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第二章 4 逃走、そして散り散りに

ミイアは、胸を押さえるようにして言葉を絞り出した。


「実験の日……施設が壊れたの」


霧が揺れる。


「爆発で……全部、消し飛んだ」


その光景が、今も瞳に焼き付いているかのように。


「わたしたちは、半分“壊れた身体”のまま逃げて……」


ケイタの眉が寄る。


「壊れた……?」


ミイアは、自分の半透明の腕を見る。


「うん……」


声が震える。


「薬のせいで……」


「“肉体”と“霊体”が、分かれちゃったの……」


静寂。


霊体として存在する理由。


追われ続ける理由。


すべてが、一本の線で繋がり始める。


ミイアは続ける。


「逃げる途中でね……」


「わたしとルカ、それから……あと、ひとり……」


言葉が詰まる。


「ベルモントから、離れられたの」


その名を聞いた瞬間。


ルカの肩が、はっきりと震えた。


「でも……ほかの仲間は……」


霧が、ひどく重くなる。


「捕まったまま……」


ケイタは、慎重に問う。


「ベルモントって……誰なんだ?」


ミイアの表情が変わる。


恐怖。


怒り。


そして、どこか諦め。


「……“創った者”」


短い言葉。


だが、重い。


「わたしたちを」


空気が張り詰める。


ミイアの声は、さらに小さくなる。


「そして……魔王デミュートを生み出した、張本人……」


背筋に、冷たいものが走る。


魔王。


その言葉が、現実味を帯びる。


だが、ミイアはそれ以上語らない。


まるで、口にするだけで何かが壊れてしまうかのように。



沈黙。


霧の中。


「……ねぇ、ケイタさん……」


ミイアが、ゆっくりと向き直る。


その瞳が、まっすぐにケイタを射抜く。


「あなたの気配……」


「とても、似てるの」


ケイタの呼吸が止まる。


「なにに……?」


「わたしたちが、あの日……呼んだ“誰か”に」


ルカがはっと顔を上げる。


「おまえ……まさか……」


ミイアは震えながら続ける。


「わたしたちが……“助けて”って叫んだ相手……」


「あの日、次元を越えて届いた、誰か……」


霧が揺れる。


「その“ぼんやりした影”が……あなたに重なるの……」


ケイタの頭が、真っ白になる。


あの森。


あの声。


あの引きずり込まれる感覚。


ミイアの瞳に、涙が浮かぶ。


「あなたが……」


声がかすれる。


「わたしたちを救った“きっかけ”になったの?」


ドクン。


胸が、強く鳴る。


三人の間で、


何かが、確実に動いた。


運命が、静かに噛み合う。


ここから――


七人の真実。


魔王の誕生。


そして、ケイタの異世界転移の本質へ。


物語は、もう後戻りできない場所へ踏み込んでいく。




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