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ビジネスヒロイン部〜王子も無口もツンデレも、もちろん美貌のフェロモン公爵令息も、まとめてヒロイン引き受けます〜  作者: たまころ
第四章

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エルザ Side

本日2本目の投稿です。

最終話まであと少しなので、1日2本ずつ投稿していきたいと思います。


エルザ視点です。

 ここは……?


 滑るような質感のシーツに、掛けられた薄手の毛布は羽根の様に軽い。

 ここは、どこ?

 一つだけある窓は重々しいカーテンが閉められており、灯りはベッドサイドに置かれたランプのみ。

 ベッド横のサイドテーブルは艶やかに磨かれており、素人でも、高級品であることがわかる。


「あら、目覚めたの?」


 お母さんの声に、パッと顔を上げる。子供みたいだけれど、久しぶりに母に会えたことが嬉しい。


 続き部屋から入ってきたお母さんは、部屋の明かりをつけて、ベッドに寝ているわたしの顔を覗き込む。


「どこか痛いところはない?頭は?足は?手は?」


 問われて、自分の身体を見てみる。手も足も特に痛いとは感じない。いつの間にか制服ではなく、ツルリとした素材の寝間着を着ていることに気が付く。


「お腹は?背中は?あ、お腹空いてない?何か食べ物貰ってこようか?」


 お母さんは相変わらずよく喋る。わたしの返事も聞かずに「ちょっと待っててね」と言って部屋を出て行き「メイドさーん」と呼びかけている声が聞こえてきた。


 続きの間に移動して、用意していただいた軽食を食べながら、お母さんと話をする。


 今朝、学院に登校しようと寮を出たところで、突然、お母さんがわたしの名前を呼びながら現れた時にはとても驚いた。「勝手に学院に入っちゃダメです」と後から走ってついてきたハインリヒ先輩に注意されながら、三人でそのまま街へ行くことに。ちなみにハインリヒ先輩の護衛の方が学院に休むと連絡をしてくれたらしい(気が利く筋肉)。


 わたしが13歳のときにお母さんがマードックお義父さんと離婚して出て行って以来、久しぶりの再会だ。一緒に行こうとするわたしを、自由奔放な母に託すのが心配で、お義父さんが自分の家に残るように、お母さんを説得してくれた。その後、お義父さんと再婚したハンナさんもわたしを家族として受け入れてくれた。

 心配性なハンナさんは、わたしが将来困らないように老い先短い優しくて身寄りのない遺産がっぽりなおじいさんの後妻にしようとしたり、ちょっと斜めなところはあるけど、いい人。ハンナさんはお家の事情で凄く年上の旦那様と結婚して、それがとても良い方だったから、わたしにもって色々考えてくれるんだけど、わたしはお母さんみたいに自由に行きたいところに行って、好きなところで暮らしたい。だから、気持ちはありがたかったけれど、スカルチア家を確実に出るためにスミリアル学院へ特待生で入ることを思いついた。

 平民でも知っている有名な学習機関だから、反対もされずらいし、卒業したら家に戻らずに何年かは国の仕事に就いてお金を貯める予定。それからのことは、その時にまた考えようと思っていたけど、お母さんと暮らしていた時みたいに、気の向くままに旅行したり外国に滞在したりするのかな、と漠然と考えている。


 今日はお母さんが思いつきで行きたいという場所を、ハインリヒ先輩と一緒に回った。お母さんは昨日、王都に着いたらしいのだけれど、いつもつけている茶髪のウィッグを無くしてしまって、黒髪でうろついていたから目立ってしまって、すぐにハインリヒ先輩に連絡がいったみたい。幼少期以来に会うお母さんに振り回されて、ハインリヒ先輩はかなり疲れていた。街にお忍びで行くときはいつも目立たないように変装しているらしいけれど、今日はそんな時間もなく、目立ってしょうがない、とブツブツ言っていた。


 離れてからのお母さんのこと、行った場所や食べた物、出会った人のことを聞いたり、わたしの今の生活のことを話したりしたけれど、時間は全然足りない。


「へぇ、じゃあエルザはヒロイン部というのに入ったの」


「うん、ジョルジェット先輩に誘ってもらって。生徒会役員は将来有望な方ばかりだから、卒業後に仕事に就く時のコネも出来るかな、と思って」


「さすが、しっかりしてるわね!じゃあ、エルザは生徒会みんなのヒロインなのね!」


 そう言われると、答える声に自信がなくなる。


「ヒロインはジョルジェット先輩もいるから、わたしはみんなのって感じでは、ないかな」


「じゃあ、エルザは誰のヒロインなの?」


 考えてみると、ハインリヒ先輩もロビン先輩もジョルジェット先輩をヒロイン認定している。ハインリヒ先輩は女生徒からの告白に「しかし、私にはジョルジェットが、あ、これは私の秘めたる思いだから、どうか口外しないでほしい」と頬を赤らめるし、ロビン先輩はリリーシリーズの新商品をジョルジェット先輩に贈って愛情の行方を示している(これはリリーシリーズの宣伝活動でもある)。


 オリバーにいたっては、二回だけデートをしたが、デートという名目のオタ活だった。彼は、大好きな小説の登場人物の一人を、すでに心のヒロインと定めていて、そこにリアルが入る余地はなさそうだ。


 わたしが生徒会の男性陣から与えられる物といえば、お菓子、お菓子、ときどきビーフジャーキー。いや、これもたいていのお菓子はジョルジェット先輩が準備してくれている。


 わたし、ヒロインですから!(キリッ)


 という気持ちでこれまでやってきたのに、自分は全然ヒロインの活動が出来ていなかったことに、ショックを受ける。


「……わたし、ジル先輩のヒロインでしかない?」


「一人だけ?ジル先輩はエルザと恋人同士なの?」


「恋人じゃないの、違うの。ジル先輩は凄く優しくて努力家で嘘をつかなくて、眩しいくらい綺麗な顔で。いつもわたしのことを気にかけてくれるけど、それはわたしが先輩の唯一だからで」


 恋人ではないけれど、唯一なのは本当で。ジル先輩はいつもわたしを特別扱いしてくれていた。可愛いって、俺の花、て言ってくれた。

 なぜだろう、先輩のことを考えると頬が熱くなる気がする。


「エルザはどう思っているの?ジル先輩のこと」


「わたしは、ジル先輩のこと……顔を見られれば嬉しいし、話を出来ればもっと嬉しい。でも傍にいると胸が苦しくなって、他の人を見てほしくなくて。苦しいのに、ずっと一緒にいたいって思ってしまう」


 お母さんは、うふふふ、と目を細めて楽しそうに笑い声上げる。


「子供だと思っていたのに、いつの間にか恋をしていたのね」


 恋、わたしは恋をしているの?ジル先輩に……?


 恋って、わたしにとっては誰かの会話の中や、物語の中のもので、自分が恋をすることなんて、考えてみたこともなかった。

 でも、確かに、この温かくてけれどドキドキしているこの感情は、わたしの知識が「恋」だと教えてくれる。


 わたし、ジル先輩に恋をしてる。


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