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ビジネスヒロイン部〜王子も無口もツンデレも、もちろん美貌のフェロモン公爵令息も、まとめてヒロイン引き受けます〜  作者: たまころ
第三章

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 ジョルジェットとエルザの耳元できらめくイヤリング。

 それはツーコニア織の文様をビーズで編んだ物で、ジョルジェットは濃紺のドレスに合わせた紺色に白や水色を散りばめた物、エルザは同じ文様の色違いで、青をメインに薄い紫が散りばめてある。


 大ぶりなそのイヤリングは、二人が顔を傾ける度にキラキラと輝き人目を引いた。会場入りしてから何人かの女性に、それはどこで手に入るか聞かれ、二人はロイヤルフラワーで注文することが出来る、と答える。


 ユメリアが走って学院にたどり着いた後、ロビンは彼女を自宅まで送って行き、ユメリアの父であるツーコニア子爵同席の元、彼女にツーコニア織の文様でピアスを作ってくれるよう依頼していた。

 材料はジャクソン商会で用意すること、正式な契約である事を説明して、まずは今日の発表会に間に合うよう、ジョルジェットとエルザの二つ分をお願いした。


 最初は、数はそう多く作れなくてもいい。限られた者だけが持っているその希少価値が人気に繋がるから。

 いずれツーコニア子爵領でもそれを作成出来る者を増やしてほしいこと、それとは別に、以前ユメリアが自作していたポシェットなどの小物類もナチュラルフラワー向けに依頼したいことも話して、ジャクソン商会と専属契約を結ぶ話を持ち掛けた。


 ツーコニア子爵家にとって、商売面から見ると、大手商会であるジャクソン商会と契約できることは、非常に良い話だった。しかし、この契約に頷けば、共同の事業計画があり、服飾店を経営しているワトスナー伯爵家との関係は悪化するだろう。


「流通ルートに関しては、これまでツーコニアからはワトスナー領を通って王都へ搬入していたようだが、うちの商会と専属契約してもらえれば、流通ルートは別で確保するから問題はありません。今回は絨毯類の契約は用意していませんが、そちらの出荷もこのルートを使ってくださって構わないし、可能であればそちらも契約できれば、うちの商会としてもありがたい」


 畳みかけるロビンに、ツーコニア子爵は渋い顔をしたままだ。ワトスナー伯爵家とは先代からの付き合いもある。しかし、事業はうまく進まず、こちらが下位貴族とはいえ、まるで使用人かのように命令してくる。事業のためと若い娘たちに他の作業をさせ、絨毯織もこれまでの数をこなせず、このままでは子爵領は困窮していくだろう。


「お父様、わたし、うちが好きです。お父様とお母様みたいに、思いやりのある家庭を作りたいです。ディラン様とは、絶対にそれはできません」


 決断しきれないのは、可愛い娘のユメリアの婚約者がワトスナー伯爵家の長男であったから。ジャクソン商会と専属契約を結べば、ワトスナー伯爵家との仲はこじれ、当然、両家の子息子女の婚約は解消となるだろう。

 娘の経歴に傷がつくことを恐れていたツーコニア子爵は、ユメリアの顔を覗き込む。


「本当に、いいのか?」


 ユメリアは大きく頷いて、明るい声を出す。


「ツーコニア織のアクセサリーや小物、わたし作りたい。領のみんなにも作り方を教えるわ。小さな物だったら機織り機を使わないで作業できるから、子育て中のお母さんや足が悪い人でも作れるわ!」


 こうしてツーコニア子爵とジャクソン商会は契約を結んだ。実質、ツーコニアは大手商会の傘下に入ったも同然で、商品を供給出来る限り、安定した収入を得ることが約束されたようなものだ。


 初仕事は、ジョルジェットとエルザのためのイヤリング。

 これまで扱ったこともないような高級ビーズに最初は手が震えたが、もともとが器用なユメリアは初めての作品と思えないほど完璧に仕上げた。


 ユメリアから、これまでのワトスナー伯爵家の彼女への対応、ディランの態度を聞いた両親はそこまで酷いことをされていたとは思っておらず、気付かなかったことを詫び、悔やんだ。抱きしめられたユメリアは両親の腕の中でワンワン泣き、心配させたくなくて言えなかったことを、自分も詫びた。

 ワトスナー伯爵家にはツーコニア子爵家から、婚約解消の申し出をした。怒り狂うワトスナー家当主に、これまでのユメリアへの処遇を断じ、毅然とした態度の父は格好良かった。


 ワトスナー伯爵家の経営していた服飾店では、今回のロイヤルフラワーのスカーフの盗作だけではなく、他の商品もほとんどがどこかで見たことがあるような物ばかりで、調べると芋づる式に悪事が明るみに出ることになった。特にジャクソン商会と繋がりのある商人や販売元から続々と被害届が寄せられ、閉店を余儀なくされた。

 さらに、染物が有名な領地であったが、使用していた原材料が体に悪い物質を含んでいることが判明し、そちらの発注もストップした。


 ワトスナー領と取引したがる相手はおらず、数か月後には、別荘や馬車など、伯爵家の持ち物を手放し、なんとか生活を送るまでに困窮することになる。


 ユメリアの婚約者だったディランは、エルザの望みのように禿げることはなかったが、太ってフルフルと揺れていた贅肉は姿を消し、ゲッソリと痩せた彼からは油分が減り、カサカサ粉吹き男になった。


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