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アルタイルの終生 〜 後悔の人生、今世で優しくやり直す~  作者: 葛西 
第一章 ルーヴァ村

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第四話 日常

これは日常生活です!

少し長いですが、分けて読むことが出来ます!

ですので是非読んでみてください!


アルシラに説教されていた俺は謝り終わると、焦げた匂いが玄関にふんわり漂っていた。

玄関の前で俺はそっと固まる。

(あれ、火消したっけ…..)



アルシラも鼻をクンクンさせて、眉を寄せた。


俺はダッシュでリビングに向かい台所へと目を向けた。

すると、フライパンの中では白身が茶色く焦げ目玉焼きとは程遠い何かだった。

(……やっべ)


「アル!!」

玄関の扉がバタンと閉まり、アルシラがこちらへと駆け寄ってくる。


焦る俺。

(えっと、えっと)

「何やってるのよっ!!」


アルシラが駆け寄り、俺の手からフライパンを取り上げる。

「こんな小さな子が火を使うなんて…危ないでしょう!?」


「なんだ、なんだ」とプロキオが頭を掻きながら階段を降りてきた。


「アルが、火を使ったのよ」

「おぉ、そうかアルも大きくなったもんだ」


「でも、まだ早いな、危ないぞアル。ただアルは水系だから少しの火くらいならすぐ消せそうだけどな」

とこちらは呑気そうだ。


思わず、ポロリと声が出た。

「ごめんなさい……」

アルシラは一瞬固まる。

目を細め静かにため息をつき、やがて小さく笑った。


「……まったくもう。驚かせないでよ、アル」

俺はホッと胸を撫で下ろす。まだ、アルシラの目の俺は子供のままだ。

「料理は…もう少し大きくなってからにしましょうね?」


俺はうなずき、じっとフライパンを見つめる。部屋には焦げの匂いがまだ残っていた。



〜プロキオとの軽い訓練〜

朝食後、アルシラの目を盗んで裏庭へ。プロキオが用意してくれた木剣を手に、俺はドキドキしながら立つ。

「ちゃんと持てるか?」


プロキオは優しくも鋭い目で俺を見る。剣士の顔だ。

「こ、こう……?」


よろよろの腕で木剣を握る俺にプロキオは軽く頷いた。

「握れるようになったな!でも自分が剣を持ってるってことを忘れちゃだめだぞ」


俺は小さくうなずき木剣を振ってみた。

が、当然ながらよたよたで、遊んでいる子供にしか見えない。


その時プロキオが笑いながら話しかけた。

「いろんな場面において、魔法使いも強いが剣士も強い。なんでか分かるか?それはな…...体に命脈流といのが流れているんだ。この命脈線を強くすると体に流れる」

そういってプロキオが俺に手首を見せる。

(おぉー!手首が青く光ってる)


「すげぇだろ!」

「うん」


でも前世の俺から言わせてもらうと、剣士よりも魔法使いの方が強そうだなー、剣士ってほら剣振るだけだし。魔法なんて手から炎とか出せるイメージだし。


命脈線があるからっていってどのくらい変わるのかがよく分からないけど。



「だからなアル、これを強くしないといけない。強く流れるようにするには、鍛える事。頑張ろうな」

「はい!」

(命脈線か、おもしろそうだ)



「唐突だけどさ、俺としては優しい男でかっこいい男になってほしいんだよな。あんまアルの前でも言うのもアレだけど」

「学園っていう場所があるんだよ。学んだりする場所が、そこでもし誰かにいじめられてもやり返せるだけの力があって欲しいんだよ」

それは悲しそうな声なのに、優しさも混ざっていた。


(学園。それにいじめね……学校のことだよなー。行きたくないなー。いじめられたりしたのかな)


