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女系解明に向けて再始動

十日の中断、申し訳ありませんでした。話はここから二章に入ってゆきます。テーマは女系継承です。更新は水、金、日の週三回を予定しております。よろしくお願いします。

 結局会社からは自分の車で帰る。下校時間前なのか子供もいなかったので半ば眠りながらでも帰ることができた。


 翌日は夜中の三時に目が覚める。前日は午後二時まで起きていたので十三時間睡眠だ。ネットを見ながら時間をつぶして六時に出社した。


 のんびりとメールを見ていると羽黒と小村から入っていた。どちらも気になったが楽しみは後に取っておくことにする。


『羽黒だ。二日間ご苦労だった。まさか解けると思っていなかったのでその喜びも大きいが、徹夜というものが集中力を上げるのにあれだけ効果があることを知ったのは俺にとって最大の収穫だった。それにプラスして宗教や哲学の力を見せてもらって感謝する。あの理論はもっと掘り下げると新たな発見があるはずだ。また機会があったら三人でやってみたいな』


 病院から送ってきたのだろうか。三人ではなく四人ですよと返信する。次は小村だ。


『資材調達課、銀山様

秘書課の小村です。二日間本当にお疲れ様でした。社長も喜んでおられたと思います。皆さんを支援しなければならない立場であるにもかかわらず職務の邪魔ばかりで申し訳ありませんでした。そんなわたしを最後まで見守って頂き、特に銀山さんにはわたしの危ないところを助けて頂くなど本当にありがとうございました。またご一緒に仕事ができる日を楽しみにしております。

秘書課、小村早紀』


 ところどころ文章に不安定さがあるのは睡眠不足のせいだろう。三人同時発信していないから最後の希望はこのメールにしか書かれていない可能性もある。心のこもった返信をしたかったが情報システム課に見られる可能性もあるので無難な返答にした。


 さわやかな気分で着信を見ていて意外なものを見つける。発信l-tateha。間違いなく次女の江留からだ。宛先は羽黒、麦原と同時発信だった。


『立羽江留だ。本当に解き明かしてくれるとは思わなかった。親父からはメールが行かないと思うのでオレから礼を言う。一つ聞きたいことがある。本当に女から霊魂を送ることはできないのか。すぐにとは言わない。熟考の回答を待っている。よろしく頼む』


 複雑な気分のまま一旦閉じると羽黒から追加メールがある。江留の転送メールだった。


『羽黒だ。下記のメールが行ってると思うが軽はずみな回答をするな。以上だ』


 こんなメールのやりとりが収まった一週間後に事態は新しい進展を見せた。


「銀山くーん電話」


 こんな大音量が必要なのだろうかと思えるほどの声で隣に座る僕へ受話器を渡してくる。両手の人差し指と中指を立ててチョキチョキする動作に嫌な予感がした。


「鬼谷だ。その後調子はどうだ」


 先回の社長報告では命令に背いたのだが親しみを込めた口調は変わっていない。結果としては侵入者を阻止することができたのだから不問としているのだろう。


「おかげ様で」


「また社長から招集がかかったのだが来る気はあるか」


「何をするのですか」


 横ではまだ笑顔でチョキチョキしている。


「詳しいことは言えないが新規のプロジェクトだ。先回問題を解決してくれた三人には優先で話をすることになった」


「関係のあることなのですか」


「もちろんだ。そうでなければ優先などありえない。もちろん断ってもいいが話は二度と来ないと思った方がいい」


「話を聞いた後で辞めることはできるのですか」


「それは駄目だ。受けた以上はきちっと職務をこなしてもらう」


「あとの二人は」


「麦原は受けると言った。羽黒は保留中だ」


「職種としては何をするのですか」


「先回の続きと思ってくれればいい」


 続きと言われて江留の顔が浮かんだが、さすがにそれはあり得ないと思った。順当に判断すれば男系男子である久史氏に関することだろう。


「分かりました。少し考えさせて下さい」


「十分以内だ。それを過ぎたら他を当たる」


「分かりました」

受話器を置いて大水に体を向ける「社長が新しいプロジェクトをするって話知ってる」


 さすがの大水でもここまでは知らないだろう。


「知ってるよ。天皇陛下の男系を確かめてみるって話でしょ」


「それはこないだ終わったから」


「違うよ。あの時の結果を確かめるって言ってたらしいよ」


 確かめるといっても動物実験などするとは思えない。急いで受話器を手にして知的財産の内線に掛ける。


「資材調達の銀山ですが」


「羽黒だ。こっちから掛けようと思っていた。何をするのか聞いたか。聞いても答えるとは思えないが」


「次長は何も答えてくれませんでしたが大水さんが知っていました」


 内容を伝えて反応を待つ。


「ふむ。面白そうではあるな」


 気配を感じて顔を上げると課長がにらみつけてくる。あの二日以降、事ある毎に風当たりが強くなっていたのを思い出した。


「受けてみましょうか」


 鬼谷に連絡する。先回は三十分で招集がかかったので用心して待つことにした。


「ねえ銀山くん。またこないだみたいにお籠りするの」


「そうとは限らないけど」


「銀山くんの代理ってけっこう大変なのよね」


 労いの言葉ではなく現物を要求してくることは確実だ。


「でもこの前だって、あれだけ頑張って“ご苦労だった”だけだもんな。割に合わないよ」


「でも社長はまだいいのよ何だかんだと言っても男系がいるんだから。それに比べたら鬼谷次長なんか可哀そうなものよ。一人っ子で子供も女の子が一人だから男系が途切れちゃうことになるでしょ」


「次長くらいだと関係ないと思うよ」


「どういうこと。男の子がいなくてもいいの」


「あれはドヴィジャといって天皇や天才などの特殊能力を持つ人だけが対象で、会社の中だと社長だけかな」


「難しいことは分からないけど男の子が必要な人と必要じゃない人がいるってこと」


「正解です」


 パソコンに向かっていた課長の顔がこちらに向けられた。


「今度は何だ」


 ネクタイを手にして課長の席に近づく。


「僕もまだ聞いてないです。言いたいことはメールの差出人にお願いします」


 集まったのは第三応接室。ディスプレイを前にしたのは六人で、あの時の四人に鬼谷と香取主任。社長は海外拠点の視察に出たばかりで内容説明はビデオで行われた。


「三人、いや四人の働きにより男系継承の意味が解き明かされた。天皇家はそれを守り続けているが日本の工業界は血統を重視せず社業発展の寄与に最も功績の大きかった者に継承を行ってきた。社員のモラール維持の観点からワシもそれは当然のことだと信じていたが現在の各社の業績を見ればそれが間違いであったことが分かる。今回の依頼は次期社長の選定だ。明日の立羽を背負って立つ人材だ。最終的には諸事情も加味して決定することになるがそのための判断資料だと思ってくれればいい。今回は多少時間がかかるだろうから一週間後に報告して欲しい。後は鬼谷の指示に従ってくれ。以上だ」

お読み頂き、ありがとうございました。

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