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きになる

レオ「……何だここは」

レジ「前書きのコーナーだよ。今回は私達の担当だ」

レオ「前書きだァ?さっさと本編始めりゃいいじゃねェか」

レジ「はあ……ったくしょうがない坊主だね。前回、私達は共同戦線を張る事になったんだ。少しくらい協力的になってくれてもいいんじゃないの?」

レオ「うるせェな、俺ァ自分の為に奴らを利用するだけだ。朔来志輝の仲良しお仲間に加わるなんてあり得ねェし、死んでも御免だ」

レジ「あんたは本当にひねくれてるね……どこで育て方を間違えたんだか」

レオ「てめえに育てられた覚えはねェよッ!!」

レジ「あはは、そりゃそうだ。私は実行委員、あんたは参加者。どんな事があっても、両者は相容れる事は無いってね」

レオ「チッ、付き合いきれねェな……」

レジ「こらレオ!どこ行くんだい?まだコーナーは終わっちゃいないよ」

レオ「うるせェ!ごちゃごちゃやってねーで、さっさと本編行きやがれ!!俺ァ寝る!」

レジ「寝るのかい!?……あーあ、本当に行っちまいやがった、あのクソガキ……仕方ないねえ」


レジ「待たせたね。本編、始まるよ」

暗い暗い、闇の中に。

ぽつりと一つ、光るモノがあった。

周りに比較できるようなモノが見当たらない為、その光が大きいのか小さいのか分からない。

光は、まるで呼吸をしているかのように、ほのかに明暗が変わっていく。

そうして、いつまでも光り続ける。

ただただ、そこに存在している。



奇妙な共同戦線を張ってから、数日後の早朝。

僕は、まだ少しだけ冷たい空気を肌に感じつつ、太刀川市内を走っていた。

走っていたのだが。

「はあっ、はあっ……」

道の真ん中で、僕は膝を地に付けてばてていた。

「……まだ、走り始めたばかりだろう」

そんな僕に冷ややかな視線を送るのは、あれから数日して目を覚まし、完全復活した一ノ宮時雨。

「まあ、昨日よりかはまだマシだと言えるか」

変わらない道着姿で、腰には帯刀された日本刀。フィアーズの毒が消えてから、僕はそんな時雨に一つ頼みを聞いてもらった。

僕を鍛えてほしい、と。

僕は能力者の中で最も戦力にならない。未来眼が進化したお陰で少しは誤魔化せるが、結局は逃げることしかできない。

戦闘に於いて、僕が使える能力は無力に等しい。未来を見ることができても、避けられない攻撃はどうしようもないからだ。

だからせめて、僕自身も戦える力を持ち、見えた未来に対応し、逃げるのではなく切り開く術を身に付けたいと思った。

そしてその教えを請うには、かつて通った剣道の道場の師範の息子である時雨が適任だと判断したのだ。

