6話 特性追跡者 6
「三周目の僕へ」
君がこの手紙を読んでいるということは、僕はもうこの世にいないということだろう。
それが計画通りであれ、予想外の事態であれ、僕にはもうどうすることもできない。
だが、君にはまだ道が残されている。
まず、君に伝えたいことがある。
僕たちはただのループに囚われているわけではない。
僕はこの世界がただの一つのループにすぎないことを知っている。
すべての出来事が繰り返されているわけではなく、僕たちは様々な分岐点で異なるループに移行することが可能だ。
僕がこの世界に来たとき、既に自分の中には他の世界の記憶が残っていた。
君はどうだろうか?
他のループの記憶を持っているか?
僕が君に伝えたい最も重要なことは、君が現在いるループから他のループに移行する方法があるということだ。
そのためには特定の分岐点での選択が必要になる。
僕は、その選択肢を慎重に探ってきた。
そして、ある一定の条件を満たすことで、異なるループへの移行が可能であることを知ったんだ。
この世界で僕が党首として新党を立ち上げたのも、その一つの実験だった。
僕が追い求めていたのは権力ではなく、分岐点を探し当てるための手がかりだったんだ。
僕が自殺という形でこの世を去ったのも、次のループへと移行するための手段だった。
君が今感じている違和感や、世界に対する疑念はすべて、君が分岐点に立っているからこそ生まれているんだ。
君がこの世界にとどまり続けるのか、それとも新たなループに移行するのか、それは君自身の選択次第だ。
だが、選ぶにあたって覚えておいてほしい。
分岐点は一度しか訪れない。
選択を誤れば、君は永遠にこのループに閉じ込められることになる。
僕の研究によると、異なるループへの移行は、ある特定の人物との接触や特定の行動を通じて可能になる。
その詳細はこの手紙には書けないが、君がその必要性を感じた時に自然とその人物と出会うだろう。
ともかくも、僕の死が、君にとっての分岐点であることは間違いない。
君が次に進むべき道を選ぶための手がかりとして、僕の死を利用してくれ。
詳しいことは僕が書いていたブログでも読んでみて欲しい。
URLを貼っておく。
これは、別ループしている僕らへのメッセージでもある。
それ以外の人間が読んでも、精神を病んだ人間が書いた日記としか認識されないだろう。
君の選択が、君自身の運命だけでなく、この世界全体の未来をも左右する。
慎重に考え、行動することを願っている。
特性追跡者に幸あれ。
――上原 雄介
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