第三章 9 ヘリオスの縫合宮へ…… 出発前夜
明日は、ヘリオスの縫合宮へ出発する。
そう決めた。
だから今日は、ティランの村で
ゆっくり休ませてもらうことになった。
ケイタは、ひとり考え事をしていた。
ふと横を見る。
ルカはベッドに潜り込み、
すでにスヤスヤと眠っている。
やはり、今日は疲れたのだろう。
……そして。
ミイアはというと。
眠っている姿勢のまま、
空中にふわりと漂っていた。
まったく。
びっくりする寝相だ。
「あれって……疲れないのかな?」
ケイタがぽつりと独り言をつぶやく。
すると――
「別に、疲れないわよ」
即答が返ってきた。
「えっ!?」
ケイタが顔を上げる。
「なんだ!寝てないのか?」
ミイアは、くすっと笑った。
「私には、睡眠は必要ないの」
軽く肩をすくめる。
「ただ、身体の調整をしてるだけ」
「そうか……?」
ケイタは首をかしげた。
ミイアが、じっとこちらを見てくる。
そして、にやりと笑った。
「なんか……悩み事?」
「いや……別に……」
ケイタが目をそらす。
するとミイアは、
わざとらしく顔を近づけてきた。
「私に興味はあるけど……」
意味ありげな間。
「子供だしな……って考えてるんでしょ?」
思わせぶりな笑顔。
「なっ!?」
ケイタが慌てる。
「何言ってるんだ!」
思わず、顔が赤くなる。
ミイアは、楽しそうに笑った。
「ふっふっふ……」
「隠さなくていいって!」
胸を張る。
「私は、これでも結構大人なんだよ?」
指を一本立てる。
「おそらく、ケイタとは同年代くらいなんだからね!」
「えっ?」
ケイタが目を丸くする。
「そうなのか?」
それは、ちょっと意外だった。
ミイアは、得意げに頷く。
「そっ!」
そして、また意味深な笑顔。
「だから、ケイタの恋愛対象でもおかしくないのっ!」
ケイタは、ふっと笑った。
「……わかった、覚えておくよ」
軽く肩をすくめる。
「じゃあ、その“調整”とやらに戻ってくれ」
少しだけ、微笑み返す。
ミイアが、ぷくっと頬を膨らませた。
「ふんっ……!」
「つまんないのっ!」
そして、くるりと向きを変える。
「じゃ、おやすみ!」
ミイアは再び、
元の姿勢のまま空中に漂った。
ケイタは小さく息をつく。
なんだかな……。
でも。
さっきまで胸の奥にあった重さが、
少しだけ軽くなった気がした。