俺はそっとプロキオの目を見た。

すると目があったように思えたけれど、プロキオの眼は遠くを見るような目で俺を見ていた。


言葉が詰まったのか、喋る言葉が見当たらなかったのか自分でもよく分からないが、

「うん」

としか答えることができなかった。


そんなプロキオは俺を見て言う。

「まぁそんなのどうでもいいよな、じゃ、まずはだなー」

そう言って、木剣を空中で回す。


そんな時だ。

「ちょ、ちょっと! 何やってるの!?」


アルシラの怒声。

手には濡れた布巾。リビングの窓から飛び出してきた。

「また危ないことさせて!」


俺はびっくりして木剣をぽとん。プロキオが「本物じゃないし、軽いし」と弁解するが、アルシラの眉間のしわは消えない。


「アル!!危ないことはダメよ。剣はもうちょっと大きくなってからでいいの」


「は、はい!」

俺はコクンと頷いた。

プロキオは頭をかき、「撤収だな」と笑う。

俺の初めての特訓はあっという間に終了した。



〜はじめての言葉〜

「あ、あれ?」


俺はふと、棚に並ぶ本を指さしてみた。

最近、アルシラが「そろそろ喋ってもいい頃かしらね」なんて笑っていたのを思い出したのだ。

一歳半。

“あいー”とか“まま”とか、簡単な声はちょっと出してる。でも、少しくらいなら……もう“言葉”を口にしても不自然じゃないはずだ。


試しにと声を絞り出す。

「……おか、あ……さん……」

まだ舌がもつれるような発音。

わざと“幼児っぽさ”を残して言った。


アルシラが振り返る。目を見開き、次の瞬間にはぱあっと表情を輝かせた。

「アルタイル!いま“お母さん”って言ったのね!?」


俺はにこっと笑ってごまかす。いや、本当はもう普通に喋れるんだけど、ここでペラペラ言ったら怪しまれる。

「すごいわ……! あなた、天才かもしれない!」


アルシラは両手を合わせて喜んでいる。その声に胸が少しだけ温かくなる。

驚かれるより、喜ばれるのは……悪くない。


アルシラは今度、棚の上から真っ赤な林檎を取り出して見せてきた。

「じゃあ、これは?」


ちょっと迷ったけど、子供っぽく声を出してみる。

「……ん、ご」

アルシラはくすっと笑い、「りんごよ。惜しいけど、とっても上手」と優しく頷いた。


その顔を見て、胸の奥がきゅっとなる。

……きっと、前の人生でも。俺が小さい頃にこうやって言葉を発したら、お母さんは同じ顔をして喜んでくれてたんだろうな。



「アル? どうしたの?」


「なんでも……ない」

しまった。ちょっと調子に乗って、自然に言葉を出してしまった。

だがアルシラは何も疑わず、ただ優しく頭を撫でてくれた。

「ふふ、喋れるようになってきたわね。アルのペースで頑張って」


その声に、胸がほんの少し痛くなる。

喋れないふり、子供のふり。

けれど、そろそろ……“喋れる子”を演じていかなくちゃいけない。


余談だが、こんな感じで俺は日々を繰り返してキチンと喋れる子供になっていったのだ。




〜近所の子との接触〜

昼下がり。

庭の裏門の影にしゃがみこんで、空をぼんやり眺めていた。

ほんの少しだけ自由を味わいたくて、アルシラの目を盗んだのだ。

「なにしてるのー?」


突然、声が降ってきた。

振り返ると、俺より少し年上くらいの女の子。陽に透ける茶色の髪のショートで、ぱっちりした目でこっちを見ている。とても可愛らしくて大人の上品さもある。美少女という言葉がとても当てはまりそうな女の子だ。


(それよりもま、まずい……! 子供と接触!?予想外すぎるぞ!)


慌てた俺は、とりあえず“幼児らしさ”を前面に出すことにした。

口を半開きにして、目をぱちぱち。……そう、まだ喋れない子を演じるんだ。

「……あれ? おしゃべりできないの?」


女の子は首をかしげる。でも、すぐにニコッと笑った。

「あたし、カレン! お兄ちゃんとお屋敷で住んでるの。あなた、ここの子?」


(……どうする。黙っとくか……? いや、でも……)

「……か、く……れんぼ」

つい、口から出てしまった。


「えっ!? しゃべれたじゃん!」


カレンが目を丸くし、次の瞬間ケラケラ笑い出した。

「かわいい〜! ちょっとびっくりしたけど! ねえ、かくれんぼしよ!」


俺は思わず頬がゆるむ。なんだ、この子。勢いがすごい。


カレンは気づいたように近くに居た小さな女の子に手を振って、こちらに呼んだ。

「こっちきてー! 一緒にやろ!」

「う、うん!」


その女の子の名前はセーラというらしい。

髪は金髪のハーフアップでとても上品な雰囲気があった。

この女の子も加わり、三人でかくれんぼが始まる。

「じゃあ、あたしが鬼ね! いーち、にー……」


その間に俺は、必死に短い足で植木の陰に隠れた。

(……なんだろう。懐かしいな、これ)

前の人生では、こんな遊びをした記憶なんてほとんどない。

けれど今、胸の奥がほんのり温かい。

「みーつけた!」


カレンが満面の笑みで飛び出してきた瞬間、俺はつい笑ってしまった。

 言葉を覚えたふり。

 幼いふり。

 ずっと演じてきた。

 でも、このときだけは。

そんなことを忘れて、ただ一緒に笑えた。



〜夕食の準備とプロキオの帰宅〜


 日も傾き始めた頃、俺はまたキッチンに戻っていた。


なぜさっき怒られたのに料理するのかって?

暇だからだよ!


そう幼児は暇なのだ!


