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第一章 6 バリエスの町、冒険者組合

翌日。


町はすっかり活気を取り戻していた。


道行く人が、ケイタを見ると手を振る。


「英雄様!」


「昨日はありがとよ!」


(英雄って……まだ慣れないんだけど……)


だが――


ケイタの中では、もう決まっていた。


「俺……じゃない、“私は”この世界でもっと役に立ちたい」


言い直し、まだ不自然。


(ケイタならきっと出来るよ!)


(まずは性別に慣れたい……)


町の中心。


石造りの建物。


重厚な木扉に刻まれた紋章――剣と盾。


冒険者組合。


ケイタは、深呼吸。


そして扉を押した。


ギィィ……


中は思ったより静かだった。


壁に貼られた依頼書。

長机。

武装した数名の冒険者。


そして、受付。


青髪で、勝気な目をした女性が座っていた。


「……冒険者希望?」


視線が上下に動く。


「ひとりで?」


「はい」


「その歳で?……というか、昨日の“魔獣の噂”の子?」


ざわり、と周囲の視線が集まる。


ケイタは簡潔に事情を説明した。


魔獣四体。

単独撃破。


受付の女性が、目を見開く。


「……すごいじゃないか」


一瞬、真顔になる。


「腕は申し分なさそうだね」


少し身を乗り出す。


「ただし――冒険者は命がけだ。覚悟はいい?」


ケイタは迷わず頷いた。


「すでに、何度か死にかけたので」


一瞬の沈黙。


「……はは」


受付が笑う。


「その物言い、妙に実感こもってるね」


書類が差し出される。


インク。

署名。


登録は驚くほどあっさり終わった。


「これであんたは“白銅級”だ」


小さなプレートが手渡される。


白銅級。


最下位ランク。


見習い。


(まあ、最弱スタートには慣れてる)


(でも今は最弱じゃないよね?)


(そこは触れるな)


受付が依頼板を指す。


「ちょうどいいのがある」


紙を一枚、抜き取る。


「近くの村からの依頼だ。

最近、作物を荒らす魔物が増えてるらしい」


少しだけ声を落とす。


「それと――“幽霊騒ぎ”」


「幽霊?」


「まあ噂レベルさ。夜に光る影を見たとか、声が聞こえたとか。

びびって畑に出られないらしい」


ケイタは依頼書を受け取る。


紙の感触が、妙にリアルだ。


(幽霊……? この世界にもそういうのあるのか?)


(ライム、食べられる?)


(たぶんエネルギーならいける!)


(物騒な基準やめろ)


胸が高鳴る。


初依頼。


初任務。


初めての“冒険者”としての一歩。


組合を出ると、


通りの向こうで――


ルカがこちらを見ていた。


言葉はない。


だが、視線は外さない。


ケイタは軽く手を振る。


ルカは一瞬だけ目を細め、


そして踵を返した。


「……行くか、ライム」


(うんっ!)


こうして、


最弱融合の冒険は、


次の舞台へと踏み出した。




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