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アルタイルの終生 〜 後悔の人生、今世で優しくやり直す~  作者: 葛西 
第二章 学園編

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第四十五話 旅の途中


えーということは野宿かー!

「ふざけるなよ!」


アルは木陰に腰を下ろし、両手で顔を覆った。夕暮れの森はすでに薄暗く、風がひんやりと頬を撫でる。火も焚かず、宿も取れないことを知った瞬間、体中の力が抜けたような気がした。

「お金がないってシリウス……どうするんだよ、こんな夜に!」


「坊ちゃま……申し訳ありません。私お金というのを忘れておりました」

「なにそれ、ダメじゃん!」


カリナは少し拗ねた表情で、腕を組んでいる。

アルは夜空を見上げる。森の中で、星々が静かに瞬いていた。

「仕方ない、野宿だな……」アルは覚悟を決めた。

「ええー……」カリナは膝を抱えてぷいっと顔を背けた。


シリウスは落ち着いた声で答える。

「坊ちゃま、野宿は決して悪くありません。自然の中で生きる力を学ぶ良い機会です」

「いやいやいや! 俺ら今日から冒険者のはずでしょ!それなのにいきなり野宿って、どういうことだよ」

アルはドンと地面に座った。

カリナはふてくされながらも、少し楽しそうな顔をしてつぶやく。

「まあ……野宿も面白そうかも……」

「面白そう……だと……?」アルは目を丸くした。


森の小さな空き地に火を起こすことにした三人だったが、火起こしは想像以上に難しかった。

「アル、マッチはどこ?」


「シリウス……マッチは……あれ?」

「坊ちゃま、どうやら忘れてきたようです」

「なにそれ……お前……!」


木の枝をこすり合わせて火を起こそうとするが、火花は飛ぶもののなかなか燃えない。

カリナがついに堪忍袋の緒を切らし、大声をあげる。

「えーい! どうなってんのよ、火! さっさと燃えなさいよ!」


アルも必死で枝を擦る。スリップして顔面を枝にぶつけ、痛みで大声を上げる。

「いでっ! くっそ……なにこれ……!」


シリウスは冷静に見守るだけだ。

「坊ちゃま、力任せではなく、摩擦と角度を……」

「うるさい! 今はそれどころじゃねぇ!」


三人は汗だくで枝と格闘した。スライムの群れのバトルよりも過酷で、笑いながら泣きそうになる。

「カリナ、手伝え!」


「はいはい、任せなさいよ……」

カリナが枝を抑え、アルが擦り、ようやく火がパチパチと音を立てて燃え始めた。

「やったー!火がついた!」


「ふぅ……やっと落ち着くな」アルは肩で息をしながら火を見つめる。

「坊ちゃま、これで夜も少しは暖かく過ごせますね」

「ありがとうシリウス……でも次は絶対マッチ持ってくるぞ」

カリナは火を囲みながら、楽しそうに笑っていた。

「野宿って、なんだか冒険って感じだね!」


アルも小さく笑った。

(……やっぱり、カリナはこういう時が一番楽しそうだな……)


火を囲み、少し落ち着いた三人。アルはカリナと隣り合い、シリウスは少し離れて警戒を兼ねて火の番をしている。

「ふぅ……やっぱり野宿って大変だな」

「でも、なんだか冒険してるって感じで楽しいじゃない」カリナが頬を紅潮させながら笑う。

「お前……本当に戦いもそうだけど、こういうのも楽しむタイプだな」

「そうよ! 楽しまなきゃ損でしょ?」


アルはふと、森の向こうに小さく光る星々を見上げる。

(そういえば、レントは……弟は今頃どうしてるんだろう……)

「親にも、レントにも会いたいな……」アルは小さく呟く。

カリナはアルの隣に寄り、少しさみしそうに言った。

「うん……会いたいね」

火の揺れる明かりの中で、二人の影が重なる。夜風に揺れる木々の音が静かに包む。

「それに……あいつら、俺らのこと気づいてるかな」

「どうだろう……でも、きっとみんなも楽しんでるんじゃない?」


アルは少し微笑む。平凡な学園生活を送るコピーたちを思い浮かべると、少しだけ安心した気持ちになる。

その時、森の暗がりで小さな動きがあった。

「……ん?」アルが声をひそめる。

「坊ちゃま、少々気配が……」シリウスも身を低くする。

青い影がもぞもぞと近づいてくる。小型のスライムだ。火の光を浴びて半透明に光る体がふにゃふにゃと動く。

「ひぃっ!? またスライム!? まだ夜なのに出てくるの!?」カリナが剣を掲げる。


「さっきよりは小さいな……」アルも剣を構える。

小さなスライムたちは無邪気に跳ね回る。大きな脅威ではないが、油断すると複数に囲まれかねない。

「私が先に……」カリナが嬉々として突撃する。

アルはため息混じりに笑った。

(……やっぱり戦いが好きすぎるな、この子)