時雨は人の命を奪わない“護身剣術”なるものを教えてくれるようなのだが。

『お前には未来を、敵の動きを見通せる強い力がある。だが、それに付いていく体力が無ければ宝の持ち腐れだ』

と、剣術よりも先に基礎体力作りをする事になったのだ。

その結果が、今のこの状態である。

「はあ、起きてすぐに……はあっ、市内三周なんて……」

「半周もできていないのに、もう弱音か?志輝」

「目標と実力が、釣り合わないんだ……っ」

重い体を持ち上げ、時雨に反論する。何をするにも、自分の実力に合った目標をこなしていく事がレベルアップの基本だろうに。

「それは違うな。真に自らの向上を望む者は、高みを目指し、その障害や苦難をも乗り越えようとする、強い精神を持つはずだ」

時雨は僕の肩を掴むと、強い眼差しで僕を射ぬく。

「最初は駆け足でもいい。とにかくやってみるのだ。その先に、貴公の求めるモノがある」

……見た目や雰囲気、立ち振舞いに似合わず、熱血漢なのかもしれない。

この鍛練に於いて、未来眼の身体強化は使わない事を時雨と約束している。

能力解除と共に一気に現れる疲労感は、僕の体力が足りないから余計に負荷が掛かるように感じるらしい(エリクシルが言うには)。

戦闘中でも戦闘後でも、僕の体力は重要なポイントになるようだ。

戦闘を有利に運び、戦闘後に辛い思いをしない為にも、今はこの鍛練をこなさなければならない……

僕はぐっと足に力を込め、再び走り始めた。

「くっ」

「む?」

その一歩で足を挫き、倒れてしまったが。

精神がその気でも、身体が付いてこないんだ……くそっ。

「……通常の、運動を苦手とする少年でも、ここまで体力が無い事もないと思うのだがな」

時雨は呆れたように嘆息しつつ、僕の身体を起こしてくれるのだった。



フラフラになりながら市内を半周し、鞘橋にさしかかった所で。

「よお、参加者共。殺し合いはどうした?」

橋の柱の上に器用に立つ、奇怪な服装の人間が声を掛けてきた。

異質な雰囲気に今の言葉。実行委員か。

「貴公は、私達を狙う手先の者か」

疲れている僕を庇うように前に出て、腰に差した刀の柄に手を掛ける時雨。実行委員の男はその顔を不気味な笑みで歪ませる。

「分かってるなら話は早いな。大人しく捕まってくれよ」

男が柱から地面に降り立つと共に、朝の澄んだ空が紫色に塗り潰されていく。隔離空間が展開されたのだ。

「志輝。貴公の能力は上限が早い。無駄に使わず、私の後ろにいてくれ」

「護られていろ、という事か」

漆黒の髪が縦に振れると、時雨は男を見据えた後に目を瞑る。

「おいおい……本当に大人しくなるのかよ。しょうがねえなあ」

男は右手を翳すと、その腕ごと獣の腕に変化した。獣化の能力か?

