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ビジネスヒロイン部〜王子も無口もツンデレも、もちろん美貌のフェロモン公爵令息も、まとめてヒロイン引き受けます〜  作者: たまころ
第三章

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ロビンとユメリアのお互いの口調について、補足です。

ロビンとユメリアは同学年だけど、これまで親しくしていなかったため、ロビンは彼女を苗字呼び、敬語まじり。ユメリアは憧れのロビンに対して敬語です。

 放課後の生徒会室で、エルザはロビンに今日の昼休みの出来事を話した。ロビンの横にはジョルジェットが相槌を打ちながら一緒に聞いている。


「ロビン先輩はツーコニア子爵令嬢のことはご存じでしたか?」


「同じ学年だから顔も名前も知っているが、クラスが違うとなかなか接する機会はないな」


「わたくしも子爵のご令嬢ですと、お茶会などでもあまりお会いする機会はないわね~」


 貴族の世界では侯爵と子爵ではなかなか出会う機会すらない。家族が知り合いだったり、領地が隣り合っていたり、仕事で関わり合う、などがなければ、簡単に縁が繋がらないほど遠い存在だ。


「そういえば、彼女がいつもつけている髪飾り、フラワーズブランドのかな、と思っていた」


 ジャクソン商会の服飾部門代表といってもいいだろう『フラワーズブランド』とは、その名の通り花をコンセプトにしたブランドだ。

 洋服を始め、バッグや靴、髪飾り、アクセサリーなど、女性が好みそうな服飾を中心とした品揃えである。

 その中でも高級品を扱うロイヤルフラワーは一点ものが多く、貴婦人のステイタスともいえる。個性的な品物を扱うマインフラワーや手頃な価格のナチュラルフラワー、男性でも気軽に身に着けられる物を扱っているユニセックスなブルーフラワーなど、様々なブランドの総称がフラワーズブランドであり、そのすべてのブランドで花がモチーフであることが共通点だ。


 昼に会ったツーコニア子爵令嬢の耳上につけられた髪留めは、確かに白い花を模した物だったように思う。とはいっても、花のモチーフなどあちこちで使われているので、それがフラワーズブランドだと決まったわけではないが。


 翌日の昼休み、エルザは昨日と同じように中庭のベンチでサンドウィッチを頬張っていた。今日の具はチーズときゅうりだ。


「ごきげんよう、エルザさん」


 昨日と同じように現れたツーコニア子爵令嬢は、同じようにエルザの隣に腰を下ろす。


「ふぉんにひわ」


 口をもごもごさせながら「こんにちは」と返すエルザが口いっぱいに食べ物を含むリスを思わせて、子爵令嬢はクスクスと笑う。


「昨日は突然ごめんなさいね。なかなかお話する機会がなくて焦ってしまって」


 ユメリアは申し訳なさそうに昨日のことを謝罪してくれた。


「わたしね、学院に入学してからずっとロビン様に憧れていて。同じ学年でもクラスは違うし、いつも華やかな彼に話しかけることもできなくて」


 確かに同学年でもクラスが違うとなかなか話す機会はない。さらに、彼は家業と繋がりのある家の子息子女と交流があるため、ロビンの友人関係は高位貴族が多い。その中で、外見は妖精がごとし麗しさだが、身分が平民のエルザは確かに話しかけやすいかもしれない。

 とはいえ、生徒会室にいても、たいていジョルジェットかジルに餌付けされているか、オリバーとオタク会話をしているので、もともと無口なロビンとエルザが話をすること自体が少ない。


「なら、今話せばいいよ」


 いつものように現れたジルが、後ろを振り向き「ね?」とロビンに笑いかける。

エルザが座ったまま背の高いジルを見上げると、その少し後ろにロビンが立っていた。


「ひゃっ」


 という声とともにユメリアはエルザの後ろに隠れるが、年の割に小柄なエルザでは全然隠せない。


「ロ、ロ、ロ、ロ、ロビン様……、あっジャクソン様!」


 ユメリアはこっそり名前呼びをしていたロビンの名前をうっかり口にしてしまい、自分の口に手をあて、家名で呼びなおす。


「俺の家は爵位もないので、名前で呼んでくださって構いませんよ」


 ファーストコンタクトで本人からの名前呼びの許可に、ユメリアは「ほにゃ~」と顔を真っ赤にして溶けそうだ。


「連れてきちゃった」


 食堂にいたロビンをわざわざ迎えに行って、彼の昼食が終わるのを待ってここまで連れてきたが、ジルの意識はもうエルザに集中していた。

 エルザが座っているベンチのユメリアとは反対側に腰掛け、彼女がサンドウィッチの続きを食べるところを「エルザは本当に美味しそうに食べるね」と言いながら、ニコニコと見つめている。


「俺と話したいと言っていると聞いたんですが?」


「は、はひぃ。ロビン様カッコよくて頭も良くて、遠くからいつも素敵だなぁって見ていて、あ、これ、ナチュラルフラワーで見つけて、可愛くっていつもつけてるんです」


 今日もユメリアの耳上につけている花のバレッタは、やはりフラワーズブランドの物だったようだ。彼の家の商会で経営している店舗で購入した物であることを主張する。


「リリーシリーズ、だな」


 ユメリアがナチュラルフラワーズで購入した白ユリのバレッタは、高貴なイメージのユリの花をあえて可愛らしくデザインした小ぶりな物だった。

 リリーシリーズとは名前の通りユリの花デザインの、フラワーズブランド共通のシリーズだ。他にもローズシリーズやデイジーシリーズなど、数は少ないがいくつかシリーズが存在する。


「お洋服やバッグもリリーシリーズで揃えてみたいんですけど、わたしセンスがなくてうまく合わせられなくって」


 恥ずかしくて俯きながら早口で喋るユメリアの髪につけられたバレッタを、ロビンは見つめている。あまり表情を変えない彼だが、少し微笑んでいるようだ。



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