カリナの剣がスライムを一閃。ぷるぷると震えながら消える。アルも手を伸ばし、残った一匹を蹴り倒す。

「これで全滅……っと」

「坊ちゃま、少し油断なされぬよう」シリウスが冷静に注意する。

「うん……わかってる」アルは肩をすくめる。

戦いが終わった後、三人は火の周りに戻る。静寂が戻り、森の夜が深まる。


「ねぇアル……」カリナが小さな声で言った。

「なに?」

「私、こういう冒険って……すっごく楽しいんだよね」

「うん……俺もだ」アルは小さく笑い、火を見つめた。


火の揺らめきが二人の顔を赤く照らす。森の奥、虫の音と木々のざわめきが優しく夜を包む。

「坊ちゃま……やっぱり、こうやって戦うと、怖くはないのですか?」シリウスが静かに言う。


アルは少し考え、頷いた。

「そうだな……でもカリナとシリウスといると安心だ。それに楽しい」

「ふふん、でしょ?」カリナは満足げに胸を張る。

「……カリナは、本当に戦いが好きすぎるよ」アルは笑いながら剣を背に戻す。


その夜、三人は火を囲みながら星空を見上げた。

オレンジ色に沈む夕陽の残り光が、茜色から紺色に変わる空を照らす。最初の一番星がひっそりと輝き始めた。

「ねぇ……アル、コピーたちが過ごしているその時間の私たちはその時間を味わえない。けれど私達は私達の冒険を楽しもうね!」カリナが小さく笑う。

「もちろんさ……だからこそ、俺らの冒険を楽しむんだ」

三人の影が森の中に静かに揺れる。明日からまた新たな冒険が始まる。

アルは心の中でそっと誓った。

(……どんな困難が待っていようとも、この仲間となら乗り越えられる)


森の夜風が髪を撫で、虫の羽音と火の揺らめきが静かに重なる。

野宿の夜は、初めての冒険の一歩として、三人の心に小さな温もりを残した。

その夜、野宿の森で三人は少しずつお互いの距離を縮めていった。

シリウスはというと食事の手際も良く、火の管理から水の確保まで完璧にこなす。

「完璧だな。やっぱりお前は執事だ」

「はい!私は主人様の為にいるのでございます」

「あ、はい」ちょっと引いた俺だった。


でもやっぱり現代人だった俺にとって野宿はきついよ…..

アルは膝を抱えてため息をつく。「俺たちのコピーは、暖かい部屋でぬくぬくしてるってのに……俺らは野宿……はぁ、」

「大きなため息ね」

「そりゃーね、シリウスがお金でも持ってきてればなーなー」

「す、すみません。私としたことがお金を持つという事を忘れていました」


「自分から言っといてあれだが、もうそれはいいんだ、それよりもこれからの事について聞きたい。俺らは今どこを目指しているんだ?」


お金の件についてはしょうがないんだ。だってほら俺だって持ってきてなかったし、それよりも俺らがどこを目指しているのかを聞きたい。

目的地が分からないで歩くなんてそれこそ冒険家だ。俺らは冒険をする、旅人でいい。


アルの問いかけに、シリウスは少し空を見上げてから答える。

「世界の真ん中には世界樹がありますよね。そしてその大樹を中心に、この世界は四つの国に分かれています。南の〈炎の国〉、西〈地の国〉東〈風の国〉、北〈水の国〉……と」


「そうだったな…..学校で習った。それぞれ国ごとに特色があるんだろ」アルは腕を組み、興味深そうにうなずいた。

カリナが口を挟む。「で、どこを目指すのよ。適当に歩いてもしょうがないでしょ?」


「そうだな。英雄に会わなきゃならないんだろ? なら、まずはその居場所を俺らにも教えてくれ」

シリウスは口元を緩めた。「ふむ、分かりました。しっかりと調べてあります」

「調べてあるって、知ってるっていうから来たんだけどな」アルが呆れ顔をすると、シリウスは誇らしげに胸を張った。


「南の〈炎の国〉の都に、一人の英雄がいます。彼は“紅蓮の剣士”と呼ばれ、それも太陽級魔法使いです。ですが、剣をよく使うことから紅蓮の剣士と言われているそうですね。そして異名は朱雀。

太陽級魔法を使えるのに剣士なのは使える場面がないだけだと思いますが。

いやはや懐かしいです。1000年ぶりでしょうか。明日、そこへ向かいましょう」


「色々と突っ込みたいところがあるけど、とにかくすごいやつだな。それと1000年ってどんだけ長生きなんだよ」


アルはわくわくして拳を握りしめる。

「それはですね……あの者は焔心属えんしんぞくなのですよ」

「なんだそれ?」


「とにかく、まず長生きです。それはうちに秘める炎が尽きるまで。その炎が消える条件は生きる理由を失った時」

アルは拳をひらく。もしその種族であったら、俺だったら死んでたのか。


「会えるのかな? そんなに偉い人に」カリナは少し不安げに眉を寄せる。

「会えますよ。私たちの旅の目的にふさわしい人です」シリウスが力強く言い切った。


ーー

夜が明ける前の森は、ひんやりとした空気と湿った土の匂いが漂っていた。

小鳥のさえずりで、アルは草むらに敷いたマットの上で目を覚ます。横を見ると、カリナはまだ丸まって寝ており、寝顔は少しだけ寂しそうだ。


すでにシリウスは起きていて、南方面を見ていた。

「おはようございます。坊ちゃま。昨日話した通りに進みましょう。〈炎の国〉ですね」

「あぁ」喉がカラカラだ。


ここからでも世界樹が遠くに見える。とても大きいから見えるのだろう。それは遠くにあるのに近くにあると錯覚させる。


その存在は、彼らの冒険がただの旅ではなく、もっと大きな運命へと繋がっていることを静かに告げていた。


どうも葛西です!

昨日は投稿出来なくてすいません!


今回の話は穏やかな?回でしたね。

山場をどこに持ってくればいいのかとても難しいです。


それと今回は世界の地図みたいのが分かりましたね!

世界樹があるという設定や四つの国があるという設定などなど


これをどう上手く使っていくかが僕の腕の見せ所なので頑張りたいです!


ではまた明後日に会いましょう!


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