雷が効かないらしいけど、ボクの手裏剣はどうだろうね
投稿遅れてすいません。
完全に忘れてました。
明日こそは22時30分に投稿します
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リーダーの前に立ち塞がった蓮は爆薬搭載型棒手裏剣を構えると片足を浮かせる。《空渦》の際に用いられる独特の所作だ。
「君、雷が効かないらしいけど、ボクの手裏剣はどうだろうね」
「はっ、たかが質量攻撃程度…同じように効く訳ないだろうが!」
蓮の棒手裏剣を前に臆することなく突っ込むリーダー。けれど蓮の棒手裏剣は爆薬搭載型だ。只の質量攻撃ではない。つまり、左近の徹甲苦無と同様にナイフで切り払おうとしても無駄。切り払った傍から手裏剣に内蔵された爆薬が起爆する。
リーダーは爆発をもろに食らい黒煙に包まれる。
だが――、
「倒せては、いない、か」
「間違いなく脅威ではあったがな。お陰で頭が冷えた。今さっき高熱を浴びた筈なのに、だ。体内に搭載された冷却ジェネレータのお陰かな」
冗談のつもりか、笑みを浮かべている。けれど、脅威というのは強ち間違ってはいないのだろう。体の動きが先ほどと比べ、若干だがぎこちない。間違いなくこちらの攻撃は有効だ。
ならば――、
「手は緩めない!」
次々と棒手裏剣を飛ばす。けれど、先程は爆発という意識外の攻撃、初見殺しだったからこそ、攻撃を通すことが出来た。今回はそう簡単にはいかない。
リーダーの肩から小型の針が四方八方無作為に飛び出す。
そして、胸が青く光ったかと思った次の瞬間、稲妻が走り、棒手裏剣を撃ち落とした。目が眩むような青の閃光。けれど蓮は確かに見た。
雷が指向性を持って針へと収束していくのを。恐らく肩から飛び出した針には避雷針のように雷を誘導する役割があるのだろう。仮にこれを屋内で使ったとしたら壁や天井に突き刺さり、雷の檻を形成した可能性が高い。けれど、今回は屋外での使用であった為に壁や天井に突き刺さることが無く、棒手裏剣を撃ち落とした針は役割を終えて地面に転がり落ちた。だからこそ、第二射を気にする必要は無い。
けれど――、
「驚いたか?何も雷を扱うのはお仲間の専売特許じゃはない」
雷を纏うという特性は厄介だ。
少なくとも近接戦は挑めない。
蓮はリーダーを近づけさせないために棒手裏剣を投げる。それをリーダーは左腕に搭載した折り畳み式のラウンドシールドで防いでみせる。そう何度も防げるものではなさそうだが、近づけば向こうの勝ちだ。壊される前に接近戦に持ち込もうとするだろう。
近距離戦は蓮が不利、けれど、今の距離は蓮が有利だ。それはお互いの共通認識。だからこそ、リーダーはバーニアを使い尋常ではない速度で接近を試みる。勿論蓮とてそう簡単に接近は許さない。再度棒手裏剣を投げて動きを止めようとする――が、方向転換用のノズルと巧みな姿勢制御によって無事方向展開を成功させて回避する。
(このままだと不味い。細い路地か、せめて大通りに移動しないと!)
攻撃を防がれるのはまだいい、爆発の衝撃で後ろに吹き飛ばされるため、動き自体は止められる。だが縦横無尽に走り回られて攻撃が当たらないという状況に陥ればいよいよ勝ち筋が無くなる。
蓮は建物から飛び降りる。仕込んでいた布を広げ、むささびの術でここよりも狭い場所へと戦場を変えようとしていた。
「面白い!空飛ぶ獲物を狩るのは初めてだ。」
リーダーも蓮の後を追う。速度は向こうの方が上、けれど、向こうは棒手裏剣を警戒しなくてはならない。対してこちらは――そこまで考えた所で脇腹にリーダーの拳が突き刺さる。
直ぐ後ろにリーダーがいるという訳じゃない、リーダーの腕が前腕部の中程から切り離され、ワイヤロープで延長されているのだ。
「ぐっ」
姿勢を崩し、空中で錐揉みする。直ぐ下はコンクリートで施工された大通り、無防備に落ちれば只では済まない。
蓮は何とか空中でバランスを整え受け身を取った。たが、直ぐ近くにリーダーが落ちてくる。それも受け身を取らず、仁王立ちの姿勢で。
こちらは体中痛くて仕方がないのに、向こうはまだまだ戦えそうだ。正に絶体絶命。けれど、落ちた場所自体は案外悪くなかったかもしれない。蓮はリーダー――ではなく、その近くにあった鉄骨工事中の建物目掛けて棒手裏剣を放つ。爆発の衝撃で鉄骨が崩れ、リーダーを襲う。
しかし――、
「ははは、さっきの奴よりはレパートリーがあって面白い!」
大した痛痒は与えられていなかった。
こちらは先程の怪我もあって思うように動けないというのに、蓮は舌打ちを一つする。
近づかれる訳にはいかない。馬鹿の一つ覚えのように棒手裏剣を放つ。牽制であると同時に決定打になって欲しい一撃。蓮は今まで見せていなかった棒手裏剣のもう一つの機能を披露した。
棒手裏剣は後部から火を噴きながら、猛スピードでリーダーへと迫る。ロケット花火なんてちゃちな代物じゃない。噴き出す炎は流星群やスペースシャトルを想起させるほどに太く、長く、世界というキャンバスに天色の線を引いていく。
速度はノズルに火が灯った時点で音を追い越す。まず間違いなく、人類では反応の出来ない不可避の一撃。
問題は推進剤として爆薬を使用してしまうため、爆薬搭載型棒手裏剣の本来の狙いである爆発によるダメージを与えられないことだが、それに関しても工夫を凝らした。
リーダーの盾がけたたましい衝突音と爆発音をあげながら破損する。
確かに棒手裏剣内部の爆薬は使い果たしてしまったが、それならば外に別の爆薬を括りつけてやればいい。
目論見は上手く行きリーダーを――、
「見掛け倒しか?