「生命的に生きてさえいりゃあ半殺しでも構わねえって話だ。最近イライラが溜まってるからさ、ちょっとオモチャになってくれよ!」

右手に生えた長く伸びる鉤爪を舐めずりすると、男は一気にこちらに駆け出す。

「風に柳、柔よく剛を制す。……抜刀」

時雨の口上が、不思議と心地よく耳に入る。静かに、歌うように、刀を横に引き抜いた。

「まずはガキの左腕だッ!!」

跳び上がる男は時雨の挙動を無視し、その奥の僕を狙ったようだが。

「秘技、雲海断刀……」

瞬間、獣の鉤爪の先端が纏めて一閃された。

「は?」

空中で呆気にとられた男の眼前に刀の鞘が突き出て、僕との間に壁を作る。

勢いは死なず、そのまま顔面に、鞘が直撃した。

「ぶっ……」

「失せよ」

静かに時雨はつぶやくと、男の体重が掛かった鞘をそのまま片手で操り、僕の頭上を飛び越えて遠くに吹き飛ばした。

こいつの腕力は、一体どうなっているんだ……

ゴロゴロと転がっていく男を鋭く睨むと、刀を納めてまた時雨は目を閉じる。

ある時レイズから聞かされた、時雨の能力「鋼縛爪スチーリング・クロウ」。

それは、時雨の爪に触れたモノに質量を与え、それを自在に操る。

時雨はこの能力で、爪が触れる刀から生み出した真空に僅かな“硬さ”を与え、飛ぶ斬撃として攻撃しているのだ。

「てめえ、よくも俺の爪を!」

今度は左腕、そして両足をも獣化させると、男はさっきまでとは段違いのスピードで翻弄しようとする。

「爪、か。私の「爪」と、どちらが鋭いか……」

おれの爪に決まってんだろが!!」

獣人のスピードは凄まじいものだが、僕が未来眼を使えば、その動きが事前に分かる。

左手でコンタクトを外そうとしたが、時雨はそれを手で制した。

「言っただろう、無駄に使うなと」

「しかし……」

「いいのだ」

どこから攻撃が来るかも分からないというのに、時雨は僕に能力を使わせまいとする。

「よそ見してんじゃねーッ!!」

「この程度の者に貴公の能力ちからを使うなど、もったいない」

真上から飛び掛かってくる男に見向きもせず、目を瞑ったまま僕に微笑んだ時雨は。

「背中を抉ってや……」

「抜刀ッ!」

男への振り向きざまに、鋭い眼光と共に、遠心力を利用し一気に刀を抜いた。

その刹那、男の身体が重力に逆らい、宙に押し戻された。

「なっ……」

男は上空にまで何かに押されていくが、服や髪、獣の手足に切り傷が増えていく。

その正体は、時雨の生み出した無数の真空の刃。陽祐との戦闘で、迫りくる無数の炎を相殺させた技だ。

「奥義、無影刃……威力は極力抑えたつもりだが」

威力を抑え、その風圧で宙に浮いたのか、あの男は。

斬撃が終わったのか、ボロボロになって男が落ちてくる。

落ちてくる男が地面に落下する前に、時雨は一瞬の内に男の服の襟を掴むと。

「はっ!」

あろうことか、背負い投げを華麗に決めた。

「ぐはっ……うぅ……」

頭を打たなかっただけ助かった……と思うべきなのだろうか。

男はそのまま気を失い、同時に手足の獣化が解除された。

「私のつめが勝ったようだな」

届いているかは分からないが、時雨は男に言葉を掛ける。

刀を納めた時雨が、男を橋の隅に寝かせると、紫の空に罅が入る。

隔離空間が解かれ、再び時を刻み始めたのだ。

「強いな、お前は」

「……負ける訳にはいかないからな」

何かを悟ったような遠い目をしつつ、時雨はまた微笑んだ。

「邪魔が入ったが、鍛練を再開しよう」

戦闘の後でも続けるのか?

見るかぎり、時雨には疲労している様子は見られない。

実行委員を相手にしたというのに……

こうまでその力を見せ付けられると、何故か安心してしまう。

時雨がいれば、実行委員との戦闘も楽になるのではないか。楽観的だが、そう思ってしまう。

その分、参加者同士の「戦い」が再開されれば、この上ない強敵になるだろう、とも思うが。

「行くぞ、志輝」

「……ああ」

柄にもなく、心強い存在だと、思っているのかもしれないな……

勿論、僕が生き残る為に、利用できるという意味でだ。決して信頼などではない。

他人を信頼する事なんて、無駄なだけなのだから。

だから僕は信じない。時雨だって、例外じゃない。



アエリアは、未だに眠り続けている。

あれから何日も経っているというのに、目覚める気配は無い。

その白い身体から冷気を放ち続けているままで、ずっと。

まるで彼女自身がコールドスリープしているかのよう……と前にも形容したような覚えがあるが、それはあながち間違っていないのではないかと思い始めてきた。

アエリアの容体について、バリアが何も言わない事も気に掛かる。

今、アエリアの身に一体何が起こっているんだ。

「志輝くん、机にうつ伏せになって、どうしたんですか?」

「見ての通りだ、疲れている」

全く、朝から体力を使いきってしまったから授業に集中できない。

今は四時間目の授業前の休み時間だが、それまでの授業はノートを取ると頬杖突いて眠っていた。

せめて授業の無い日や、放課後の時間にして欲しかったのだが。

「お疲れでしたか……でしたら、これをどうぞ」

コト、と僕の頭の近くに何かが置かれた。

うつ伏せ状態のままでそれを手に取ると、冷たい。

顔を上げて見てみれば、それは「高原からの産地直送」と書かれた牛乳瓶だった。牛乳だと?