 小さな椅子の上に立ち、背伸びして作業台に手を伸ばす。

(もう火は使わない。……今度はちゃんと、安全に)

 さっきアルシラに叱られたのは、しっかり反省している。

 だから今回は包丁も火もなし。


 食パンにバターを塗り、薄切りのトマトを乗せ、ちぎったハーブをぱらり。

「うん。見た目は、悪くない……かな」


 こういうのも料理だよな。

 “大人は、手間をかけずに美味しいのが一番”

というばぁちゃんが夕方の井戸端会議でよく耳にした言葉を、なぜか鮮明に思い出していた。

 そんなときま。


「ただいま」

 玄関の扉が開き、低く響く声が家を満たした。

 プロキオの帰宅だ。

(……ほんと、“剣士”って顔してるな)


 仕事姿のまま現れたプロキオは、がっしりとした体格に汗の匂いをまとい、食卓へと入ってくる。

 俺の小さな手じゃ到底届かない剣帯を腰に下げている姿は、まさしく冒険譚の主人公そのものだった。

「お、これは……アルが作ったのか?」


 プロキオがパンの皿を手に取る。

 優しいけれど、どこか困ったような目をして。

「いや…..これはその、ちょっと……やってみたくて」

 自然に言葉が出た。

 意識せずに、喋ってしまった。


でも、プロキオは自然と接してくれた。

(もう喋ってもいいのかもしれない。)


「ふむ……見た目は悪くないな。味は――」

 プロキオが口に運ぼうとした、その瞬間。

「子供に料理なんてさせないでください!」


 アルシラの鋭い声が割り込んだ。ぱたぱたと駆け寄ってきて、プロキオの手をぴしゃりと止める。

「こんな危ないことさせて!もし火傷でもしたらどうするつもりよ!」


「いや、火は使ってないようだぞ? 見たところ……バターとトマトに、これは……バジルか?」


「問題はそういうことではありませんっ!」

アルシラの眉が寄せられる。その視線がプロキオから俺にやってくる。叱っているというよりも、心配と驚きが混ざった複雑な目。


「アル…..なんだか成長が早いわね」

(やば……バレる!)


 あわてて椅子から降りようとした、その拍子に――

「わっ!」

 足を滑らせ、床に尻もちをついた。

「アル!」


 二人の声が重なり、すぐに駆け寄ってきた。

 慌てて抱き起こしてくれるプロキオと、心配そうに覗き込むアルシラ。

 その顔を見て、少しだけ笑ってしまった。

(……あはは、これが“家族”ってやつか)


 お尻はちょっと痛かったけどそれ以上に胸の奥がじんわり温かかった。

 その後の夕食はアルシラが整え、パンはプロキオがこっそり食べてくれた。


 食卓には野菜スープと焼いた肉柔らかい白パンが並ぶ。俺はたまにスプーンがうまく使えなくて、こぼすこともあるけれど二人は何も言わずただ笑って見守ってくれていた。


「……焦げ臭さも、ようやく消えたな」

 プロキオの冗談めいた呟きに、アルシラがくすっと笑う。


「もう、あなたまで……」

 ふと、俺は天井の梁を見つめた。

 さっきまで漂っていた焦げの匂い。それは、今日という一日のささやかな証拠のような気がした。



〜忙しない一日の夜〜

 食後は家族でリビングに集まった。

 プロキオは剣を布で磨き、アルシラは膝の上で毛糸を編んでいる。

 俺はというと、ぬいぐるみを抱えて横になり、ぼんやり二人を眺めていた。

(……穏やかだな)


 転生して、赤ちゃんから幼児になって。

 それでも、こうして家族と過ごす夜は――温かい。

 前世では決して得られなかったものが、ここにはある。


そういえばプロキオはなんの仕事をしているんだろう。剣士ぽい服装ではあるから


んー、前世で読んだラノベとかだったら魔物討伐とか、それとも殺し屋?!


いやないない。どっからそうなるんだ。流石に漫画の見過ぎだ。

けれど、剣を使う仕事って他にあるだろうか……


と、その時。

アルシラの声が優しく響いた。


「そろそろ寝ましょうか」

 

 プロキオが剣を片づけて立ち上がり、俺をひょいと抱き上げた。その大きな腕にすっぽり収まると、胸の奥がじんわり温まる。

「少し、重くなったな」


 寝室へ運ばれ、毛布の上に降ろされた瞬間、瞼が重くなった。

「おやすみ、アル」

 プロキオは短くそう告げて出ていく。


 代わりにアルシラが椅子に腰を下ろし、俺の額にそっと手を置いた。

「今日も、よく頑張ったわね。……ほんと、手のかかる子」

 叱るようでいて、甘やかすようで。

 その声音にこめられた愛情は、疑いようもない。

(甘えてるかもだけど、手のかかる子供っていいな。愛されてるって感じるから……)


 意識が闇に沈んでいく。

 アルシラの温もりに包まれながら。



誰も気づかないけれど、部屋の片隅に、ほんのかすかに。昼間の焦げた匂いだけが、まだ残っていた。








どうも葛西です!


余談ですがプロキオはアルがしゃべった時、普通を装っていましたが、内心はしゃべった?とびっくりしています。

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― 新着の感想 ―
個人的に、アルタイルの「おとたま」が可愛かっです。 冗談ですが、言われてみたいですね笑 今後の展開、アルタイルの成長と活躍が気になりました。 水と風……いかにも王道的な展開の予感。 学祭編が楽…
冒頭、異世界転生の王道の流れから、転生する様子が非常に丁寧に描かれている印象でした。そこからですが「この赤ちゃん天才すぎー!」と言いたくなるほど喋ったり特訓したり料理に挑戦したり…笑 これは、成長し…
とてもハラハラする日常ですね。(親目線) (*´ω`*)
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