第二章 9 ケイタ、正体を打ち明ける
暖炉の火が、ぱちりと弾けた。
その静かな空気の中。
ふと、ルカがケイタをじっと見つめる。
「……ねぇ」
「ん?」
「前から気になってたんだけどさ」
少し身を乗り出す。
「ケイタって……僕が思ってる“英雄像”と、雰囲気そっくりなんだよ」
間。
「でもさ」
視線が上下に動く。
「姿が……その……女の子じゃん?」
ミイアも、くいっと首を傾げる。
「そういえば……ケイタさんって、どうして女の子の姿……?」
ケイタの喉が詰まる。
「うっ」
これは、来ると思ってた。
でも。
言いづらい。
かなり。
「……その、だな」
目を逸らす。
「これは……あんまり、大きな声では言えないんだが……」
二人が、真顔で見つめてくる。
逃げ場なし。
ケイタは、観念した。
「俺……本当は男なんだ」
――沈黙。
数秒。
ルカが跳ねた。
「やっぱり!!」
身を乗り出す。
「絶対そうだと思ってた!声とか仕草とか、違和感すごかったもん!」
「言うな!!」
ミイアはぽかんとした後。
じわっと頬が赤くなる。
「えっ……でも……その……」
視線が泳ぐ。
「かわいいのに……?」
「やめろ!!!それ言うな!!!」
ケイタ、顔を覆う。
ルカが笑いながら肩を叩く。
「でもさ」
少しだけ真面目な顔になる。
「ケイタが男だろうが女だろうが、関係ないよ」
ミイアも、やわらかく笑う。
「うん」
「ケイタさんは……ケイタさんだもん」
暖炉の火が、三人を照らす。
ケイタは、照れ隠しに視線を逸らす。
「……あぁ」
小さく笑う。
「これから、よろしく頼むよ」
ルカが拳を差し出す。
ミイアがそっと手を重ねる。
ケイタも、そこに手を重ねた。
こうして三人は、
初めて“対等な仲間”として向き合った。
⸻
翌朝。
荷をまとめ、
森を抜け、
街道へ出る。
目指すは――バリエスの町。
旅路は思ったより長く、
バリエスへ着く頃には、
空はすっかり群青に染まり、
日も、とっくに沈んでいた。
街の灯りが、静かに瞬いている。




