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第二章 7 新たな刺客、魔人登場

森の奥。


瘴気が、ゆっくりと割れる。


その中から――


ひとつの影。


黒いマント。


赤紫の角。


痩せた体躯。


だが、全身から滲む“圧”が異様だった。


空気が、重い。


ミイアの声が震える。


「まさか……魔人……?」

「それも、デミュートの直属の……!」


魔人は、ゆっくりと三人を見下ろす。


赤い瞳。


乾いた声。


「……ようやく見つけたぞ」


間。


「“欠番の魂”……」


ケイタの心臓が跳ねる。


「俺を……探してたのか?」


魔人の口元が歪む。


笑みとも、痙攣ともつかぬ表情。


「お前には、“戻って”もらう」


一歩、踏み出す。


地面が軋む。


「我らが王――デミュート様の“七つ目の核”としてな」


空気が凍る。


ミイアが叫ぶ。


「やっぱり……!」

「ケイタさんが呼ばれたのは偶然じゃない!」

「ベルモントはまだ“完成”を諦めてない……!!」


魔人が腕を広げる。


バチバチッ――!


瘴気が弾け、森が歪む。


「さあ来い」


「お前を取り込み、“完全なる魔王”が生まれるのだ」


ケイタは一歩前に出る。


無意識に、ルカとミイアを背に隠す。


「……上等だ」


拳を握る。


「俺は誰の部品でもねえ」


睨み返す。


「お前らの好きにさせるかよ」


ライムが、震える。


(ケイタ、カッコよすぎるよ……!)


「来いよ、魔人」


腕が変形する。


装甲が走る。


「俺とライムが、お前を“ぶち壊す”」


戦闘は、避けられない。


『ケイタ、動く!』


次の瞬間。


魔人が、消えた。


――いや、跳んだ。


濃い瘴気を纏い、一直線にケイタへ。


速い。


「ハッ! 雑魚どもよりは動けるじゃねぇか!」


ケイタは両腕を盾形状へ変形。


ガキィィィン!!


火花。


衝撃。


地面が爆ぜる。


重い。


今までの魔獣とは、質が違う。


魔人の爪が伸びる。


ギィィィッ――!


鋭い斬撃。


だが。


鉄甲の盾が受け止める。


衝撃波が森を揺らす。


ケイタの足が、わずかに沈む。


「ふっ……想定以上、か?」


魔人が、低く呟く。


次の瞬間。


距離を取る。


瘴気が渦を巻く。


「だが、目的は果たした」


赤い瞳が細まる。


「貴様の“反応”は確認した」


その視線が、森の奥へ流れる。


「……あとは、もうひとつの核を回収するだけだ」


「核……?」


問い返す間もなく。


魔人の身体が、煙のように崩れる。


瘴気ごと、消える。


残っていた魔獣も、同時に霧散。


静寂。


森は、何事もなかったかのように静まる。


だが――


その静けさは、冷たい。


ケイタはゆっくりと戦闘形態を解除する。


装甲が溶け、美少女の姿へ戻る。


ミイアへ歩み寄る。


霊体は、まだ微かに震えている。


「ミイア、大丈夫か?」


小さく頷く。


「……うん。ごめんなさい。怖くて……」


ルカが横に立つ。


「無理もないよ。あんだけ追われてたら、嫌でも疲れる」


声は、やわらかい。


だが目の奥は、暗い。


ミイアはルカを見る。


安心。


そして、困惑。


眉がわずかに寄る。


ケイタが静かに言う。


「とりあえず……森は危ない」


「どこか泊まれる場所へ行こう。ゆっくり話がしたい」


「……うん」


ミイアが頷く。


三人は、霧の森を後にする。


その背後で。


見えないどこかで。


瘴気が、静かに蠢いていた。




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