17話 グッバイ追跡者 9
新幹線のホームでの騒ぎが一段落した後、ようやく雑誌記者たちとも合流することになった。
今回の取材は、雑誌社も相当に本気を出しているようで、雑誌記者とカメラマンが揃って来ていた。
合流したその面々を見て、僕は少し驚いた。
雑誌記者はベテランの中年女性で、落ち着いた雰囲気を漂わせていたが、その眼光は鋭く、ただの興味本位ではない真剣さを感じさせる。
彼女は、今まで多くのフィールドで取材をしてきた経験が滲み出ていた。
そしてカメラマンは、まさに大男。
身長も体格も大きく、存在感が圧倒的だった。
彼がカメラを構えると、周囲の空気がピリッと引き締まるように感じる。
この二人が来るあたり、雑誌社が今回の取材にかなりの期待をかけているのは明らかだ。
「十七人か、大所帯だな」
僕はオカ研の学生たち、合流した雑誌社の取材陣、そしてサダコまで含めた大勢の顔ぶれを見回しながら、少し圧倒される気持ちになった。
これだけの人数で動くのは、今までの取材では経験したことがない。
「さぁ、みんな揃ったな。出発しよう」
僕は声をかけ、再び鏡山村へ向けて出発する準備を整えた。
☆☆☆
新幹線の座席に着き、中嶋さんと話を始めた。彼女はすぐに仕事の話に入った。
「もちろん、今回は動画でも撮影します。すでに編集部に連絡して、専門家ともすぐにコンタクトが取れる準備はしてきました。現地で何か興味深いものがあれば、すぐに分析できますよ」
彼女の言葉には、確かな自信とプロフェッショナルなオーラが漂っていた。
「頼もしいですね。御社も今回、かなり気合いが入っておられるようで」
僕がそう言うと、中嶋さんは軽く微笑んだ。
話を進めるうちに、彼女の真剣な姿勢が印象的だったが、ふとした瞬間に気づいた。
中嶋さん、かなりの美人だ。
仕事に集中している彼女は凛としていて、その知的な美しさが一層際立つ。
つい見とれてしまうが、もちろんそんなことはおくびにも出さず、僕は話を続けた。
「カメラマンの奥井さんまで同行してくれるとは……さすがですね」
中嶋さんは軽く肩をすくめて言った。
「まあ、これだけの取材ですから、抜かりなくいかないとね」
「それにしても、さすがオカルト教授ですね。サダコさんまで、お呼びになっているなんて!」
中嶋さんがそう言って、後ろの席に目をやった。
僕もつられて後ろを見ると、そこにはサダコが座っていた。
相変わらず大きなサングラスをかけて、まるで有名人のようにふんぞり返っている。
学生たちが彼女の周りに集まって、写真を撮ったり、サインをもらったりしていた。
彼女は楽しそうに学生たちと話しながら、取材という真剣な場に来ているという自覚は、まったくなさそうだ。
「彼女がいると断然、華やかになりますね!」
中嶋さんが微笑みながら肩をすくめた。
僕は小さくため息をついた。
サダコの存在が、この取材にどう影響を与えるのか、今はまだわからないが、彼女が予想外の事態を引き起こすのはいつものことだ。
「ええ、彼女なりに場を盛り上げてくれるんじゃないかと――思います」
僕は苦笑いしながらそう返した。
☆☆☆
中嶋さんと話しているうちに、意外なことがわかった。
サダコが実はSNSでかなりの人気者だというのだ。
中嶋さんはその話を熱心に語り始めた。
「実は、サダコさん、SNSでかなりフォロワーが多いんですよ。彼女の投稿って、本当に独特で、ついつい目を引かれるんです」
中嶋さんがスマホを取り出し、サダコのSNSアカウントを見せてくれた。
画面に映し出されたサダコの投稿を見て、僕は驚いた。
投稿内容は、正直言って、ほとんどが意味不明だった。
画像には、道端に落ちている物体の写真や、変顔をしたサダコの自撮り、さらにはよくわからない国の料理の写真が並んでいる。
「ええと……これが人気なんですか?」
僕は首をかしげながら、中嶋さんに訊ねた。
「そうなんですよお! 彼女の独特なセンスが光ってますよね!」
中嶋さんが説明するのを聞きながら、僕はますます首を傾げた。
「はあ、光って……ますかねえ……?」
僕は苦笑しながらスマホを返した。
サダコの人気がどこから来るのかは謎のままだが、とにかく彼女がSNSで受けているという事実は確かなようである。
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