第八話 指名クエスト
冒険者ギルドにやってきた。
クエストを受けるためだ。
ちなみに二人には《棺》に入ってもらった。二人とも美人だから、すぐに騒ぎになってしまう。
「おっ、おはよう。アレン」
「何かクエストでも受けるのか?」
「昨日の試合良かったぞー」
今日はやけに冒険者達から挨拶を受けた。
昨日の試合の後からこれだ。
まあ、別にいいんだがな。
「ああ」とか「おう」とか適当な返事をした。
さて。どのクエストを受けようか。
ああ、そういえば。ゴブリンの耳を納品するのを忘れていた。
「ここ最近でゴブリンの耳を大量に納品した冒険者はいませんでしたか?」
隣の受付では商人のような小太りのおじさんを対応してるみたいだ。
冒険者ギルドにはこうやって、依頼主が来ることも多い。
「ゴブリンの耳を納品したいんだが」
「あ、アレンさん。おはようございます。では、確認させて貰いますね」
「彼が戦っていたゴブリンの数は五十体ほどでした。それも昨日の出来事なので……」
「いえ、そんな数のゴブリンを討伐できる人なんて、うちのギルドには……」
「うわー! ゴブリンの耳が五十個もありますよ!? そんなに倒したんですか!」
「まあな。実は馬車が襲われててな。五十体ほどで………」
俺は隣の会話に気付かず、昨日の状況を説明した。
商人はその話を聞いて、確信した。
昨日、自分を助けたのはこの男だと。
「……いましたね。うちのギルドに」
「……ええ。どうやら、そのようですな」
「初めまして。グランベリー商会の会長を務めております、ラズ・グランベリーと申します」
「は、初めまして」
ギルドの応接間で、俺は商人と対面していた。
グランベリー商会。
王国に本社を置いているが、その支店は世界中のあらゆる国にある。世界中のありとあらゆる商品を手に入れられるんだ。帝国でもよく見かけることがあるし、何度も利用したことがある。噂通りの品揃えで、従業員の対応も良かった。
「まず、昨日はありがとうございました」
深々と頭を下げるラズさん。
「ま、待ってください。当然のことをして、そんな風に言われると……」
「それでもです。貴方に救ってもらわなければ、私は大事な商談に参加できず、我が商会は倒産してしまったでしょう。そうなれば、どれほどの従業員が路頭に迷うことになるか。本当に、本当にありがとうございました」
頭を下げたまま、ラズさんは言った。
俺の勝手なイメージだが、商人はプライドが高く、そう易々と頭を下げることはないと思っていた。
それに、自分の店で働く従業員のことも大事に思っている。
この人はいい人なのかもしれない。
「さて。では、早速本題に移りましょう。何も私も、感謝を伝えに来ただけではない」
と、思ったら切り替えが早い。
流石は商人だ。
「こちらのクエストを受けていただきたい」
【指名クエスト】
期日 一週間後までに。
報酬 金貨10枚。
クエスト内容 隣町「アヤーム」への手紙の輸送。グランベリー商会アヤーム支部の支部長へ届けて欲しい。
机の上に置かれた紙には、そう書かれていた。
「隣町に手紙を運ぶだけで金貨10枚ですか?」
「ええ。このクエストは貴方へのお礼ですから」
「と言うと?」
「まず、手紙を運ぶだけで金貨10枚が手に入る。駆け出しの冒険者からすれば良い収入でしょう。そして、実績が付く」
「ほお」
「グランベリー商会の会長である私が、金貨10枚も支払って届けたい手紙を運ばせる冒険者がいる。この噂が広まれば、貴方への信頼度が増して、自然と指名クエストが増えてくるでしょう」
正直ありがたい。
ラズさんの言う通り、冒険者で、しかも死霊術師である俺に指名クエストを出してくれる依頼主は少ないだろう。
だが、この噂が広まれば、自然と指名クエストが増えていく。しかも指名クエストは普通のクエストよりも、報酬を上乗せするのが普通だ。
……うん。ありがたい。
「ありがとうございます。このクエストは受けさせて貰いますよ」
「まあ、これで貸し借り無し、ということで」
怖い人だ。
商人は貸し借りを嫌う。
その噂は嘘じゃなかったみたいだ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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誰も信用できないので絶対に裏切れない女奴隷を買うことにした〜帝国に裏切られた俺は奴隷たちに癒されながら、英雄になります〜
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是非、読んでください。