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一話

 スマホのアラームで目が覚める。


 この時間が世界一嫌いだ。夢から現実に戻らないといけないから。それとただ単に眠たい…

 アラームを止めて、スマホの画面を見る。


 5月11日 水曜日

    7:00


 平日はこの時間に起きて、ご飯を食べて、歯を磨いて、バスに乗って学校に行く。それが朝のルーティン。嫌いなルーティンだ。


 高校生活2年目は、今のところ順調かな?友達もいて、好きな人もいて…勉強は難しいけど、毎日楽しく過ごせている。


 うちの家族は私含めて5人家族。

 おじいちゃんにお父さんにお母さんそれに私と妹のほのみ。

 

 おばあちゃんは1年前に亡くなってしまった。

 私は、おばあちゃんが大好きだった。小さい頃、おばあちゃんが作ってくれた塩おにぎりが美味しくて何個も食べた事がある。私が、美味しい!もう一個作って!って言うと嬉しそうに作ってくれた。忘れられない大切な思い出だ。

 それと、おばあちゃんが亡くなる数日前にくれた小瓶が付いたネックレスも肌身離さず大切に身につけている。小瓶の中では小さな火が燃えていて、瓶に触れても熱くないし、1年前から一度も消えた事がない不思議な火が中に入っている。気になって開けようとしたけど、蓋が固すぎて全く開く気配がないから今はもう諦めている。


 おばあちゃんが亡くなって変わった事が2つあって1つ目は、おじいちゃんの元気がなくなってしまった事。前までは散歩に行ってたり、お花のお世話をしてたり活発的だったんだけど今では、竹製の安楽椅子に座って、ぼーっと外を眺めてる事が多い。


 2つ目に、私が住んでいる山の山頂にある祠で週に1回の御祈りと気が向いた時に掃除をすることになった事だ。別に誰かに強制された訳じゃなくて、おばあちゃんが長年やっていたことを私が勝手に引き継いだ感じだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 放課後。バスに揺られてイヤホンで流行りの曲を聴きながら、窓の外を見る。テレビで見る都会の様に高層ビルが立ち並んでいるわけでも大型ショッピングモールがあるわけでもない。田んぼと山に囲まれたごくごく普通の田舎だ。

 さらに私の住む集落は山にあるから近くにコンビニなんてないし、外で遊ぶところといったら、あまり綺麗とは言えない遊具が3つある公園ぐらいだ。どこに行くにしたって車か自転車がないと時間がかかり過ぎて何も出来ない、そんな所だ。


 40分ほどバスに揺られて、家の最寄りバス停で降りる。そこから5分ほど坂道を歩くと家に到着だ。ガラス戸越しに見える広縁の安楽椅子には、おじいちゃんの姿はない。玄関前でイヤホンを外して家に入る。


 「ただいまー」

 

 玄関で声が響く。おじいちゃんの部屋からテレビの音がしない。たぶん寝ているのかな。

 そのまま台所に向かい、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぐ。そして一気に飲み干す。


 「ぷはー」


 喉が渇いた時の一気飲みは最高に美味しい。コップを流しに置いて、鼻歌を歌いながら2階の部屋へと向かう。


 鞄を勉強机の上に置いて、外出用の服に着替える。


 これからデート!なんて言ってみたいけど相手がいない…夢に見たキラキラの高校生活なんて幻想は、すでに打ち砕かれてしまった。そりゃあ1年生の時はちょっと期待したけど…ちょっとだけね……


 今から行くのはデートじゃなくて、週1回の御祈りだ。


 姿見の前に立ち、ヘアゴムで後ろ髪を結び、変なところがないか確認する。誰かと会う訳じゃないけど、一応身だしなみはきちんとしておかないとね。


 「よし。いこっ」


 部屋を出て、玄関でイヤホンをつけて靴を履く。スマホを操作して好きな曲リストをタップする。流行りの曲もいいけど、やっぱり好きな曲が1番気分が上がるよね。


 「いってきまーす」


 山の頂上に向けて、点々とある家を通り抜け、農道へ入っていく。するとお茶畑が見えてくる。お茶畑に囲まれた農道を登っていき、最後に脇道にある木々のトンネルを抜けると祠のある頂上にたどり着く。

 こんな田舎道だけどいい点もあって、歌っても誰も聴いていない事だ。カラオケなんて普段行かないから人に聴かれるのは恥ずかしいんだけど、歌いたい時が私にだってあるのだ。だけどたまに警戒を怠って聞かれちゃう事もしばしばあるんだよね…


