第五章 縫合宮、第二階層での別離
ケイタは、ゆっくりと周囲を見渡した。
「という訳で、ここが第二層か……なんか、上とは違う雰囲気だな……」
空気が重い。
肌にまとわりつくような違和感。
(ケイタ、気をつけて!何か、異質な気配があるよ!)
「そうなのか?どんな感じなんだ?」
(詳しくはわからない……でも、これは魔獣の気配じゃない!)
ケイタは、チラッと陽毬を見る。
……ルカの頭の上で、熟睡中。
ルカが、ため息をひとつ。
「ケイタ……ケイタさん!」
「なんか……前からくるわっ?」
ミイアの声に、視線を前へ。
――ザワ……ザワ……
遠く、揺れる気配。
「なんか……結構、大群じゃないのか?」
「ライム!また、ブレードはいけるか?」
(うん!ブレードは大丈夫!
でも、複雑なヤツはちょっと難しいかも……)
「うん、それでいい!」
「でも、さっきみたいに、マナを流してくれるか?」
(わかった!やれる!
声をかけてね!)
ケイタは足を止める。
スッ……と腰を落とし、構える。
「いったい、なんなんだ……!」
額に、じわりと冷や汗。
――やがて。
霧の奥から、現れた。
……異様な集団。
その数、数百。
同じ顔。
同じ歩幅。
同じ、無機質な動き。
人型――だが、人ではない。
ただ、ダラダラと。
同じ方向へ、流れていく。
「ケイタさん、なんなの?この人達……」
「まあ、人には見えないけど……」
「さあなっ!でも、こっちには興味なさそうだな?」
「ふっ……おそらく、ガーディアンじゃな」
いつの間にか。
ヒマリが、起きていた。
大あくびをひとつ。
「縫合宮を、守る存在なんじゃろう?」
「なんだよ、起きてたのか?」
「よくこんな状況で寝れるよな?」
「何か変化があれば、わかる!……当然じゃろ?」
相変わらず、ルカの頭の上。
「起きたなら、自分で歩いたら!」
ルカが少しムッとする。
――スルー。
完全スルー。
「コイツらは、ここを守ってるのか?」
「ここというより……守護する“何か”じゃな」
「まあ、異物がおるという事じゃ……わらわ達以上のな!」
「えっ?異物って?」
ルカが食いつく。
「わらわが言った、無礼者達の事じゃ!」
ヒマリの目が、わずかに細くなる。
「まったく……忌々しいヤツらじゃ!」
「そこまで嫌なら、やっつけなかったの?」とルカ。
「いくらわらわでも、確認もせずに攻撃はせぬ!」
少し不機嫌。
「へぇ〜、意外だな?」ケイタがニヤッとする。
「お主!わらわをなんだと思っておる!」
「戦闘狂ではないぞっ!」
ぷいっと顔を背ける。
「で、話戻すけど……コイツら放っておいていいのか?」
「問題ないじゃろ」
「敵対せぬ限りはな……」
言いながら。
ヒマリは、また――うとうと。
(なるほどね……)
ケイタは、集団の背を目で追う。
「でも、ケイタさん……あの人達、どこへ行ってるのかしら」
「さあな?」
一拍。
「……ウォーキング中なんじゃないのか?」
ミイアが、くすっと笑う。
その間にも――
ガーディアン達は、止まらない。
無言の行進。
ただ、闇へ。
ただ、奥へ。
その集団は、静かに――
深い闇の中へと、消えていった。




