第三章 5 そして――亜人の村へ
狂走獣の瘴気が散る。
黒い霧がほどけ、
森の空気がわずかに澄んだ。
その奥。
葉の影が、かすかに揺れる。
――人影。
弓を構えた女性だった。
耳は長く、
肌は薄い緑がかった褐色。
弦がきしむ。
矢先は、まっすぐケイタたちへ。
「止まりなさい」
鋭い声。
「あなたたち……何者?」
ルカが慌てて両手を上げた。
「ち、違うんです!」
一歩も動かないようにしながら叫ぶ。
「魔獣退治に来ただけで!」
ケイタも、ミイアも、同じように手を上げた。
女性はしばらく三人を見据える。
険しい視線。
だが――
ふと、ミイアに目が止まった。
そして。
目を見開く。
「その気配……」
弓先がわずかに下がる。
「瘴気を“浄化した”のか……?」
息をつき、
「あなたたち、森の敵ではないのね……」
弦が緩む。
女性は弓を下ろし、
軽く頭を下げた。
「私はティラン族の斥候、シャルナ」
落ち着いた声で名乗る。
「ティランの村へ……少しだけ、来てくれませんか?」
視線はミイアに向いたまま。
静かに続ける。
「この森はいま、理由不明の瘴気の流れで荒れている」
一拍。
「あなたたちが、その原因を探る鍵となるかもしれない……」
ケイタが息をのむ。
ミイアの肉体を探す旅。
それはどうやら――
ただの“仲間探し”では終わらないらしい。
そして三人は。
亜人族ティランの村へと、
足を踏み入れた。
・・・・・・・・・・・・
ティラン族の村は、
巨大な樹木の根元に広がる
緑の集落だった。
太い根が地面を覆い、
その間に住居が組み上げられている。
木と蔓と土。
自然そのものが、家になっていた。
まるで森と溶け合うような村。
案内役のシャルナに連れられ、
ケイタ、ルカ、ミイアの三人は
村の中央へと進む。
やがて。
ひときわ大きな樹の前で足が止まった。
その根元に、
白髪の亜人が静かに座っている。
優しげな目。
だが、その奥には――
森そのものと会話しているかのような、
深い静けさがあった。
族長。
エルネス。
三人を見るなり、
ゆっくりと口を開く。