 祠周辺は見晴らしがよく、町がよく見える。

 いつも近くで見ているスーパーや家や中学校が、ここからだと不思議と見慣れない別の建物の様に見える。


 おっと、景色に見とれてる場合じゃなかった。祠へと歩み寄りながらイヤホンを外す。


 この祠は数百年前に建てられた物らしいが、そうとは思えないほど綺麗で何か不思議な力が宿っているのかと思うほどだ。


 手を合わせて御祈りをする。


 何を祈ればいいのかわからないから、家族が健康に暮らせるようにとか、テストでいい点数が取れるようにとか、いろいろお願いしている。


 御祈りを終えると祠が汚れていないか一通り確認する。と言っても今まで汚れてたなんて事は一度もない。ほんとに不思議だ。


 「よし!掃除は大丈夫そうかな。帰ろ」


 これだけの為にここに来るのも大変だ。出来ればやりたくないんだけど、おばあちゃんがずっとやってた以上、やるしかないって感じだ。


 帰りは下り坂で楽だけど、転ばないように気をつけないといけない。下り坂もなんだかんだ体力を使うんだよね。


 家に到着する。家を出た時はまだ明るかったが、もう暗くなりかけていた。


 「ただいまー」


 靴を脱いでリビングへ向かう。


 「お姉ちゃん。おかえりー」

 「おかえりなさい。そろそろご飯できるから手洗ってらっしゃい」


 ほのみがソファーに座ってテレビを見ていて、台所では、お母さんが晩御飯の準備を進めていた。


 「はーい」


 洗面所に向かい、手洗いうがいをする。手洗いうがい大事大事。


 リビングに戻るとお母さんがテーブルに料理を並べているところだった。私も並べるのを手伝う。


 「そういえば、お父さんは?」

 「仕事でちょっと遅くなるから、先に食べてって」

 「そっか」


 うちは夜ご飯の時間が決まっていて、それに合わせてみんなで晩ご飯を食べている。それでもたまにお父さんは、仕事が忙しくて一緒に食べれない事がある。おじいちゃんは自室で食べることが多く、たまにこっちで食べるって感じだ。


 テーブルの中央には唐揚げが皿に盛られていて、それぞれの椅子の前にご飯と味噌汁と付け合わせのサラダ。それに取り分けの小皿と麦茶が入ったコップが置かれている。


 「ほのみーごはんー」

 「はーい」


 ほのみに声をかけると、ソファーから立ち上がり小走りで席に着く。


 「それじゃあ。いただきます」

 「いただきまーす」

 「いただきます」


 唐揚げを小皿に取り一口頬張る。


 「んっ!美味しいね!お姉ちゃん!」

 「うん。美味しい」

 「もっと褒めて良いのよ!ママの料理は、世界一って!」

 「そういえばお姉ちゃん。今日は御祈り行ったの?」

 「あれ…?無視…?」

 「うん。行ったよ」

 「そうなのね…これが反抗期なのね…ぐすん」

 「そっか〜。私もタイミングが合えば一緒に行ったんだけどね〜」

 「こうやっていつか、ママは忘れ去られていくのね…ぐすん」

 「じゃあ今度行く時は、ほのみが帰って来るの待ってようかな〜」

 「それが大人になるって事なのね…ぐすん」

 「え〜。ちょっとそれは〜…」

 「ママのことは忘れても2人はいつまでも仲良しでいてね…ぐすん」

 「お母さん。やめて」

 「はいはい。わかりましたよ」


 小声で呟くお母さんに釘を刺す。お母さんはいつもこんな感じでちょっとうざい。これが反抗期なのかな?


 ほのみに関しては、いつもタイミングが合えば〜って言ってくるが口だけ。たまーーーーについてくる時があるぐらい。


 「別に私が勝手にやってるだけだからついてくる必要ないよ」

 「でもお姉ちゃんだけじゃ寂しいでしょ?可愛い可愛い妹もついてきて欲しいでしょ?」

 「はいはい。なら今度、祠を掃除する時は手伝ってもらおうかな。可愛い可愛い妹に」

 「しょうがないな〜」

 「お母さんもついていこうかしら?」


 こういうのがちょっとうざく感じる。


 「お母さんはいいから」


 なんて会話しながら、晩ご飯を食べ進める。


 ご飯を食べ終わって、ほのみと順番にお風呂に入る。御祈りで汗をかいたから、いつもよりお風呂が気持ちよく感じて、上がった時のサッパリ感もより心地いい感じがする。

 

 お風呂を上がった後はテレビを観ながら髪を乾かしたり、歯を磨いたり。それが終わったら2階の自室に向かう。


 「はぁ〜。疲れた」


 なんだか今日は一段と疲れた気がする。癒しを求め、ベットに横になる。


 「やっぱベットは最高だぁ〜ふあぁ〜」


 とたんに瞼が重くなっていき、枕を抱いて目を瞑ると、いつの間にか眠っていた。


読んで頂き、ありがとうございます。

拙い文章で分かりづらい点もあると思いますが、これからも読んでもらえると嬉しいです!

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