「疲れた時には美味しいモノを、ですよ。志輝くん」

「お前は相変わらず牛乳が好きだな…………っ!?」

ぼうっとしていた頭が一瞬で冴えた。

身体を起こすと、僕の机の前に、透き通るように綺麗な青髪がそこにあった。

「遅刻、してしまいました。おはようございます」

「アエリア……目を覚ましたのか?」

「面白い事を言いますね、志輝くん。目を覚ましたから、私はここに来たんですよ?」

ニコニコ笑顔で、アエリアはスカートの裾を少し摘んで持ち上げた。

「今まで、お前の身に何が起こっていたんだ?」

「それが、私自身もよく分からないんです……長い間、色々な夢を見ていただけで」

夢、か。アエリア自身は、普通に眠っていた感覚だったのだろう。

「あ、アエリアさん!もう病気は治ったの?」

他にも聞きたい事があったのだが、クラスの生徒がアエリアに駆け寄る事が合図となり、一気に教室が騒がしくなってしまった。

数日の間、ずっと“病気で休んでいる”扱いだったからだろう。

しかし、僕の机の前で人だかりができてしまって落ち着けない。

ただでさえ疲れているというのに。やかましい……

授業開始時間になるまでの時間が、苦痛でしかなかった。

ともかく、アエリアが復帰したのは大きい。

これで能力者五人が全員機能する。敵となる実行委員の襲撃に対しても、より有利に戦えるだろう。

早く“絶対”を奪い返し、孤児院に住み着いた怪しい集団を追い出してやりたい。

「戦い」を知らない頃のような平凡な日々を、生きていけるように。



「あっ、お兄ちゃんにアエリアさんっ!お帰りなさーいっ!」

帰宅すると、ドタドタ足音を立てて千里が玄関まで来た。

一年生は僕達より早く授業が終わるから、帰宅も早い。羨ましい限りだ、特に今日は。

僕は靴を脱ぐと、真っ先に自室に向かう事にする。一日中疲れが溜まって眠気が強い。夕飯を作るまでの数時間、休ませてもらおう。

「千里、五時になったら起こしに来てくれ。僕は寝る」

「むきゅっ、お休みですかっ?わかりましたっ!」

「頼む……ふあぁ」

人前で欠伸などだらしないが、今回ばかりは許してほしい。

僕は重い身体を引き摺るように、廊下を進んでいった。

「あ、志輝くん。少し待ってくれませんか?」

数歩歩いたところで、後ろからアエリアに呼ばれた。

「……部屋で休ませてくれ」

「うう……じゃあ、後でまた声を掛けますね」

すまない、体力の限界が。

呼ばれるも歩みを止めず、僕は自室に入った。

ベッドの上に倒れこむと、僕の体重で中のバネが軋む音を放つ。

それすらも子守唄のように聞こえたのか、うつ伏せに倒れたまま、僕は眠りに就いていた。



きになる。

ひろいところで、ひとがいっぱいいて、あるきまわってる。

きになる。

みんなおなじにんげんなのに、かおやおおきさがぜんぜんちがう。

きになる。

どうしてこうもちがうのに、おなじにんげんなんだろう。

きになる。

けがをすれば、“ち”がでるのはだれもおなじなのに、その“ち”にはけつえきがたっていうちがいがある。

きになる。

みんな、じぶんだけが、ほかのひととはちがうっておもってる。

どうして?

