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第五章 11

霧のように漂っていた意識が、ゆっくりと現実へと結び直されていく。


「お主、なんかスッキリした顔をしておるの」


陽摩羅は腕を組み、どこか愉快そうにルカを見下ろしていた。


「何か、過去の清算でもしてきたのか?」


ルカは、少しだけ遠くを見るような目をして――


「……なつかしい人に、会ってきました……」


ぽつりと呟く。


「いや、本当は……いつでも会えたのかもしれない……」


「ほう……」


陽摩羅はわずかに口元を緩める。


「まあ……近くて遠きは男女の仲と言うしな!」


「ええっ!?なんですか、それ!」


思わず素でツッコむルカに、陽摩羅はくくっと笑った。


そのとき――


空間が、微かに揺らいだ。


〝ルカ、あなたは覚醒へのカギを手に入れた〟

〝速やかに、覚醒をはたすべき〟


響く声。


だが、それを遮るように――


「やめよ!」


陽摩羅が一歩前に出る。


「お前がルカと話す時間は、もう無い!」

「後は、我とルカがここを去るのを見送るだけじゃ!」


その声は、完全に上からのものだった。


しかし――


〝ベルナは、ルカへ世界の願いを話すべき〟

〝そうしないと、世界の均衡が保てない〟


次の瞬間、空間が大きく波打つ。


そこに現れたのは――


黒髪の少女。


静かに立つその姿は、どこか儚く――

そして、その瞳からは涙がこぼれていた。


「……それが、ベルナの姿なの?」


ルカが、静かに問いかける。


少女は、ゆっくりと首を振った。


「これは、あなた方へ見せる為の姿……」

「ベルナでもあり、ベルナではない」


そして――


一歩、ルカへ近づく。


「ベルナは、ルカにお願いしたい.....」


その声は、震えていた。


「世界の願いに、チカラを貸してほしい……」


少女は、深く頭を下げた。


その姿に、ルカは少しだけ間を置いてから――


「ベルナ、僕にどうして欲しいの?」


静かに問い返す。


「ベルナは、ルカにお願いしたい……」

「ガーディアンを率いて、縫合宮に仇をなす者達に鉄槌を!」


「…………」


沈黙。


その重さを切り裂くように――


「ルカ!これ以上、こやつの話を聞く必要はないぞ!」


陽摩羅が言い放つ。


「もともと、こやつは、お前を自分の操り人形にするつもりだったのじゃぞ?」


ルカは、その言葉を否定も肯定もせずに受け止める。


そして――


「陽摩羅様……ベルナは、それほど強く願っていたのだと思うんだ」


静かに言った。


「それは、自分の為の願いじゃないと思う」


「ふっ……」


陽摩羅は鼻で笑う。


「お前……お人好しじゃな!

今まで、損ばかりしてきたんじゃないのか?」


その問いに、ルカは――


「うん。あまり、得した事はないね」


柔らかく、笑った。


その笑みは、どこまでも穏やかで――

そして、揺るがないものだった。


「でも、それでいいと思ってる」


短く、しかし確かに言い切る。


その瞬間、空気がわずかに変わった。


少女――ベルナは、顔を上げる。


涙の残る瞳で、ルカを見つめながら――


「……ありがとう、ルカ.....」


かすかに、そう呟いた。


そして、その姿は静かに消えていった


〝第三階層への道が開かれた〟


空間の奥が、静かに裂けるように開いていく。


〝繭より先へ――進むべき〝


光の通路が、ゆっくりと形成されていく。


「……行くぞ、ルカ!」


陽摩羅が背を向ける。


ルカは一度だけ、ベルナがいた方を振り返り――


そして、何も言わずに前を向いた。


二人は並び――


開かれた通路へと、歩み出す。


その先に待つのは――


第三階層。


新たな戦いと、選択の場だった。



――

新たな活動報告があります!

ぜひ、ご参照ください




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