第三章 7 ティランの村を襲う“瘴気嵐”とミイアの能力
会談が終わる――その直前。
ゴォォォ……。
地の底から唸るような低音が響いた。
村の空気が震える。
シャルナが弓を構え、叫ぶ。
「瘴気の嵐が来る……!」
一瞬で周囲の気配が変わる。
「みんな避難して!」
次の瞬間。
瘴気が暴風となって村へ押し寄せた。
黒い霧がうねり、木々を揺らし、
弱い魔物たちを飲み込む。
そして――
ギャアアアッ!!
狂走化。
目を赤く濁らせた魔物たちが暴れ始める。
ティラン族の戦士たちが即座に動いた。
弓。槍。剣。
森の戦士たちが迎撃に走る。
だが――
「だめだ!」
誰かが叫ぶ。
「瘴気の流れが不自然すぎる!」
暴風のように渦を巻き、
まるで意志を持つように村を叩きつけてくる。
制御できない。
ケイタが叫んだ。
「ライム! 半装甲モード!」
(了解、ケイタ!)
ぐにゃり。
ライムが変形する。
ケイタの身体に、
部分装甲が次々と展開された。
肩。腕。脚。
半透明の装甲が、
煙のように迫る瘴気を弾く。
ドンッ!!
狂走化した魔物を拳で叩き伏せる。
蹴り飛ばす。
だが――
「くっそ……!」
ケイタの歯が鳴る。
瘴気の圧が強すぎる。
「どんだけ強いんだこれ!」
その時。
ふわり。
ミイアが、ケイタの横に浮かんだ。
「……ボク、やるよ」
静かな声。
「ここ、放っておけない」
ケイタが振り向く。
「でも、体が……!」
ミイアは、やわらかく笑った。
「大丈夫」
小さく息を吸う。
「さっきよりは軽いはずだから」
その瞬間。
ミイアの身体が、強く光り始めた。
青い光。
森を照らす。
「――【精流還元・拡式】!」
ドォォォン!!
爆風のような青光が広がった。
村全体を覆う。
瘴気の嵐が――
止まる。
いや。
流れが“書き換えられた”。
暴走していた瘴気が、
一気に。
元の流れへ――戻されていく。
狂走化しかけていた魔物たちが
一斉に動きを止めた。
その隙を逃さない。
「今だ!!」
ティラン族の戦士たちが飛び込み、
槍。
剣。
弓。
次々と鎮圧していく。
そして――
静寂。
嵐は、消えた。
ミイアの光が弱まる。
ふらり。
その身体が――落ちた。
「ミイア!!」
ケイタが飛び込み、抱きとめる。
軽い。
信じられないほど軽い。
ミイアは、か細く笑った。
「だいじょうぶ……」
声が震える。
「ちょっと……使いすぎただけ……」
力なく寄りかかる。
「ケイタ……あったかい……」
その瞬間。
ケイタの顔が、一気に真っ赤になった。
横から、ルカの声。
「ケイタ」
ニヤニヤしている。
「いま“美少女”なんだから」
わざとらしくため息。
「こういうの、ヤバイよ……?」
「う、うるさい!!」
ケイタが思わず叫んだ。




