第三章 8 ケイタの“スライム変形”が村で問題に
瘴気嵐が収まった後。
ケイタは、半装甲状態のまま
倒れている魔物を運んでいた。
ガシャン、と装甲が軋む。
――その時。
ティラン族の戦士が、目を丸くした。
「その腕……」
視線がケイタの装甲へ向く。
「人間のものではないな?」
シャルナも、真剣な表情で近づいてくる。
じっと観察するように見つめて、
「ケイタさん……」
静かに言った。
「その能力」
一拍。
「スライムと融合していますね?」
ケイタの動きが、ぴたりと止まった。
(やば……!)
内心、冷や汗。
(言い訳できるかこれ……!?)
空気が、少し張り詰める。
その瞬間。
ルカが素早く前に出た。
「ボ、ボクから説明するよ!」
両手を振りながら慌てて言う。
「ケイタは……その、特殊な契約をしてて――」
言葉を探していると。
ふわり。
ミイアがゆっくり起き上がり、続けた。
「この人は」
静かな声。
「危険な瘴気に触れて生き延びるために、ライムと一つになったの」
視線がシャルナへ向く。
「でも」
小さく微笑む。
「悪いことをする気なんてない」
少しだけ肩をすくめる。
「さっきのを見たでしょ?」
ケイタは心の中で叫んだ。
(ありがとう……!)
シャルナは、しばらく考え込む。
腕を組み、視線を落とし――
やがて。
小さく息をついた。
「……わかりました」
顔を上げる。
「あなたが森を救ってくれたのも事実です」
少しだけ口元が緩む。
「我々は、あなたを“仲間”として扱う」
ケイタの肩から、力が抜けた。
だが。
シャルナは、ふっと笑った。
「ただし――」
指を一本立てる。
「変身中に子どもを驚かせるのはやめてください」
「えっ、それは俺のせいじゃ――!」
ケイタが慌てて言い返す。
シャルナは、微笑んだ。
「たった今」
ケイタを上から下まで眺める。
「美少女の姿でアーマード展開していたでしょう?」
ケイタの顔が、一気に真っ赤になる。
言葉が詰まる。
横で。
ルカが腹を抱えて爆笑していた。
・・・・・・・・・・・・
その後。
族長エルネスが、三人を呼び寄せた。
静かな声。
「感謝する」
そして――
少し間を置く。
「……ミイアの肉体の在り処について」
視線がミイアへ向く。
「少し“心当たり”がある」
ケイタとルカは、思わず前のめりになった。
「本当ですか!?」
エルネスはゆっくりうなずく。
「ミイアの肉体は――」
低く続けた。
「瘴気の流れが一点集中している」
「“あの瘴気溜まり”へ運ばれている可能性が高い」
空気が重くなる。
そして。
族長は言った。
「そこは」
一拍。
「古の迷宮――」
ゆっくりと、名を告げる。
「“ヘリオスの縫合宮〝だ」
ケイタが息をのむ。
ついに。
迷宮の名が出た。
ここから――
三人の、本格的な長旅が始まる。