いや、棒手裏剣の威力は見事だったが、爆発は大したことが無かったな。別の爆薬を使ったのか?」
――服の一部が破れ、露出した体も一部煤けているが、ダメージというダメージは見られない。
「俺がお前を警戒していたのはお前の武器が持つ爆薬の性能の高さによるものだ。それを捨てたお前は怖くない。」
「…試してやろうか?」
「ああ、構わん」
蓮はもう一度、棒手裏剣を放つ。棒手裏剣は火を噴き再度リーダーへと迫る。
しかし――リーダーの体が電撃に包まれた瞬間、棒手裏剣はリーダーの体の表面、その数センチ先で滑るように方向を変えた。
「なに!?」
「電磁装甲、この機構によって俺に物理攻撃の殆どは通用しない。」
どうやら、ハッタリでは無かったらしい。蓮はそう思いながらも、方針を決める。
噴射機構を使った超音速の一撃が効かないのなら、使わなければいい。幸い、爆発事態は効果がある。既に左腕の盾も破損している。こちらに分がある。
ここで決める。出し惜しみはしない。蓮は《空渦》を使い、所持している全ての棒手裏剣を叩きこむ。
「そうでなくてはな!全噴射機構起動」
リーダーは体の各部に搭載されている噴射機構を全て起動し、猛スピードで接近してくる。
更に、右腕からは折り畳み式のラウドシールドを展開している。左腕に仕込んでいて、右腕に仕込んでいない道理はない。
それでも、棒手裏剣の爆発を無傷で防ぐことは不可能だろう。盾の面積から考えても、強度の面から考えても。
実際その予測は正しかった。
リーダーの体には幾つもの罅が入り、所々で火花が散っている。問題は――、
「さて、次はどうする!?」
それでも、動きを止めないことだ。噴射機構も右足と左足は依然として健在。
蓮はせめてもの抵抗に拾っておいたリーダーの避雷針を投げる。
けれど、手元が狂い針はリーダーの横を通り抜けた。勿論当たったとしても大した痛痒は与えられなかっただろうが…。
そして、ついに戦いは白兵戦の間合いへと移る。
リーダーが振り上げた拳がゆっくり見えた。
棒手裏剣は、尽きた。回避は不可能。手持ちの爆薬は効果がない。徒手空拳?電撃を纏えるサイボーグ相手にそもそも触れられるのだろうか?
万事休す。
「この瞬間を待っていた。」
その声はリーダーの口から発されたもの。
――では無かった。
蓮の口から、言葉が漏れる。蓮とは違う誰かの声が。
何時から持っていたのだろう。手には反り返った忍者刀を携えている。
そこで、リーダーは全てを察する。この戦いの絡繰りを、否、敵の策、と言った方が正しいか。
「成程、俺を無警戒に近づけさせるために一芝居打ったのか」
左近の持っていた攻撃で最も恐ろしかったのは近接での抜刀術。一方蓮との戦いで気を付けなければいけないのは棒手裏剣による爆発攻撃、つまり中距離戦だ。
だからこそ、リーダーは接近戦に持ち込むことに躍起になったし、近接での警戒を怠った。
――それこそが蓮の、否、変装術で蓮に扮した左近の狙いだった。
《秘術・霆撃雷鈷》
雷が閃く。
それと同時にリーダーの胴――いや腕が切り裂かれた。
「まだだ!」
リーダーは背中からワイヤーを射出し、巻取り機能で後ろに下がっていた。これにより致命傷を避けたのだ。
戦いはまだ終わらない。
「いや、終わりじゃよ」
左近が人差し指を向けると、雷がリーダーの体を打った。左近はリーダーにワイヤーを巻き付けて――いない。
そんな隙は無かったし、あったとしても直ぐにばれるだろう。
ならば、何故――、
その答えはリーダーの直ぐ後ろにあった。
「…避雷針、か」
そう、手元が狂ったように見せて後ろに放った避雷針に左近の雷撃が引き寄せられたのだ。
とはいえ、今までなら雷はリーダーに効かなかった。何故聞いたかと言えば――、
「やはり、体の内部まで絶縁仕様という訳では無かったようじゃな。まぁそこは賭けじゃったが…」
腕が斬られたことで内部の生体パーツに電気が流れてしまったのだ。
こうして、左近とリーダーとの戦いは幕を閉じた。
因みに本編で語ることのない割とどうでもいい内容なのでここで書いちゃうんですけど、左近はリーダーの電撃攻撃を屋内用の武装と判断しましたが、実際はロケランやグレランを撃ち落とすためのバリバリ屋外武装です。
というか、リーダーの武装は全て近接戦闘に持っていくためのものです。




