第一章 3 バリエスの町で
町に着いたケイタは、失神させた“お詫び”として、
男たちの雑用を手伝うことになった。
荷運び。
掃除。
店の修理の手伝い。
美少女の姿で黙々と働くケイタは、
あっという間に町で評判になっていく。
「いやぁ、最近の娘さんは働き者だねぇ」
「姉ちゃん助かるよ!」
だが当人は――
(これ全部……ルカのせい……)
内心、涙目。
夕方。
空が紫に染まり始めたころ。
背後から、声。
「……あっ、見つけた」
振り返る。
ルカ。
「おまっ……!」
反射で立ち上がる。
「あのなぁルカ! 俺は君の――」
「騙されるほうが悪いと思います」
「……は?」
あまりにも自然。
悪びれない。
そして次の瞬間――
ダッ!
風のように駆け出す。
「ちょっ、おい待てっ!」
ケイタも追おうと踏み出す。
そのとき。
空気が、変わった。
ひやり、と肌を刺す重さ。
町の外れへ近づくほど、
空気が冷え、重く、濁っていく。
――ドンッ。
地鳴り。
建物の壁が震える。
遠くで咆哮。
「……ライム、嫌な感じしないか?」
(うん……これ、“魔獣”だよ)
「魔獣? さっきのより強いのか?」
(比べ物にならない。ケイタ、警戒して――)
その直後。
轟音。
通りの向こうから、
建物をなぎ倒す巨大な影。
木材が弾け飛ぶ。
石畳が砕ける。
「……あれが魔獣かよ……」
姿を現したのは――
狼の体躯。
岩のような甲殻。
鋭い牙。
ロックハウンド。
しかも四体。
町の人々は凍りつく。
逃げる足がもつれる。
悲鳴。
その中で、ケイタだけが前へ出る。
「ライム……俺、またやれるか?」
(大丈夫! ケイタが思い描けるなら、ボクは形にできる!)
「……よし」
右腕が溶ける。
粘液が硬質化。
ガシャッ。
ガチャン。
袖の中から黒い銃身がせり出す。
右腕――マシンガン。
「うお……ほんとに出た……!」
「これが、俺たちの力か?」
咆哮。
ロックハウンドが突進。
地面が割れる。
「行くぞ、ライム!」
引き金。
――ダダダダダダッ!!
火花。
弾丸が四肢を撃ち抜く。
脚がよろめく。
だが。
甲殻に弾かれる。
「効いてるけど……止まんねぇ!」
(甲殻が厚い……火力を上げよう!)
ケイタが息を呑む。
両手を前へ。
腕がぐにゃりと変形。
内部構造が組み替わる。
左右に、太い砲身。
重い圧力。
――両手バズーカ。




