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第一章 5 バリエスの町、冒険者への第一歩

魔獣たちが沈黙したあと。


町に、ゆっくりと息が戻る。


瓦礫の隙間から、

住民たちが顔を出す。


ケイタは、美少女の姿のまま肩で息をしていた。


夕陽が、装束を赤く染める。


「助かった……本当に助かったよっ……!」


「大人でも歯が立たない魔獣を……ひとりで……」


「お嬢ちゃん、あんた何者だい……?」


一斉に向けられる視線。


ケイタは、ぎこちなく頭をかく。


「え、えっと……あんまり大した者じゃ……」


(ケイタ、照れてるの?)


(黙ってろライム!)


内心だけは、いつも通り。


そこへ――


先ほどのゴロツキたちも近づいてくる。


さっきとは違う顔。


「まさか姉……いや、あんたがここまで強いとはな」


「……ありがとな。町を守ってくれて」


素直な礼。


ケイタは、軽く手を振る。


「いや、俺は……いや“私は”夢中でやっただけで……」


(俺、女の姿なんだって……忘れてた……)


ぎこちない。


だが、住民たちは笑う。


感謝の声が、あちこちから飛ぶ。


その輪の外。


少し離れた場所で――


ルカが見ていた。


影に半分隠れたまま。


瞳には、いくつもの色。


安堵。


戸惑い。


そして、どこか痛みを含んだ感情。


ケイタが気づく。


歩み寄る。


「……さっきは、ごめん」


ルカの声は小さい。


「ん?」


「助け……られた、から」

「お前……いや、あんたに」


ぶっきらぼう。


だが、逃げない。


確かに、少年の本音。


ケイタは、少しだけ柔らかく笑う。


「いいよ。俺は――困ってる子を見捨てられないし」


一瞬。


ルカの目が揺れる。


何かを思い出すように。


そして、すぐに視線を逸らす。


「……勝手にすれば」


そっぽを向く。


だが――


その場からは、動かなかった。


横顔に浮かぶのは、


英雄を思い出し、

惹かれ、

そして、苦しむ色。


沈みゆく夕陽が、


二人の間に、長い影を落としていた。





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