 僕は停留所でバスを待ちながら、暇つぶしの雑誌を読んでいた所だった。

 「あ、うん。」

 慌ててバッグから携帯をとりだして彼女に渡す。受け取った彼女は僕の隣に腰をおろした。

 慣れた手つきでボタンを押している。どうやらメールを打っているようだ。

 僕は、隣に座った彼女から目が離せない。

 『ありがと』

 いつのまにか用が済んだらしい彼女は、僕に携帯を返した。そしてそのまま立ち上がる。

 思わず僕は、彼女の手首をつかんだ。このまま終わってしまうなんて、嫌で。

 「あの!えと・・名前!聞いてもいいかな?」

 彼女は、一瞬黙って答えた。

 『ユイ』

 そう言ってにこり、と。笑った。

 



 

 たったそれだけの出来事だったが、僕の胸は高鳴っていて、彼女が去った後もしばらくおさまらなかった。

 

 


  

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