第2話 幼なじみは包丁を持たせてはいけない
結論から言うと――
幼なじみを避けるのは無理だ。
登校してから下校するまで、
篠原ミサキは常に俺の半径2メートル以内に存在している。
「ユートー、今日一緒に帰れる?」
「あ、今日は……用事が……」
「奇遇だね! 私も用事ない!」
用事の有無で奇遇は発生しない。
ミサキは、
・明るい
・距離が近い
・無自覚に距離が近い
という、幼なじみ三大危険要素をすべて兼ね備えている。
そして何より――
未来で俺を刺してくる女だ。
(落ち着け……今は好感度を上げなければいい)
俺は昨夜、必死に考えた対策を実行に移すことにした。
名付けて、
「幼なじみ非モテ作戦」。
作戦内容はシンプル。
目を合わせない
会話を広げない
優しくしない
期待させない
要するに、
感じの悪い男になる。
「ねえユート、昨日のドラマ見た?」
「見てない」
「そっかー、結構面白くてさ」
「ふーん」
「……」
よし。
会話が死んだ。
これは成功だろう。
――と思った瞬間。
【未来視:発動】
夕暮れのキッチン。
エプロン姿のミサキ。
手には――包丁。
「料理、作ってあげたかっただけなのに……」
刺される俺。
【好感度:上昇】
「なんでだよ!?」
思わず小声で叫んだ。
無視したのに!?
冷たくしたのに!?
なぜ好感度が上がる!?
「え、ユート? どしたの?」
「い、いや……なんでもない」
ミサキは少しだけ不安そうな顔をして、
それから、いつもの笑顔に戻った。
「最近、ユート大人っぽいよね」
――やめろ。
その評価は命に関わる。
(ダメだ、この路線は逆効果だ……)
俺は方針転換を余儀なくされた。
次の作戦。
「嫌われムーブ」。
昼休み、俺は思い切って言った。
「なあミサキ」
「なに?」
「俺さ……正直、お前と一緒にいると疲れる」
一瞬、空気が凍った。
しまった。
言い方を間違えたか?
だが、ミサキは――
「……そっか」
少し寂しそうに笑った。
胸が、ちくりと痛む。
(いや、ここで情に流されたら終わりだ)
その瞬間、
視界が再び揺れた。
――夜の公園。
泣きながら、俺に抱きつくミサキ。
「それでも好きだよ、ユート」
首元に、刃。
【好感度:MAX】
「MAX行くなあああ!!」
「ちょ、急に大声出さないでよ!」
完全に逆効果だった。
どうやらミサキは、
傷つく=恋心が深まるタイプらしい。
詰んでいる。
放課後、俺は一人、机に突っ伏していた。
(幼なじみ強すぎない? 難易度高すぎだろ……)
すると、背後から声がした。
「相沢くん、元気ないね」
振り返ると、
そこには清楚系ヒロイン――白雪ユキ。
(まずい、次の刺客だ)
「だ、大丈夫」
「無理してるでしょ。相談なら聞くよ?」
優しい。
優しすぎる。
その瞬間、未来視。
――教室。
俺の首を絞める白雪。
【好感度:上昇】
(ああもう!)
俺は悟った。
この世界で生き延びるには、
誰にも好かれず、誰も傷つけず、誰とも関わらない。
……それ、
学校通えなくない?
こうして俺の
「非モテによる生存計画」は、
開始二日目にして破綻した。
なお――
明日には生徒会長が動くらしい。
未来視が、そう告げている。