「やぶけばこんなに“ち”がでるのは、みんなおなじなのに……」

……夕陽が沈みかけた頃。太刀川市に隣接する、とある街の大通り。

そこに突如、隔離空間が発現された。

それは今まで展開されてきた紫色ではなく、血で塗り潰されたような赤黒い色の空で。

空間の中に降り立つ一つの陰は小さく、コンクリートの地面に座り込む。

その陰の周囲は、空の色と同じく血の色で染められているが、空の色が映っているわけではない。

赤黒い色の、液体が広がっているのだ。

小さな陰は、何かを食べている。

その度に、その小さな口から、液体が滴っている。顎を通り、喉を通り、服の中にまで浸透してしまう。

「くちゃくちゃ……うーん、きになる……くちゃ、カリッ」

どうやら食べているモノの硬い所に辿り着いたらしく、液体で潤った口の中に、乾いた音が響いた。

「カリッ、カリッ……ゴリッ!」

今度は苦戦しながらも、硬い所を食べ始めたようだ。

小さな口を大きく開けて食べるその姿は、どこか可愛らしい、無邪気な印象を受ける。

……ただし、視覚的にこの様子を見ては、印象は大きく変わるだろう。

何故なら。この小さな陰の主は、“人体を食べて”いるのだから。

「ボリボリ……ふう。もういいや」

陰は立ち上がると、ぺっぺっと口の中で砕かれた白い破片を飛ばす。

周囲の赤い水溜まりに飛び散った白い破片は、赤く染まる。

『キュリオ、参加者がいるのは隣街だよ?』

陰の左の手首に嵌められた腕輪から、別の人間の声が電話越しのようにくぐもって聞こえてくる。

「そうなの?うーん、きになる。きゅりお、まちがっちゃった?」

『間違っちゃったねえ』

「きゅりお、どうしてまちがっちゃった?きになるきになる」

『方向音痴だからじゃないかなあ』

「そっかー、ほーこーおんちかー。……ほーこーおんちってなに?きになる」

『……はあ』

声の主は呆れてため息をついた。通信の向こうで、頭を抱えているのだろう。

『ところでキュリオ。もしかして、また人間を食べたの?』

「うん!あのね、さいしょはおいしかったんだけどね、だんだんおなじあじがあきてきちゃったの。だからね、どんなちょうみりょうがあればおいしくなるかきにな……」

『感想はいいよ感想は。舌足らずだから読みづ、ああいや聞き辛いなあ本当……』

声の言う意味が分からないのか、腕輪を向いて首を傾げる陰……キュリオ。空いた右腕で口を拭うと、白い肌に深紅の線が伸びた。

『とにかく、隔離空間は解除しても、死体もそのまま現実に持って来ちゃうから。ちゃんとお片付けしてから解除してね』

「うん、わかったー」

『うむ、よろしいっ』

まるで世間話をするように、キュリオが人間を食べる事ではなく、食べた後の事を注意する声。

キュリオも声の主も、常識から大きく逸脱している。

「ねえ、“さんかしゃ”もたべていーの?」

『うーん……本当はダメなんだけど、キュリオはいつも頑張っているし。一人だけなら特別に食べていいよ』

「ほんとー?わーいっ!きゅりお、もっとがんばってくるー」

『ようし、頑張ってきな、我らが実行委員キュリオ!』

激励の言葉を最後に、腕輪の通信が終わる。

キュリオは散らかった骨の破片や食いかけの死体を眺めると、ニカッと無邪気な笑顔を見せる。

同時に、小さな腕の周りに、様々な色の絵の具を混ぜたような、奇妙な色の物質が浮かび上がった。

それらは腕を囲むように円を描き、その軌道は淡い緑色の光を放ってそこに在る。

「おかたづけー」

キュリオの声を合図に光が一層強まると、宙に浮く物質が膨張し、大きな一つの球体を作り出した。

その球体に大きな“口”が開き、死体や広がった血を含めた、コンクリートの地面の一部を容易く一飲みにした。

「ごちそうさま」

球体が消えると、地面には抉られた跡が残る。

キュリオは重力を無視した跳躍力で二十階建てのビルの屋上まで跳ぶと、隔離空間を解除した。

「きになる、さんかしゃのあじ。えへへ……じゅるり」

夕陽は沈み、夜が来る。

そんな薄暗い空を、“少女”は駆けていった。

参加者が集まるという、太刀川市に向かって。


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