第5話 俺が選ばないなら、俺が決める
結論から言う。
――俺は、決めた。
「誰も選ばない」
それが正解じゃないなら。
「誰かに選ばされる」
それが地獄なら。
だったら――
俺が決める。
「なあ、神崎」
昼休みの屋上。
俺はフェンスにもたれながら言った。
「一人選べば、このループが終わる可能性があるんだよな」
「うん」
神崎ルイは即答した。
「ただし」
来た。
絶対にただでは終わらないやつ。
「選び方、間違えると
最速で死ぬ」
「優しくないなこの世界」
俺は深呼吸した。
「じゃあ聞く。
今までのループで――」
言葉を選びながら続ける。
「一番、平和だったのは誰だ」
神崎は少しだけ驚いた顔をした。
「……いい質問」
数秒の沈黙。
そして、答え。
「白雪ユキ」
清楚系。
おっとり。
首絞め常習犯。
「理由は?」
「あなたを殺す直前まで、
一番“普通の恋”をしてた」
その言葉は、
妙に重かった。
「つまり」
俺は理解した。
「他のやつらは、
普通じゃなくなったから殺した」
「そう」
……ヒロインが狂う前に選べ、と。
(クソゲーすぎる)
放課後。
俺は、白雪ユキを呼び止めた。
「白雪」
「え? なに?」
いつも通りの笑顔。
今は、まだ。
未来視が反応する。
――教室。
――彼女が泣きながら、俺の首を――
(今日は、そこまで行かせない)
「話、あるんだ」
「うん?」
俺は、逃げなかった。
誤魔化さなかった。
「俺さ」
一瞬、言葉に詰まる。
「……人に期待させるの、嫌いなんだ」
白雪は目を瞬かせた。
「だから」
俺は、はっきり言った。
「中途半端な優しさは、もうやめる」
沈黙。
やっちまったか?
……と思ったら。
白雪は、少し困ったように笑った。
「それ、最初から言ってほしかったな」
――え?
「相沢くんって、
優しいけど、どこか壁あるでしょ」
心臓が跳ねた。
「それ、正直ちょっと怖かった」
未来視が、止まった。
映像が、消えた。
【好感度:安定】
【死亡予測:非表示】
「……え?」
白雪は、頬をかいて言う。
「ちゃんと距離決めてくれるなら、安心するよ」
(好感度、上がってない……?)
いや、正確には――
暴走していない。
神崎の声が、脳裏に響く。
『ちゃんと向き合えば、壊れない』
俺は、初めて思った。
――もしかして。
この世界、
攻略できるんじゃないか?
なおその夜。
未来視は、
別の警告を映した。
――幼なじみが、
――生徒会長が、
――静かに、動き始めている。
どうやら
「一人を選ぶ」という行為は、
他全員を刺激するらしい。
……やっぱクソゲーだな、これ。




